ベトナムに進出するなら「社員食堂」が大事 マズい飯がストライキの原因になることも

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ベトナムに進出するなら「社員食堂」が大事 マズい飯がストライキの原因になることも

2014年7月14日の「未来世紀ジパング」は、反中感情が高まるベトナムを取り上げた。南シナ海の領有権をめぐり、中国との衝突が頻発。ベトナムの漁船が中国警察の船に体当たりされる事件や、無線や携帯電話を強奪され獲った魚をすべて捨てられるといった被害は、番組の取材中にも起きていた。

安全基準を満たさないヘルメットなど中国製品への不信感も強く、不買運動にもつながっている。そんな中、日本の低農薬レタスや社員食堂など、日本式の安心・安全システムが広がりを見せている現場を紹介していた。

働くモチベーションは「報酬」より上位に

ベトナムは製造業の生産拠点として各国の企業進出が盛んで、経済成長も著しい。一方で1年間の離職率は約20%と高めで、各企業は雇用の確保が課題となっている。

コンサルティング会社・ヘイグループの調査によると、ベトナムの労働者が働き続けるモチベーションに挙げるのが、1位は福利厚生で、給料などの報酬は2位。中でも社員食堂は特に重要だという。番組ゲストでベトナム・ハノイ出身のベト・ハーさんはこう語る。

「社食の問題はストライキにつながる1つの要因なので、みなさん関心度が高い」

ある中国企業で働くベトナム人に社員食堂について聞くと、無料で提供されるとはいうものの「マズい。まるで犬の飯。栄養なんてとれない」と不満を募らせていた。

従業員数1200人の日系企業・十和田エレクトロニクス ベトナムの食堂でさえ、「全然おいしくない。毎日同じで飽きた」と言われていた。従業員の9割が20代前半の女性で、精密機械の組み立てなど行うが、食べ盛りの若い従業員たちも食事を残していた。

地元の社食業者に、サービスや衛生なども含め改善の要求を出してきたが、「やっている」と言うばかり。全く改善されないため、社員食堂の委託業者を昨年ベトナムに進出した日本のシダックスに切り替えたという。

「日本式おもてなし」で需要は増加

日本ではカラオケ店でおなじみのシダックスだが、実は1959年に富士フイルム工場の社食から事業を開始した会社で、社食の運営はお手のもの。1970年にはメニューを自由に選べるカフェテリア方式を導入するなど、日本に社食を急拡大させてきた。

工場の衛生・栄養・サービスをすべて日本式にするため、休日に社員総出で調理場の大改造を行うと、ネズミが飛び出し、床で洗っていた食器や鍋が散乱。徹底した掃除と厨房設備の入れ替えなどで、雑然としていた厨房は見違えるように衛生的に生まれ変わった。

メニューも栄養バランスと調理法を工夫し、飽きさせない配慮をすることで、従業員の女性たちにも「全部おいしくなった。サービスが断然いい」と好評だ。

「私たちは、やっぱり食事が大事なんです。栄養のある食事なら、仕事も頑張れますから」

ベトナム人はもともと「食の安全を常に気にする」人が76%(GFK調べ)と世界平均36%を大きく上回る。中国製の野菜は専用の洗剤で洗わないと食べず、毎日30分もかけて洗う。そこで日本式の低農薬栽培でつくられたレタスが「洗わず食べられる」と人気で、価格は中国産の2.5倍ほどだが飛ぶように売れている。

ギャラクシー・シダックスは、スタッフにもサービス業の意識を徹底させ、進出から1年で契約は33社に拡大したという。今後も「日本式おもてなし」で需要は増えていくとの見通しだ。確かにこの手の決め細やかさでは、日本は中国の追随を許さないだろう。

社員の誕生会開催で売り上げ20倍アップ

沸騰ナビケーターの後藤康浩氏(日本経済新聞社 編集委員)は、福利厚生に力を入れるベトナムの会社について解説した。

「社員旅行や社員の誕生日会を開き、フットサル場を建設したある会社は、離職率が0.3%、売り上げも2年で20倍以上のびた。日本も高度成長期には、福利厚生は社員を引き留めモチベーションをアップする切り札だった。1960、70年代の日本を見るような思いがする」

高度成長期を迎えるベトナムで「日本式」への信頼が深まれば、日本経済にとっても良いことだ。福利厚生が社員のモチベーションを上げ、会社の利益に直結するのであれば、かつての日本の流儀を「輸出」すればいい。

ただ、一方の日本企業は、社会が豊かになってニーズが多様化し、経費削減も厳しく、福利厚生が復活することはないだろう。いくら景気が良くなっても温かな家族経営には戻らないと思うと、和気あいあいと働くベトナム人がうらやましい気もした。(ライター:okei)

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