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「人事部不要論」が再燃 権限移譲や外部委託で「専属社員」なんかいらない?

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ウェブ制作などを手がけるカヤックは2014年7月7日、「ぜんいん人事部化計画」を発表した。社員199人全員を、人事部に配属する。専属社員は4人で、残りは「兼任部員」となる。

人事部といえば、ある程度の規模の会社であれば、必ず置かれている部署。大企業においては、エリートコースのひとつと見られることもある。しかし現場から距離の離れた本社の人事部員たちが、採用や人事施策など重要事項を主導することに対する批判は、以前から根強く存在しているようだ。

90年代にも「一括集中管理」の弊害指摘

7月初旬、大阪のITベンチャー経営者の大石裕一氏が、「独立した人事部門」による「採用ごっこ」を批判して話題となった。「各部門が採用機能を持たなければ意味が無い」という考え方に共感した人も少なくなかったようだ。

実は採用以外でも「人事部不要論」を唱える人は、以前から存在していた。経済学者の八代尚宏氏は、1998年に刊行された「人事部はもういらない」で、「人事部の解体」こそが、企業の活性化と社員の利益に直結すると断じている。

社員1人ひとりの能力やモチベーションを細やかに見るべき時代には、人事部が一括集中で「年次による人事管理」をする弊害が大きく、採用・評価・配置などは各部局に任せたらよいという。

ただ、人事部がこれまで採用から昇進、異動までの権限を独占してきた理由もある。日本企業には「新卒一括採用」があり、「終身雇用」の実現のために雇用調整が容易にできず「配置転換」が重要になる、という事情があるからだ。

そんな中、果敢に人事部を廃止した大手企業もある。積水化学工業では2008年に人事部を廃止し、CSR部に機能を移管した。大久保尚武社長(現会長)は、廃止に踏み切った理由をこう説明している。

「部下の仕事ぶりを知っているのはそのラインの長。ライン長ほど自分の部下のことを知っている人間はいない。訳の分からない人事部がどうこう言っても、本質とは関係がない」

石川県の北國銀行も2013年4月から人事部を廃止し、総合企画部に統合した。経営戦略と一致した人材育成を図るためだ。

「シェアードサービス」でコスト削減、専門性アップ

冒頭のカヤックは、現場の社員が人事施策を考えることで「実現可能性の高い施策が出てくる」ことや、人事部の仕事を通じ「会社のじぶんごと化が促進される」ことをメリットに挙げている。

『就職のオキテ』の著者サカタカツミ氏も、2013年のコラムで「今年は『脱・人事部採用』元年になる予感」とし、採用プロセスに現場社員を入れて細かい評価を任せる企業が出てきていると紹介している。

「いままでの、コミュニケーション能力やリーダーシップなどといった、フワッとした言葉による曖昧な基準の重要度は下がり、誰が見ても一目瞭然な『判断しやすい』指標が用意され、それによってジャッジされるのです」

米ゼロックスが、人材採用にコンピュータによる「適性検査」を用いたところ、人間による面接より離職率が5分の1に減ったと報じられたこともあった。将来的には面接担当者も、アルゴリズムを備えた「人事ロボット」に置き換えられるのかもしれない。

人事部の業務は、もはや自社で抱え込む必要すらないという話もある。これまで人事部が引き受けてきた給与計算や福利厚生対応の業務のみならず、人事情報の管理や人事システムの構築・運用をも受託する専門会社が増えてきた。

このような会社は「人事シェアードサービス」と呼ばれ、複数企業にまたがって業務を受託することで、1社あたりのコストも大幅に削減しつつ、専門性の高さを確保することが可能になっているようだ。

伝統的な「無難志向」いつまで

現場主導の人材採用は、すでにベンチャー企業などの中途採用で実現されている。あるヘッドハンターによると、規模の小さい成長企業では、即戦力になりそうな社員を現場が判断するようになっているという。

一方、大企業はまだまだそうした動きが鈍い。ある程度稼げるビジネスモデルができ上がっている大企業では、人事部自身が一括して人材のフィルタリングを行うことに強いこだわりがあるという。

「野球に例えれば、ホームランを打てるクセのある人材より、二塁打を打てる素直な人材の方がいい、と言われますね」

しかし、そんな傾向もいつまで続くのか。ヘイ コンサルティンググループの高野研一社長は、日経ビジネス2014年6月23日号の「人事部こそリストラ」という特集内で、ビジネスのスピードが速く複雑化している業界においては、様々な専門性を持った人材が必要になっていると指摘している。

「もはや人事部が現場の従業員の評価や昇進を判断しようがありません。おのずと人事権は現場へと移っていきます」

伝統的な人事部の「無難志向」も、経営戦略や採用方針の変更によって当然変わってくる。そのとき、従来の人事部たちが自らの役割をどう対応していけるかが問われることになるだろう。

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