「若者応援企業」はホワイト企業とは限らない? 「パワハラ提訴」で運用見直しも

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「若者応援企業」はホワイト企業とは限らない? 「パワハラ提訴」で運用見直しも

厚生労働省が認定した「若者応援企業」に勤務した20代の女性が、賃金不払いやセクハラ、パワハラに遭ったとして、会社と派遣先などを東京地裁に提訴したと報じられた。

女性の代理人の弁護士は「厚労省が推奨するから若者は信用する。企業の登録はもっと慎重であるべきだ」としているが、これが本当ならば安心して制度を利用できなくなる。そこでキャリコネ編集部では、「若者応援企業」の登録基準や手順について調べてみた。

認定手続きは甘くないように見えるが

「若者応援企業」制度は、2013年4月にスタート。半年あまりで宣言企業が4375社にのぼり、「国がホワイト企業にお墨つきか!?」と話題になった。次世代を担う若者と、若者の採用・育成に積極的な中小中堅企業とのマッチングを支援するのがねらいで、具体的には、

(1)若者を積極的に正社員として採用・育成していること
(2)「働きやすさ」の指標となる就職関連情報(過去3年度分の新卒者・新卒者以外の採用実績及び定着状況、前年度の有給休暇および育児休業の実績、前年度の所定外労働時間の実績、社内教育・キャリアアップ制度など)を開示していること
(3)労働関係法令違反をしていないこと
(4)過去1年間に、事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
(5)過去3年間に、新規学卒者に対する採用内定取消を行っていないこと
(6)各種助成金の不支給措置を受けていないこと

という条件を満たすことが必要だ。

「若者応援企業」の認定を希望する会社は、管轄のハローワークに上記6項目を満たしているとする「宣言書」と、社内の様子や有休取得状況、採用・定着状況などをまとめた「事業所PRシート」、それに「対象となる求人」を揃えて提出する必要がある。

「若者応援企業」に認定されると、管轄のハローワークが「若者応援企業」をPRしてくれたり、労働局のウェブサイトに事業所名が掲載されたり、「若者応援企業限定イベント」に出展できるなど、さまざまな特典がある。

ただし東京労働局の担当者によると、認定には書類以外にハローワークでの審査が必要になるという。「会社に確認の聞き取りをし、労働局内の基準部など関連機関に労働関連法令の違反事実がないかの照会などもします」ということだ。認定後も定期的に「事実確認」を行い、宣言後に改善指導を受け、是正期日までに改善されない場合には認定を取り下げるという。

事実確認中で「一時的に掲載を中止」か

報道によれば、今回の提訴は1か月間で270時間行われた研修が無給であったことに対し、不払い賃金を支払えというもの。これに対し、会社は「研修は任意の参加だった」と主張しているという。パワハラやセクハラ発言に対する慰謝料も請求している。

提訴された企業は、8月8日現在で「若者応援企業」のウェブサイト検索にヒットしないが、東京労働局の担当者によると「個別の案件は分からない」としながら、「事実確認中で一時的に掲載を中止している可能性はあります」ということだ。

女性の代理人は「厚労省が推奨するから若者は信用する」とコメントしているが、元々は通常の求人情報以外の付加情報を充実・開示させるしくみであり、手続きから見ても「厚労省が推奨」とまで位置づけるのは厳しすぎる気もする。

そもそも制度導入前から「若者応援企業」は、ホワイト企業のお墨つきではないと指摘している人もいた。「脱社畜ブログ」を運営する日野瑛太郎氏は、2013年12月2日に「非ブラック認定=優良企業(ホワイト企業)か?」という記事をエントリーしている。

「非ブラック」でも問題が起きる可能性

日野氏は「若者応援企業」の認定基準は、行政による法令遵守のお墨付きは悪いことではないと評価しつつ、「基本的にはまともな会社であれば当然満たすべきものばかりであり、『満たしているなら安心だ』と直ちに決められるようなものでもない」と、制度の限界を指摘していた。

「例えば、職場にパワハラ上司がいるとか、社訓を暗記させられるとか、非業務という名目で社長のDVDを見て毎月感想を書かなければならないとか、そういう場合でもこの基準であれば非ブラック認定を受けられる余地は残っている」
「『明らかにブラック』なもの以外をすべて『非ブラック』と捉えるものなので、非ブラック認定を受けたからといって、それで安心と考えてしまうわけにはいかない」

もし今回の提訴内容が事実ということになれば、日野氏の懸念が当たってしまったということになる。

「若者応援企業」は健全な企業にとって、他社求人との差別化が図れる貴重な場であり、制度全体が否定されることはないだろうが、今後運用において改善が必要になってくるかもしれない。

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