「部屋割」で問われるホテルマンのセンス 実はこんなことまで考えている

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「部屋割」で問われるホテルマンのセンス 実はこんなことまで考えている

こんにちは、ホテル業界の裏側を紹介するユズモトです。この業界では、スタッフがお客様の部屋割をすることを「アサイン」といいます。

部屋割のタイミングは、お客様がチェックインされる当日に行うところもありますが、私が働いていたホテルでは、前日夜中のシフトに入っているフロントがアサインをかけていました。フロントは、意外と色んなことを考えながら部屋割をしています。

高齢夫婦は「エレベーターに近い部屋」、男性の一人客は…
(イラスト:ユズモト)

たとえば、ご家族やお友達同士は、隣や向かいの部屋にアサインをかけるのは当たり前のこと。他にも、ご高齢のご夫婦であれば「エレベーターから遠くの部屋だと歩くの大変かなあ…」とか考えて、エレベーター近くの部屋にしてみたり。

お子様連れなら、ダブルルーム(2人用の客室)の中でも少し面積の広い角部屋にしてみたりと、こだわろうと思えばどこまでもこだわれる――。それがアサインなのです。

特にマニュアルで「この場合はこのように部屋割をする」と細かく決められているわけではないので、どうアサインをかけるかは、その人のセンスにかかっています。

センスといえば、同期入社のA君を思い出します。彼が配属になったホテルは「有料放送はテレビカードを購入しないと見られない」という昔ながらのシステムをとっていましたが、彼にはアサインのこだわりがありました。

それは、「テレビカードの自販機付近には必ず男性のお客様をアサインする」こと。A君はニヤリと笑いながら、

「だって、テレビカード買うのって大抵男性でしょ?」

と教えてくれました。それがテレビカードの売上アップにつながっていたのかどうかは分かりませんが、「よく気付くなあ」と思ったのを今でも覚えています。

部屋割次第で「電気代の削減」もできちゃう?

…とまあ、普段はこのように「お客様の滞在をより快適なものにしたい」という精神のもとに、色々なことを考えているのですが、時には「クレームを防ぐために」という防衛本能に従って部屋のアサインをしていくこともあります。

たとえば、「夜中に音楽を大音量で流す」とか「なぜだか分からないけど壁をドンドンする」とか、少しクセのあるお客様がいらっしゃることが、あらかじめ分かっている時なんかがそうです。

そんな時は、そのお客様の周りの部屋を空室にしたり、すみっこの部屋にアサインしたり、他のお客様にご迷惑がかからないようにアサインをかけています。

ちなみに、大人の事情が絡む話をすると、宿泊者数が少ない日は稼働しないフロアを作っておき、空きフロアは照明レベルを落として電気代削減を目指していたりなんかもします。各フロアに数名ずつアサインなんてかけようもんなら、もれなく支配人のお小言がついてきます。

えらそうに「アサインはセンス」とか言いつつも、しがない若手社員。「支配人に怒られない」ことも頭に置きながら、こんなこだわりを持ってアサインをしているのです。

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【プロフィール】ユズモト
20代半ばの現役OL。就活中に内定をもらったブラック企業に入るのがどうしてもイヤで、何の予備知識もない「ビジネスホテル業界」に新卒で飛び込む。社会人1年目から日本各地を転々とし、接客から営業、経理、調理まで、さまざまな業務を経験する。その後、一般企業に転職し、初めて描いたマンガを2ちゃんねる「ホテルの裏側(?)のマンガかいてみたwww」にアップして一躍時の人に。

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