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松方弘樹 中村錦之助が大好きで「若い頃はマネて芝居した」

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 立ち回りが上手な俳優が少なくなったと言われているなか、松方弘樹は素早く華麗な殺陣で知られている。約50年前、片岡知恵蔵や中村錦之助、大川橋蔵といった時代劇スターたちを見て学んだことについて、松方が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。

 * * *
 1960年代初頭、松方弘樹は東映京都撮影所で時代劇に出演するようになる。そこには片岡千恵蔵、市川右太衛門、大友柳太朗、中村錦之助、大川橋蔵、そして父・近衛十四郎と、綺羅星の如き時代劇スターがいた。

「父親から教えてもらったことは何もないです。勝手に覚えろ、と。ただ『俺は芝居はあまり上手くないけど、立ち回りは日本一だから、それは見に来た方がいいぞ』と言ってくれました。

 月に15本も撮影が入っていましたから、先輩の芝居を見に行くのはたすかったんです。撮影が早く終わった時は、セットを何杯も見て回りました。今の役者は自分のロールが終わったらとっとと帰りますが、そんなことは絶対になかった。

 大好きだったのは、錦兄ィ(錦之助)の芝居ですね。若い頃の僕の芝居を見たらほとんど錦兄ィのマネをしています。『中村錦之助』の時の錦兄ィはセリフの切れも動きも天下一品ですよ。

『萬屋』になってからは、ちょっと難しかったですね。芝居が上手いから、それを受けてくれる役者がいないとダメなんですよ。それで『柳生一族の陰謀』の時に錦兄ィには『もうちょっとレベルを落として』と言っていました。他の人と芝居の差がありすぎてしまって、浮いてしまうんです。

 凄く出来るから、やりすぎちゃうんですよ。そうすると、例えば相手役の成田三樹夫さんも素晴らしい役者でしたが、現代劇出身だからどうしてもバランスが悪くなってしまうんです」

 若手時代に先輩スターたちの現場を数多く見てきたことが、後の松方の芝居に大きな影響を与えることになる。『遠山の金さん』の白州での凜々しい姿や、任侠映画での美しい着流し姿などは、まさにその成果といえる。

「今は自分で衣装を着たり帯を締められる役者はいないでしょう。着流しを衣装さんに着せてもらう時、今の俳優さんは足を開いて突っ立っている。それだと、帯から下がフレアスカートみたいになってしまいます。

 僕は、着流しを着る時は足をクロス気味に閉じて着ます。そうすると、タイトスカートになるんです。先輩がそうして着ているのを僕は見てきましたが、今の若い俳優さんは見ていない。それでは何十回着てもダメです。袴の位置も帯の位置も、自分で前を合わせてちゃんと着ないと。帯も締められっぱなしだから、途中で苦しいと言い出す。帯も自分で巻きながら二重目に来た時にブレーキを引っかけると絶対に締まらないんですよ。

 中村嘉葎雄さんに教えてもらったこともたくさんあります。一緒にやらせてもらった時に、いろいろと聞きました。

 たとえば『遠山の金さん』の長袴。あれは素足で穿いてなくて、大名用の高い雪駄を履いているんです。そうすると、女性がハイヒールを履くのと同じで、立った姿が物凄くイイんです。

 それから、長(袴)の裾を前に飛ばす時、素足で穿いていると上手く飛ばない。裾の先に小銭を入れておくんです。すると、それが重しになって伸びがよくなる。そういうのは嘉葎雄さんに教えてもらいましたね」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)、『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)ほか。

※週刊ポスト2014年8月8日号

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