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札幌で人気のスイーツ「きのとや」 経営危機を乗り越え達した「従業員を大切にする会社」の境地

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従業員の誕生月には「祝い金1万円」と特別休暇が与えられ、2カ月に1回「5000円分のケーキ券」が配られる会社――。札幌で大人気の洋菓子店「きのとや」は、「安心・安全」と「従業員を大切にする」というテーマを掲げて成長を続けている。

2014年7月17日の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、きのとやが業界初の「ケーキ宅配」で成功を収めながら、倒産寸前の危機を乗り越えてきた経緯を紹介していた。

創業2年目で「宅配」が大当たり

スイーツ激戦区の大丸札幌店には、「白い恋人」の石屋製菓や「マルセイバターサンド」の六花亭、「ポテトチップチョコレート」のロイズなどが軒を連ねる。きのとやは、このデパ地下入口の一番目立つ位置に店舗を構える。

札幌を中心に9店舗、売り上げは37億円と絶大な人気を誇る。地元の人が「迷ったら、きのとやにすれば間違いない」と評するおいしさを、試食した村上龍が「食べて分かった」という。

「おしつけがましくない。飽きない、いくらでも食べられる味。まっとうな努力の積み重ねで売れていったんだろうなと分かります」

創業者で社長の長沼昭夫氏は、バティシエではないというが、お客の立場でおいしさを追求してきた。ケーキづくりの条件は「最高の材料・素材、鮮度、手間をかけること」と語り、作りたてを提供するために製造工場からは1日5~6便に分けて店舗へ配送、最高の素材のために自社農場まで持つ徹底ぶりだ。

きのとやの創業は1983年、長沼社長が「ケーキは人を幸せにする」との思いで始めた。しかし立地の悪さから、売るより捨てるほうが多かった。

創業2年目に「来てくれないなら、届ける」と、なかば成り行きで始めた宅配サービスが、雪深い北海道で大当たり。現在は送料一律300円(税抜き)で札幌市近郊にケーキを配達してくれる。年間の宅配件数は4万件にのぼる。

食中毒事件にも「作った社員が悪いわけではない」

しかし創業3年目のクリスマスに、生産能力を超える2000個の注文を受けてしまった。24日に商品の宅配が間に合わず、お客が店に怒鳴り込んできた。

長沼社長は25日に「いまさら」と怒られながら、1軒1軒ケーキを持って謝って回った。「私がパティシエではなく、判断が甘かった」と当時を正直に語る。その後は、24日の宅配は行わないことにしたという。

さらに1997年には、サルモネラ菌による食中毒事故を起こしてしまう。卵の温度調節の誤りから起きたことだった。長沼社長は「みんなにつらい思いをさせて悪かった」と全社員の前で謝罪した。誰が作ったかはみんな分かっていたが、責める気には全くならなかった。

「その一人が悪いわけではなく、会社自体にそういう土壌があった。全責任は私にあると考えて、社員に謝り、事故にあったお客様にも、全部私ひとりで謝りに行きました」

社員たちは、5日間の営業停止のあいだ休まず通ってきて、店の掃除を徹底的に行ったという。店長だった中田英史さん(現常務)は当時を振り返る。

「店内の冷蔵庫、床、壁、天井はもちろんだが、やり尽くすと、今度は外に出てレンガ目地を歯ブラシでひとつひとつこするところまで、地べたに這いつくばって、スタッフはみんなやっていました」

「従業員が会社に誇りを持てるか」が経営の根幹に

この事故をきっかけに「安全・安心」を最優先に掲げたケーキづくりが固く守られ、工場の壁には事故を起こした日付が「あの日を忘れない」という言葉と共に掲示されている。

そして長沼社長は、「いい会社はひとりでは作れない、社員みんなで作りましょう」という考えのもと、「従業員を大切にする会社」を目指すに至る。

誕生月祝い金や特別休暇、ケーキ券はパート・アルバイトにも配られる。あるパートの女性は「こんなところ今までなかった。がんばろうという気になります」と話す。長沼社長の方針をみて、村上龍はいまの時代をこう語った。

「会社に対する忠誠心が、給与の上昇だけでは担保されなくなり、従業員との信頼関係を持てるか、従業員が会社に誇りを持てるかということが、経営の根幹に関わる時代になったと思う」

基本的なお金はもちろん必要だが、人はお金だけで動くものではない。どんな業種でも、会社でなくとも、「大切にされている」と思う感覚で、人は頑張れるものだと改めて感じた。(ライター:okei)

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