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「忘れられる権利」日本では保護される?

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EUの司法裁判所がGoogleに対し削除命令の判決

「忘れられる権利(The right to be forgotten)」は「忘れてもらう権利」と和訳されることもありますが、インターネット上に自分がアップした、あるいは他者からアップされた情報について、それらが自己に不利益な内容である場合、事後的にそれらの削除を求めることにより、早く社会から忘れてもらおうという権利を意味します。

記憶に新しいところでは、今年の5月、欧州連合(EU)の司法裁判所がGoogle(グーグル)に対し、スペイン人男性に関する不適切あるいは過度の個人情報を削除するよう命じた判決があります。この訴訟で男性は、インターネットで自分の名前を検索すると16年前に報道された不名誉な記事がいまだに表示されることを不当だと主張し、リンクの削除を求めていました。Googleは、EU司法裁判所の判決を受けて、希望者が所定のフォームを使ってリンク削除の申請を行うことができる仕組みを整備しましたが、あくまでEU圏内だけでの対応のようです。

検索エンジンに対する削除請求が認められれば、大きなメリットに

さて、日本では「忘れられる権利」は認められるのでしょうか。これまでの我が国の裁判例を見てみると、ネット上の情報について、個々のウェブサイトに対する削除要求が認められた実例は数多くあります。プライバシーや名誉と、表現の自由とを比較衡量のうえ、プライバシーや名誉が優先する場合には削除請求が認められるという法理論であり、この点にはもはや異論はないと言えるでしょう。

ただ、個々のウェブサイトに対する削除請求ができるとしても、不名誉な情報がアップされたウェブサイトが大量にある場合には、ひとつひとつのウェブサイトを相手取って削除請求する必要があり、その作業量はかなり膨大なものとなります。場合によっては、ネット上に拡散したすべての情報を探し出して削除請求することは不可能なこともあるでしょう。そうすると、個々のウェブサイトではなく、検索エンジンに対する検索リンクの削除請求が認められれば、結果として不名誉なウェブ情報へのアクセスを大幅に減らすことができますから、そちらの方がより大きなメリットがあることになります。

しかし、検索エンジンからリンクされたウェブサイトがプライバシーや名誉を侵害する違法なものである場合、その検索結果のリンク自体を違法なものだと言えるかが問題となります。この点、検索エンジンに関するものではありませんが、ネット掲示板に貼りつけられた「リンク先」が他人の名誉を毀損する違法なものである場合には、リンク元自体が違法となると判断した高裁判例があります。この考え方を推し進めていくなら、いずれは我が国でも、検索エンジンに対するリンク削除を認める裁判例が出てくるのではないかと思われます。

「忘れられる権利」についての議論は未知の領域だらけ

ただし「忘れられる権利」についての議論は未知の領域だらけです。例えば、政治家などが過去のマイナスイメージを消し去りたいと考えて「忘れられる権利」を行使しようとしても、国民の「知る権利」の方が優先されて「門前払い」となるのがオチでしょうが、このような「例外」の枠をどのように画すべきかは何も決まっていません。

つまり「忘れられる権利」の要件・効果あるいは行使の基準など、今後の議論の積み重ねを待たねばならないことが「てんこ盛り」の状況と言っても過言ではないのです。

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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