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「サウンド&レコーディング・マガジン」通巻400号記念インタビュー 編集長 國崎晋氏に聞く「サンレコ」の歩みと時代を変えた機材たち

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「サウンド&レコーディング・マガジン」の歩みと時代を変えた機材たち
通巻400号記念 編集長 國崎晋氏 インタビュー

サウンド&レコーディング・マガジン編集長
國崎 晋
7月15日発売の2014年8月号で通巻400号を迎えた雑誌「サウンド&レコーディング・マガジン」。多くのエンジニアやアーティストが手に取り影響を受けてきた同誌の編集長 國崎晋氏に、これまでの道のりや想い出深い出来事を振り返っていただきつつ、400号の特集でもある”時代を変えた機材”についてお話を伺いました。

PROFILE
國崎 晋 (くにさき・すすむ)
1963年生まれ。サウンド・クリエイターのための専門誌『サウンド&レコーディング・マガジン』編集長。ミュージシャンやプロデューサー、エンジニアへの取材を通じての制作現場レポートや、レコーディング機材使いこなしのノウハウ、新製品のレヴューなどを中心に展開している誌面は、プロ/アマ問わず多くのクリエイターの情報源として重宝されている。2010年からはPremium Studio Liveと題したレコーディングを目的としたライヴ・イヴェントを開始。収録した音源を高音質なDSDフォーマットで配信するレーベル活動も展開している。

テクノロジーの進化が追い風となった「サウンド&レコーディング・マガ ジン」の歩み

── 7月15日発売の8月号で通巻400号を迎えられたとのこと、誠におめでとうございます。まずは率直なご感想をお願いします。

國崎:よくもまあ、こんなにたくさん出せたなというのが率直な感想です(笑)。「サウンド&レコーディング・マガジン」は1981年に「キーボード・マガジン」の増刊号として創刊したんですが、聞くところによるとしばらくは会社のお荷物雑誌だったらしいんです。それまで「キーボード・マガジン」や「ギター・マガジン」など楽器をテーマにした雑誌を作っていたのに、いきなり“レコーディング”がテーマですから、やはりマニアック過ぎたんでしょうね。でも、1981年は大滝詠一さんの『A LONG VACATION』、翌1982年はマイケル・ジャクソンの『スリラー』が発売され、レコーディングが音楽に大きな影響を与えることに大勢の人が気付くようになった時期でもありました。その後テクノロジーがどんどん発達し、毎年のように驚くような新製品が発売され、それこそレコーディングに対する知識や理解無しには新しい音楽が作れないようなムードになっていった。そんな状況が追い風となりお荷物を脱して、ここまで続けることができたんだと思います。

── 國崎さんはいつから編集部にいらっしゃるのですか?

國崎:1990年からです。ちょうど通巻100号というのを作っている最中に入りましたから、300冊も作ってきたんですね(笑)。

── その中で強く印象に残っている号はありますか?

國崎:うーん、いろいろありますけど、やっぱり通巻200号とか通巻300号とかの記念号は思い出深いですね。特に通巻300号では「あの時、あの音!」という特集を企画し、山下達郎さんの『FOR YOU』やBOφWYの『BOφWY』など、日本の音楽シーンに大きな影響を与えた作品を選び、制作者自身に振り返っていただいたんですが、編集作業をしていて本当に楽しかったですね。逆に悲しかった……と言いますか、今年の3月号では佐久間正英さんがお亡くなりになったことを受けて、過去に佐久間さんが出られた記事をすべて再録したんですが、いろいろなことを思い出して辛かったです。それでも佐久間さんの思いを次世代に伝えなければという気持ちで何とか作り上げました。

「サウンド&レコーディング・マガジン」通巻300号

「サウンド&レコーディング・マガジン」2014年3月号

── 発行を続けていくにあたって、困難や苦労されたことはありましたか?

國崎:いろいろありましたけど、外的な要因というよりは、自分たちでハードルを高く設定してしまい生じた苦労の方が多かったと思います。例えば、雑誌の付録にフロッピー・ディスクを付けたり、CDを付けたのは「サウンド&レコーディング・マガジン」が日本で初めてだと思うんですけど、実現させるとなるといろいろ厄介な問題が生じたんですね。でも、それをひとつひとつ解決していくのをむしろ楽しんできました。最近だと2013年9月号で相対性理論の人たちと一緒に「みらいのミックステープ」というAR(拡張現実)付録を作ったんですが、これは付録のペーパークラフトを組み立てるとカセット・デッキになって、それに専用のアプリをインストールしたiPhoneをかざすとテープが回り出して相対性理論の未発表曲が流れるという、すごく斬新な試みだったんですが、ギリギリまでアプリの審査が通らなくて本当に胃の痛い思いをしました(笑)。

相対性理論 AR(拡張現実)付録「みらいのミックステープ」

── そこまで自分たちを追い込むものなのですか?

國崎:ついつい新しいことをやりたくなってしまうんですよね。実はそのAR付録の号は紙版だけを発行する最後の号……次の2013年10月号からはiPad版も出すことになっていたので、紙でしかできないことをやる最後のチャンスだったんで無理をしました。

「サウンド&レコーディング・マガジン」iPad版
デジタルの登場で不可能だったことが可能に

「サウンド&レコーディング・マガジン」通巻400号記念インタビュー 編集長 國崎晋氏に聞く「サンレコ」の歩みと時代を変えた機材たち(2/2)

「サウンド&レコーディング・マガジン」の歩みと時代を変えた機材たち
通巻400号記念 編集長 國崎晋氏 インタビュー

デジタルの登場で不可能だったことが可能に

── 今回の400号記念特集「あの時、あの機材!」はどのような内容なのでしょう?

國崎:通巻300号が「あの時、あの音!」という、時代を変えた音楽をフィーチャーした特集だったので、今回は時代を変えた機材にフォーカスしてみようということですね。

サウンド&レコーディング・マガジン 400号記念号
── 時代を変えた機材とはどういうものですか?

國崎:その機材が登場する前と後で音楽の作り方が変わってしまったものです。レコーダーやミキサー、シンセやサンプラー、それにコンピューターのソフトなど幾つかのカテゴリーに分けて、その中でエポック・メイキングな機材をピックアップしています。例えばカセットMTRの元祖であるTEAC Portastudio 144とか、YAMAHAのデジタル・エフェクターSPX90、ROLANDのハード・ディスク・レコーダーVS-880、DIGIDESIGN Pro Toolsなどですね。

── それらの登場によって、どのような変化がもたらされたのでしょうか?

國崎:時代を変えた機材はほとんどがデジタルです。デジタルってそれまで不可能だったことが可能になる……例えばピッチを変えずにテンポを変えるとか、アナログでは絶対にできなかったことができるようになるんですね。それともうひとつデジタルのメリットとして見過ごせないのが、“安くなる”っていうこと。つまり、デジタルが起こす革命って、昨日までできなかったことが、今日はできるようになり、明日はそれがアマチュアでも買えるような値段になっているということ。そのように広まっていくことで新しい音がどんどん生まれていったんです。

── 國崎さんが個人的に思い入れのある機材はありますか?

國崎:今回の編集をしていて、もう懐かしい機材ばかりで……僕もそうですが、寄稿してくださったミュージシャン/エンジニアの方々も思いっきり懐古モードになって、もっともっと書きたいとおっしゃってましたね(笑)。その中でも自分にとって思い入れがあるのはROLAND MPU-401ですね。1983年に発売されたパソコン用のMIDIインターフェースなのですが、当時学生だった自分でもコンピューターで音楽制作ができるようになって狂気乱舞しました。

── そんな歴史を踏まえた上で、現在のレコーディング機材にはどのような特徴がありますか?

國崎:テクノロジー的には少し踊り場というか、斬新なものは出てきていないですね。逆にデジタル前提のレコーディングに対して、有効に作用するアナログの製品が増えてきている気がします。例えば、ハイクオリティなマイク・プリアンプだったり、リボン・マイクが復権してきたりといったことですね。

ブームの創出もメディアの重要な仕事ー「これからもいろいろと仕掛けていきたい」

── この他、記念号で皆さんに読んでほしい注目の記事はありますか?

國崎:記念号ということでやはりお祭り気分は出したいと思い、中田ヤスタカさんに記念楽曲を作っていただきました。中田さんも昔から読者だったので、“読み始めたときの試行錯誤の気持ちに戻って作った”と楽しんで作ってくださいました。Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅで聴ける中田さんのトラックとはまた違った魅力を持った曲に仕上がっていますので、ぜひ聴いてみてください。通巻300号のときは音楽を小山田圭吾さん、映像を高木正勝さんに作っていただいた記念楽曲をDVD付録にしたのですが、今回の中田さんの作品は音楽配信サイトのOTOTOYでダウンロードができるようパスコードを封入しました。そういうのも時代の変化ですよね。

── 今後はどのような「サウンド&レコーディング・マガジン」を目指して行くのでしょうか?

國崎:これはずっとスタッフに言い続けていることですが、“インタビューであろうが製品レビューであろうが、どの記事を読んでも読んでいるそばから音楽が作りたくなる”というのをテーマに作っています。その根幹は変わりません。その上で、毎月雑誌を作るだけではなく、もっと活動を広げていきたいと思っています。実は数年前からレーベルも始めているんです。“Premium Studio Live”と題したイベントをやっていて、レコーディング・スタジオでのセッションをKORGのDSDレコーダーで収録し、それを配信オンリーで販売しているんですね。実はそれが最近の“ハイレゾ”ブームのきっかけの1つになったんですが、そういうきっかけ作りも僕らメディアの重要な仕事だと思っていますので、これからもいろいろと仕掛けていきたいですね。

サウンド&レコーディング・マガジン 2014年8月号
発売日:2014年7月15日
定価:1,000円(本体926円+税)
仕様:A4変型判/252ページ
■巻頭特集
 通巻400号記念特集「あの時、あの機材!」時代を変えたツールとテクノロジー
■SPECIAL
 中田ヤスタカ(CAPSULE)によるサンレコ通巻400号記念曲「SR400」完成
■ミックス解剖学
 リンキン・パーク「ギルティ・オール・ザ・セイム(feat. ラキム)」
 by アンディ・ウォレス
■Classic Tracks
 ピーター・ガブリエル「スレッジハンマー」
■behind the scene~映像を音で彩る作曲家たち
 井筒昭雄
詳細ページ:http://www.rittor-music.co.jp/magazine/sr/

「サウンド&レコーディング・マガジン」通巻400号記念インタビュー

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