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日本が抱える「教育格差」とは?

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●[対談]乙武洋匡×鈴木寛「日本の教育問題」(2)

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乙武: 2020年に東京でのオリンピック・パラリンピック開催が決まっています。それ自体は大変喜ばしいことですが、僕は懸念も抱いているんです。それは、せっかく「コンクリートから人へ」というコンセプトの下、教育に予算が割かれるようになってきたのに、2020年に向けたインフラ整備のため、再び「コンクリート」に多くの予算が割かれてしまうのではないか、という点です。

鈴木: そうですね。ただ、オリンピックは関係なく、地方の公共事業予算を増やした結果、すでに人からコンクリートへ元に戻ってしまったのが現実ですよ。これは2014年度の予算を見ても明らかです。教育予算が減り、全体の予算比率でも文部科学省は国土交通省に抜き返されてしまいましたから。

乙武: 資源に恵まれた国ではない日本では、人材を育てることが生命線になってくる。そう考えると、こうした予算の傾向は非常に不安です。実際、OECD加盟国中、日本はGDPに占める教育機関への公的支出は最下位であるというデータもあります。

鈴木: 本来、中等教育(中学校、高校)の無償化というのは、国際人権規約で定められていることなんです。ところが日本は、1979年にその部分を留保して批准しました。私が、文部科学副大臣のときに、高校無償化や大学生希望者全員奨学金といった政策を進めることができましたが、こうした課題が先進国となってからも長年放置されていたのは大問題ですよ。

乙武: 家庭の経済状況によって十分な教育が受けられないようでは、胸を張って先進国だと言えません。

鈴木: 保護者の経済格差が子供の大学進学格差に影響するようになった発端は、1986年でした。当時、国立大学の授業料は上がり続けていたのに、低所得者向けの授業料免除額が著しく下げられ始めたんです。頼みの綱の奨学金にしても、日本のそれは給付ではなく、実質ただのローンに過ぎません。

乙武: そうですね。負債を抱えた状態で社会人としてスタートせざるを得ないというのは、フェアじゃない。もちろん、全員が同じ状況なら話は別ですが。

鈴木: 2012年になってようやく、国際人権規約の留保部分を批准した日本ですが、そもそも高校無償化なんて、アメリカでは19世紀後半に実現していることですからね。

乙武: なるほど。しかし、日本で授業料などが改革されて、国際人権規約の留保部分をクリアしたことは、ニュースなどでもあまり話題にならなかったように感じます。

鈴木: その点は大いに不満です。ほとんどのメディアが、このニュースを大きく伝えることはありませんでしたから、一般人に認知されていない。教育分野の大きな前進なのに、政治的に評価されることもないんですよ。

乙武: 教育について注目されるようになり、広く国民が議論するところとなれば、政治家も「票につながらない」とは言っていられなくなる。ぜひ、そこはメディアにも力を貸してほしいところですね。

鈴木: そうですね。とりわけリーマン・ショック以降、保護者の経済事情が子供の教育環境に直結していることは、様々な数字から明らかになっています。だからこそ、こうした議論や政策をもっと注視するべきだと思うのですが、現状はそうではないわけです。

乙武: 年収1200万円以上の家庭で育つ子どもと年収200万円以下の家庭で育つ子どもとでは、同じテストでも20ポイント以上の差がついてしまうというデータもあります。こうした事実がもっと広く知られるようになれば、「それはさすがに何とかしなければ」と国民的関心事になっていくのではないかと思います。

(構成:友清 哲)

【今回の対談相手】
鈴木寛さん
1964年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。通産省、慶應義塾大学助教授を経て、2001年、参議院議員初当選。12年間の国会議員任務の中、民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化・情報を中心に活動。現在は、日本初の東京大学・慶應義塾大学ダブル教授、社会創発塾塾長、日本サッカー協会理事ほか。

(R25編集部)

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