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東北大、飲酒で全寮生退去通知 処分は妥当?

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東北大の全寮生退去通知に寮生は反発

7月15日、東北大学は「禁酒の約束が守られていない」として、同大学の学生自治寮「明善寮」の寮生全員に9月末日を期限として退去するよう通知しました。これに対し、寮生からは「期限が急すぎる」「飲酒をしていない寮生まで退去を求めるのは乱暴」といった反発がなされています。

大学側の主張と寮生の主張、いずれに正当性があるかを判断するためには、前提として両者の法的関係を理解する必要がありますが、寮生の負担する毎月の金員は賃料というにはあまりに低廉のため、ここでは有償の使用を前提とする賃貸借契約ではなく、無償使用を前提とする使用貸借契約と考えます。

しかし、使用貸借契約であるからといって、貸主はいつでも契約を終了させることができるわけではありません。特段の事情がなければ、期限を定めた契約であれば借主はその期間が経過するまでは使用を継続できますし、また目的を定めた契約であれば、その目的が終了するまでの使用は権利として認められます。

ただし、この権利は無制約ではありません。借主が貸主との信頼関係を破壊するような行為を行った場合には、貸主はそのような信頼関係の破壊を理由として契約の解除をなしうるものとされています。

ルールを破った寮生と、そうでない寮生とで分けるべき

本件では、飲酒禁止のルールを破った寮生と、そうでない寮生とで分けて考える必要があります。つまり、未成年者の飲酒は、そもそも法律で禁止されており、飲酒禁止については大学側もルールとして定めている以上、そのルールを破った寮生との関係では、大学側としても信頼関係の破壊があると主張しうるように思います。しかし、そのルールを守っている寮生との関係でまで信頼関係の破壊があると主張しうるかと言えば、強い疑問を感じます。

また、寮生を個人個人として見るのではなく、一体のものとしてみることにより、全体として信頼関係を破壊したという理屈はありうるかもしれませんが、おそらくは入寮契約は個別に行われているのではないかと推測されますので、そのような考え方は取りづらいでしょう。

実は、過去に学生寮利用の法律関係について、「学生の通学上、経済上の負担を軽減しつつ、かつ学生寮における共同生活による教育上の効果を上げることを目的とした使用貸借契約である」としたうえで、廃寮宣言及び退寮通告による全寮生との使用貸借の解除に踏み切った措置が合法であるとされた裁判例は存在します。しかし、同裁判例は、学生運動が激しい頃、既に寮としての機能が失われていたと評価された事案であり、今回のケースにはそのままは当てはまらないように思います。

なお、報道によると、大学側は寮生の退去後、明善寮について改修工事を行うとされています。万が一、今回の全寮生に対する退去通知と、この改修工事に関連性があると判断される場合には、そもそもの退寮処分の目的の正当性に疑問が差し挟まれることになるのかもしれません。

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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