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できないことの使い分け

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レジデント初期研修用資料

今回はブログ『レジデント初期研修用資料』からご寄稿いただきました。

できないことの使い分け
選択枝だとか、できることの幅広さと、意志決定の速度とはトレードオフの関係にある。“それにできないこと”に注目することで、そのメディアの使いどころみたいなものが見えてくるんだと思う。

電話は便利
たとえば病棟で何か看護師さんに確認したいことがあったとして、看護師さんたちはふだん、ベッドサイドを歩き回っているものだから、確認したい何かを知っている看護師さんをつかまえるのは、けっこう難しい。

こういうときにはたいてい、ナースステーションにいる看護師さんに、目当ての看護師さんへの連絡を頼むんだけれど、そこから先は伝言ゲームだから、話がなかなか伝わらない。連絡がつくまでにまず時間がかかるし、その人からの返答もまた、自分が望んだ形式にならないことは、実際多い。

こういう状況で、ナースステーションから一歩外に出て、今まで自分がいたその場所に電話して、同じ要件を、電話を取った看護師さんにお願いすると、話が一気に進む。電話を取った人に責任みたいな感覚が発生するからなのか、目当ての看護師さんはすぐにつかまって、電話口に出てくれる。

人にものをお願いするやりかたとしては、これはずいぶん失礼な方法なんだけれど、直接自分が病棟に行くのと、電話するのと、待ち時間があまりにも違うものだから、どうしても時々、電話という手段を使ってしまう。物理的な距離でいったら、直接行ったほうが圧倒的に近いのに。

電話というメディアにできないこと
電話というメディアでお互いに話をするためには、電話口に出て、音声で会話する以外の手段が選べない。電話では身振りや手振り、空気感みたいなものを伝えることができない。交渉に使える手段が限られている、裏を返すとやるべきことが決まっているので、選択の幅の狭さが速さにつながっているのだと思う。

自分たちが病棟に直接出向くと、いろんな選択枝が生まれる。まずはだれがオーダーを受けるのか、どういう手段で情報の持ち主に連絡を取るのか、連絡が取れたとして、どうやって結果を返すのか、選択肢が多すぎて、みんなどうしていいのか分からない。

初対面の人間どうしを同じ部屋に入れても、同じことが起きる。最初はたぶん、お互いどうしていいのか分からない。「こんにちは」でも、相手をいきなり殴っても、ズボン下ろして見せたりするのも、全て交渉の選択肢だから、自由すぎて、かえって何もできなくなってしまう。

テキストを打つことしかできないネット世界だと、初対面であっても、昔からの知りあい同士でも、キーボードを介したやりとり以外はできない。実世界での会話に比べると、できることが極めて少ないから、会話はすぐに始まって、話は広がりやすい。

できないことを使い分ける
メディアの不自由さに注目すると、その使いどころが見えてくる。

たとえば手紙には、“自分で書いて投函(とうかん)しないといけない”という不自由さがあって、しばしば返事がもらえない。逆に言うと“返事がもらえない”という事実を作るのに、手紙というメディアは便利で、こちら側からあえて手紙を書くメリットというのは、状況によっては武器になる。

講演会というメディアには、“そこにいないと伝わらない”という不自由さがある。会話の記録だとか、動画が撮られていたところで、演者と観客が共有した空気感みたいなものは伝えられない。だから、伝えられない何かを、そこにいる人たちに限定しして共有することができる。

『Twitter』みたいな短文メディアは、文章が短いから誤解が少ないし、ログがいつでも参照できるから、時間軸を超えて会話ができる。このメディアはその代わり、言葉をつぶやいて2秒もすると、もう絶対に取り消せないから、政治家の人たちみたいに言葉の重たい仕事との相性は最悪に近くて、使いこなすのは難しいのだろうと思う。

だれかと交渉する、情報をやりとりするときに、どんなメディアを選択するのか、選択肢が増えた現在だからこそ、“何ができない”メディアを選択すべきなのか、考えるとたぶん役に立つ。

執筆: この記事は今回はブログ『レジデント初期研修用資料』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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