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土用の丑の日に鰻を食べたのは江戸時代から。江戸前といえば鰻だった

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連載【江戸の知恵に学ぶ街と暮らし】
落語・歌舞伎好きの住宅ジャーナリストが、江戸時代の知恵を参考に、現代の街や暮らしについて考えようという連載です。

土用の丑の日に鰻を食べるようになった仕掛け人がいる?

7月29日は土用の丑の日。夏負けしないようにと、今でもこぞって「鰻のかば焼き」を食べる。

土用とは、立春、立夏、立秋、立冬の前日までの18日間を指し、次の季節の準備をする時期に当たるのだそうだ。夏の土用の丑の日に鰻を食べる習慣は、江戸時代後期からといわれている。よく知られた説は、学者で芸術家、発明家でもある平賀源内が、懇意にしている鰻屋に頼まれて、商売繁盛のためにコピーライターの才能を発揮したことに始まるというもの。

当時は、土用の丑の日に「う」の付くものを食べると夏負けしないと言われていて、ウリや梅干し、卯の花などが食べられていた。そこに「う」の付く鰻を食べさせる店の戸口に「本日土用丑の日」と張り出したので、大ヒットしたというのだ。これには、諸説あり、本当のところは定かではない。

かば焼きの「かば」って何だ?

土用の鰻が流行りはじめたころは、まるごとを筒切りにして、串に刺して焼いた。その形が植物の蒲(がま)の穂の形に似ていたことから、「蒲焼」と呼ばれたのが語源だといわれている。蒲といって、筆者が思い浮かぶのは、出雲伝説の因幡の白うさぎ。毛皮を剥がされたうさぎが蒲の穂の花粉を身に付けたという、あの蒲だ。

その後、鰻を裂いて開いた身に串を刺して焼くようになり、「筏(いかだ)焼」と呼ばれたが、筏焼より蒲焼が一般化して今に残っているという説が有名だ。これにも諸説あるようだ。

江戸前といえば鰻

「江戸前」といえば、今は江戸前寿司を思い浮かべるだろう。
江戸時代に江戸前といえば鰻だった。浅草川や深川周辺で、鰻がとれた。杉浦日向子さんの本によると「江戸の生活排水は、米のとぎ汁や野菜くずが豊富で、栄養価が高く、それらが流れ込む濠や河口付近は、まるまると肥えた上質な鰻がとれた」そうだ。
握り寿司のほうが人気が出てくると、江戸前の名称を寿司に譲ることになったようだ。

鰻の漁の仕方は、江戸時代も今もあまり変わりはなく、餌を付けた縄を仕掛けておいたり、竹で編んだ道具を使って仕掛けたりといったもの。ただし、釣ったはよいけれど、素人にはさばくのが難しい点も今と同じようだ。その様子を描いた落語も語り継がれている。

【画像1】「日本山海名物図会 5巻」より抜粋(画像:国立国会図書館ウェブサイト)

落語「鰻屋」(別名:素人鰻)とは…

酒好きだけど、金はない男。友人がただ酒を飲みに行こうと誘う。
なんでも前に鰻屋に入って、酒を飲みながら鰻が焼き上がるのを待っていたが、なかなか出てこない。鰻裂きの職人がいなくて、鰻を裂くことができないから、お勘定はいらないということになったという。その店を見たら、今日も職人がいないから行ってみようというのだ。

鰻屋に行ってみると、職人がいないから後で寄ってくれと主人にいわれるが、そんなことで引き下がらないのが江戸っ子。桶の中の太い鰻を主人につかめといって迫るが、主人はなかなかつかめない。糠(ぬか)をかけたらつかめたものの、ヌルヌルと指から逃げていく。鰻を追いかけるように前へ前へと歩き出す主人。

「おいおい、いったいどこへ行くんだ?」
「前に回って、鰻に聞いてください」

指を上手く使って、鰻が指から逃げ出すさまを面白く演じるのが妙味の落語だ。

さて、下の浮世絵は、「山海愛度図会 にがしてやりたい」という浮世絵。当時は「放生会(ほうじょうえ)」という、供養のために捕獲した小動物を放す儀式が流行っていた。そのための小動物(亀や小鳥、鰻など)を売る店もあったようだ。鰻は、鰻屋で使えない小さな鰻が買われたという。

【画像2】「山海愛度図会 にがしてやりたい」一勇斎国芳(画像:国立国会図書館ウェブサイト)

ニホンウナギは、2014年6月に、国際自然保護連合から絶滅危惧種に指定された。土用の丑の日に、鰻のかば焼きを食べる習慣は、後世も続けることができるだろうか?

参考資料:
「江戸の暮らしの春夏秋冬」歴史の謎を探る会編/河出書房新社
「浮世絵で読む、江戸の四季のならわし」赤坂治績著/NHK出版新書
「大江戸美味草紙」杉浦日向子著/新潮文庫
「落語と江戸風俗」つだかつみ・中沢正人著/教育出版
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/07/29/66824/

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