大型IPOラッシュが市場に与える影響

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今年の下半期から来春にかけて有名銘柄が続々と上場予定

大型IPOラッシュが市場に与える影響

今年の下半期から来春に上場が見込まれる大型IPOが注目を浴びています。銘柄で言えば、LINE、リクルートホールディングス、すかいらーく、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどの有名銘柄です。報道によれば、上記銘柄で発行総額は6,000億円超にのぼるとみられています(米国との重複上場になるか不詳のLINEを除く)。

IPOマーケットに関しては、アベノミクスの追い風を受け、2013年の上場案件数は54案件と前年の46案件から増加しました。今年は2014年7月までで既に30社が上場し、年間では70案件程度となることが予想されています。

上場後に値崩れが起き、マーケットのセンチメントが悪化?

では、これまでの上場の成績はどうだったのでしょうか?今年、初値が公募価格を下回った銘柄は、全30案件中8案件でした。2013年には、全54案件中1案件しかありませんでした。今年の公募価格の設定が、昨年に比べ割高感があるのは明白です。公募価格と初値の騰落率で言えば、ジャパンディスプレイの−14.6%、トレックス・セミコンダクターの−10.4%、丸和運輸機関の−8.8%が目立ちました。ジャパンディスプレイは、政府系ファンドの産業革新機構が再建・上場させた特殊事例ではありますが、マーケットにショックが走ったことは事実です。

冒頭の大型IPOが今後のマーケットに与える影響として、相反する二つの考え方があります。一つは、一日の平均売買代金が2兆円を割り込んでいる状況で、多額の発行圧力は市況を軟化させるというものです。もう一つは、企業の自社株買いが増加していることから、企業のネット調達額(増資額-自社株買い総額)はマイナスとなっており、供給面での環境は悪くないというものです。

私は、自社株買いという供給面の要因のみだと、既にマーケットに折り込まれ済みであり弱いと思いますが、IPOへの人気が投資家から根強くあることを考えると、この程度の発行規模であれば、需要面から比較的順調に消化されると予想します。そうした需給面よりも気になるのは、公募価格が割高に設定され、上場後に値崩れが起きるケースが増え、マーケットのセンチメント(市場心理)が悪化することです。今年、これまでのように、最近の株価(8月1日終値)が公募価格を下回っている銘柄が、全30案件中12案件にものぼるということのないように願いたいものです。

ちなみに、米国では、中国の電子商取引大手アリババが8月か9月に上場する予定であり、調達額は2兆円規模と言われています。これに匹敵する最近の大型上場の例では、フェイスブックやGMがありますが、いずれも上場前後に米国の株価指数は下落しています。こちらが米国株経由で日本株に及ぼす影響の方が、日本のIPOが日本株に及ぼす影響より大きいかもしれません。

IPO投資にあたって注意すべきこと

最後に、最近のマーケット状況も踏まえてIPO投資にあたって注意すべきことを紹介します。

・IPOのほとんどで、初値が公募価格を上回るものだと思い込まない。
・IPO抽選に漏れた場合(大概漏れるが)、あせって直後のセカンダリーマーケットで無理して買わない。
・初値が公募価格を上回っても、その後、急激に値下がりするなど値動きが激しいケースが多く、いたずらに上値を追わない。
・企業の歴史が浅いことが多く、業績データが少なく株価のヒストリーがないので、必ず目論見書でビジネスモデルや成長ストーリー(定性項目)、B/S、P/L等(定量項目)を読み込む。
・PERやPBRが一般の基準と比べ割高であっても良いが、業種やビジネスが目新しくなく革新的でないものは避ける。

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