豪州産「ワギュー」に対抗する日本の和牛ビジネス オールジャパンでEU市場に臨む

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豪州産「ワギュー」に対抗する日本の和牛ビジネス オールジャパンでEU市場に臨む

いま、海外で「WAGYU」(ワギュー)が大人気になっている。シンガポールで人気の焼き肉店では「和牛は世界最高の牛肉ですよ」と男性客が焼き肉をほおばるが、それはオーストラリア産の牛肉だった。

お客たちは騙されているわけではなく、牛の品種として正真正銘の「和牛」であり、それがオーストラリアで育てられているという。2014年7月29日の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、日本固有の「和牛」が海外に渡った経緯と、海外市場に大きく打って出ようとする日本の和牛ビジネスの現状を紹介していた。

業界から除名処分を受けても「輸出」を進めた先駆者

「和牛」というのは、黒毛和牛をはじめとした品種の名前で、その数わずか4種類。日本で一定期間育てられた「国産牛」とは別の、日本固有の牛だ。この日本の宝にも等しい和牛が、20年ほど前にアメリカへ渡り、後にオーストラリアで生産されるようになった。

1988年はアメリカから牛肉・オレンジの貿易自由化を迫られ、91年には和牛精液の輸出も解禁された。国として法的な規制はできない中、当時の和牛関係者は、遺伝子を輸出しないよう生産者に呼びかけていた。

それを押し切る形で輸出に踏み切ったのが、「白老牛」という北海道有数の和牛ブランドを手掛けた竹田正吾さんだ。現在87歳。猛抗議が殺到するなか、なぜ世界に和牛を広めようと思ったのか。竹田さんは、その意図をこう明かす。

「いいものを作ったら、みんなもいい思いをしてもらおう、消費者にうまいものを食べてもらおう――。これが百姓の天命でなければダメなんだ」

全国和牛登録協会から除名処分を受けたが、「日本の畜産は、誰のおかげでこれだけ良くなっているのか。乳牛やニワトリ・豚肉など、和牛以外の畜産は全部外国のおかげで良くなっている。和牛だけ外に出さないのは日本のエゴだ」という考えを崩さない。

いまでは竹田氏のほかにも、民間企業3社が和牛や精液を輸出。オーストラリアでは和牛の精液を世界中に販売しており、和牛の生産は世界27カ国に拡大している。

県単位のブランド同士が「潰し合い」のムダ

日本には「神戸牛」や「米沢牛」などの産地ブランド牛が、全国で約230種類以上もある。一方、世界的には「神戸ビーフ」が高品質牛肉の代名詞として地位を築いているものの、全体的に知名度が低く、苦しい状況の生産者も多い。

和牛輸出を手がける食肉輸出業者「ミートコンパニオン」(東京・立川市)の植村光一郎常務は、ブランド競争に乗り切れない生産者が生き残る道として、輸出に活路を求めた。

バンコクに視察に行くと、オーストラリア産のWAGYUが一番売れていることが分かった。日本の和牛は県単位のブランド名ばかりアピールし、「日本産」ということが伝わってないと植村常務は嘆く。

「ある意味無駄なことをやって、お互いを潰し合っている」

そこで各社に、EU市場での販売は「和牛統一マーク」をつけて売ろうと呼びかけた。牛のマークに大きく「WAGYU JAPANESE BEEF」と表示する。伊藤ハム・JA全農・日本ハムなど食肉主要5社が統一マークの使用を即合意したものの、最後まで渋っていたのは、神戸ビーフを扱っているエスフーズだった。

世界中で評価され圧倒的なブランド力を誇る「神戸ビーフ」は、日本で最も厳しい基準を設定し、「但馬牛」の中でも最高級のものだけを認定する。自分たちの努力で神戸ビーフを世界に広めたという自負があるため、統一マークには迷いがあったようだ。

「競争がない世界は廃れていきます」

そんな神戸ビーフも、最終的には「オールジャパンとして共にやっていきましょう」という意向を受けて合意し、人口5億人の巨大市場へ立ち向かう。

日本の和牛がもし今まで海外に流出していなかったとしたら、日本の和牛ビジネスは安泰だったのだろうか。エスフーズの常務、平井博勝さんは「競争がない世界は廃れていきますから」と話していた。

日本国内だけで優良品種を囲っていたら、世界で「WAGYU」の名が広まることも、日本が競争力のある牛を必死に作り上げることもなかったかもしれない。(ライター:okei)

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