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日本の公教育整備は遅れている?

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●[対談]乙武洋匡×鈴木寛「日本の教育問題」(1)

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乙武洋匡: 参議院議員時代は12年間にわたって、「教育」をテーマに活動されてきた鈴木さんですが、もともと教育問題に取り組もうと考えたきっかけは何だったのでしょうか?

鈴木 寛: 私は大学卒業後、通商産業省に勤務して様々な業務に携わっていたのですが、山口県に出向中に松下村塾に20回も通い、大いに触発されて帰京後、1995年から若者塾を始めました。そのうち大学でも教鞭をとり、日々、若い人たちと接し始めたことで、若者が秘めた無限の可能性というものを実感したんです。なにしろ、大学生や高校生というのは1カ月もあればガラリと変わるし、中学生なら1週間で別人のように成長する場合もあります。

乙武: よくわかります。私も小学校教員として子どもたちの目覚ましい成長を目の当たりにして、驚かされる毎日を送っていました。

鈴木: そこで気付かされたんです。世の中を良くするのは法律や行政だと私は錯覚していたけれど、実際はそうではないな、と。若者の可能性を知ることで、あらためて人づくりの重要性を痛感したわけです。生徒・学生が教員の指導を得ながら存分に学べる環境をつくるために、議員という立場から、現場のプレイヤーをサポートしたいと考えたんです。

乙武: なるほど。教育問題に取り組むために、2001年に参議院議員選挙に立候補されたわけですね。

鈴木: そう。当時、やりたかったことが大きく2つありました。1つは学習権の充実。わかりやすくいえば、奨学金制度の整備や、高校・大学の授業料支援ですね。どんな境遇に生まれ育っても、すべての子供や若者が最善の学ぶ機会を得られるようにするということです。そしてもう1つは、地域住民がつくるコミュニティスクールの拡大でした。

乙武: そうした政治理念を、当時は「コンクリートから人へ」というフレーズで表されていましたよね。

鈴木: そうですね。日本は1980年代後半から、省庁の予算配分比率の順位がほとんど変わっていないんです。ところが、この20年で実際の社会は大きく変容しています。たいていの国や企業は、その間にハード中心の投資からソフト(ヒューマン)中心の投資へと移行しているのに、日本だけが変わらずにいる。これはおかしい。

乙武: それが教育政策の遅れにもつながり、ひいては日本社会の停滞にもつながっていると感じていた。だからこそ、投資の比重を「コンクリートから人へ」移すべきだ、と。

鈴木: その通りです。結果、2009年に民主党政権が実現し、2年目には戦後初めて、文部科学省への予算配分が、国土交通省を超え、厚生労働省に次ぐ2番目まで引き上げることができたんです。

乙武: 予算額で国土交通省を上回ったというのは象徴的な出来事でした。その予算で、高校無償化や35人学級の推進といった教育改革が進められていったわけですが、そもそもなぜ日本では、それまで教育への投資が進まずにきたのでしょうか。

鈴木: 率直にいってしまえば、政治家にとって“教育は票に結びつかない”という意識がはびこっているからでしょうね。だから、公教育を重視する国会議員がほとんど存在しなかった。

乙武: 私自身、現場で教師を務め、現在も東京都教育委員として活動しているのも、「教育は国家の根幹である」という意識があるから。ぜひ、政治家にも自身の得票にかかわらず、教育の重要性にもっと目を向けていただければと思っています。

(構成:友清 哲)

【今回の対談相手】
鈴木 寛さん
1964年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。通産省、慶應義塾大学助教授を経て、2001年、参議院議員初当選。12年間の国会議員任務の中、民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化・情報を中心に活動。現在は、日本初の東京大学・慶應義塾大学ダブル教授、社会創発塾塾長、日本サッカー協会理事ほか。

(R25編集部)

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