精神障害の「労災請求」が過去最多 職場で「悲惨な事故」を目撃して発症した人も

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精神障害の「労災請求」が過去最多 職場で「悲惨な事故」を目撃して発症した人も

厚生労働省の発表によると、仕事による強いストレスなどが原因で精神疾患を発病し、労災申請した人数が2013年度に1409人と過去最多を記録したという。そのうち労災認定されたのは436人で4年ぶりに減少したが、昨年の475人に次いで過去2番目に多い。

出来事別の支給決定件数は、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」と「ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」がそれぞれ55件。「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」が49件あったという。

休日なし2週間連続勤務で15人発病

「仕事内容・仕事量の大きな変化」とは、何らかの理由で困難な仕事や莫大な量の仕事を抱えてしまったケースを指す。厚労省の基準によると、仕事量が倍増し、休日や休憩をとるのも困難な状況となると、心理的負荷が「強」と認定される。

公開資料には具体的なケースが書かれていないが、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に掲載されている「死亡災害」事例集には、長時間労働による過労自殺の例が紹介されており、参考になるものと思われる。

ある会社では、男性がシステム部長に就任したことで業務が増えて長時間労働が続き、深夜まで同僚と打ち合わせした後、そのまま会社で自殺した、というものがあった。管理職と営業職を兼務し、月の残業が110時間以上になり自殺に至ったというものもある。痛ましいという言葉しかない。

今回、労災認定された人の時間外労働時間を見ると、「20時間未満」が89人で最多だったものの、次が「100時間以上120未満」で46人と一気に跳ね上がる。「160時間以上」という人も31人いた。休暇なしで2週間以上の連続勤務が精神疾患の原因になったと認定された人も15人おり、うち2人が自殺している。

「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」ケースは、業務中に本人は軽傷や無傷だったものの、状況によっては死んでいたのではないかと思わせる事故や事件を経験して強いショックを受けた、というものが当てはまる。

上司や経営者の責任は重い

前出の事例集には、ここには例をあげないが、職場内の作業中にかなり悲惨な事故にあって死亡したというケースが複数あった。こうした業務中の事故では、同じ職場で働く人が事故現場を目撃していたり、救出作業に当たったりする場合があり、同僚の精神に強い影響を与えることになる。

厚労省の担当者は、今回、精神疾患による労災申請件数が過去最多となった背景について、こう説明する。

「精神疾患で病院に通う人が増えて、『業務に関係して病気になった可能性がある場合には労災申請をする』という認識が広まったという要因もありそうです」

そのような労働者の行動の変化自体は、特に悪いことではないだろう。ただ、職場の事故は不可抗力の場合もあるとはいえ、少なくとも「長時間労働の放置」はパワハラとともに上司がきちんと労務管理をしていれば、防げるものも多いはずだ。部下を死に至らしめた怠慢上司の責任は重い。

また、「名ばかり管理職」に仕立て上げられた人には、相談できる上役がおらず、誰にも頼ることができずに追い詰められた可能性が高い。業績しか見ず、従業員に過重な責任を負わせた会社経営者の責任も追及されるべきだ。

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