日本に「外国人の板前」がいないワケ

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日本に「外国人の板前」がいないワケ

 普段あまり意識することはありませんが、日本にはよく見ると「なんで??」と疑問に思う物事がたくさんあります。
 たとえば、同じような医療サービスを受けたら大体どこの病院でも同じくらいの金額になりますし、外国で料理修行をする日本人はいるのに、和食の修行をするために日本にやってくる外国人はほとんどいません。これらは考えてみると不思議なことです。
 もちろん、こういった現状の裏には日本のさまざまな規制や法律があるわけですが、実態に即した適切な規制ばかりではありません。必要以上に厳しかったり、時代遅れになっている規制も多々あり、それらは私たちの生活を不自由で不便にします。

■古い医療を提供すると、病院はもうかる
 冒頭で触れたように、医療サービスはどの病院で受けても同じ値段になり(入院ベッド代は除き)、価格競争は存在しません。当たり前のことのように思えますが、他の職業では技能が高い人には高い報酬が発生するわけですから、「名医」も「ヤブ医者」も同じ値段というのはちょっとおかしい気もします。
 医療費というのは「診察報酬点数表」に基づいて算定されます。「これをしたら何点」という基準が国によって定められ、その合計点数に10を掛けたものがトータル料金で、私たちはそれぞれに応じた割合(現役世代は3割、70歳以上の高齢者は1割、ないし2割)を支払うわけです。
 確かにこの「公定料金」のおかけで日本中どこにいても一定水準の医療を受けられるというメリットはあるのですが、病院からしたら、最新の医療機器を高額で買って最先端の医療費を提供しても、古い医療機器で従来通りの医療を提供しても、入ってくるお金は同じ。それなら、設備投資にお金をかけて最新医療を提供するのではなく、従来の医療のまま患者をたくさん集めてくるほうが病院は儲かります。結果として、古くなりかけた医療しか受けられないのであれば、私たちとしても損なお話ですよね。

■外国人の板前がいないワケ
 また、日本に外国人の板前がいないのも、法律による規制が強く関係しています。
 日本の「出入国管理法」では、料理の技能を持つ外国人には「技能」の在留資格が与えられますが、その技能は法務省の省令で「外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務」に限られています。
 つまり「外国料理」ならOKですが、「和食」はダメということ。日本で和食の修行をした外国人が母国で和食レストランを開くと考えると、この省令は日本の食文化を世界に広める足かせだともいえます。
 この規制の根本にあるのは「日本に在留する外国人は、外国の先進的な技術や文化を伝授するためにやってくる」という、幕末・明治初期の発想。
 2014年から外国人の和食修行が認められましたが、こうした時代遅れの規制はまだ少なくないのです。

 通産省の役人として、長らく「規制を課す立場」にいた原英史さんの著書『日本人を縛りつける役人の掟:「岩盤規制」を打ち破れ!』(小学館/刊)は、今回紹介したような、「ちょっとおかしな規制」を集めて、その背景を明かしてくれます。
 こうした規制の裏には、既得権益層の利害と官僚(役人)たちの思惑があり、一部の層が無数の市民から搾取するという構図があります。本書は、単純に読み物として楽しめるだけでなく、日本がどんな人々によってどのように運営されているかを知るために役立ってくれるはずです。
(新刊JP編集部)

【関連記事】 元記事はこちら
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