地球にやさしい木材搬出技術「馬搬」ってどんなもの?

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地球にやさしい木材搬出技術「馬搬」ってどんなもの?

新書大賞2014を受賞し、ベストセラーを記録している書籍『里山資本主義-日本経済は「安心の原理」で動く』。里山での暮らしから「人間と自然が豊かに共存していくために必要なこと」を提言した同書は、幅広い視点でお金だけに依存しない社会の在り方を説いている。

まさにその里山で、いま見直されつつあるのが林業の技術のひとつである「馬搬(ばはん)」。現在、馬搬は岩手県の遠野で受け継がれ、小規模に行われているという。あまり聞きなれない名前だが、どんなものなのだろう? そこで、馬搬の普及活動を行う「遠野馬搬振興会」の事務局長であり、ご自身も馬方(うまかた※馬搬の技術を有する人)として活躍されている岩間敬さんにお話を伺った。

「馬搬というのは、山で伐採した木を馬に引かせて運び出す作業のことです。チェンソーなどで伐採した木を馬につなげ、山の中からトラックが待機している場所まで運び出すのが馬方の仕事になります」

――いま日本で馬方として活動している人は何人いるのでしょうか?
「もともと馬方は全国にいたのですが、林業では重機の利用がメジャーになり衰退していきました。遠野でも昭和中期までは40人以上の馬方がいましたが、いま現役で働いているのは我々振興会のメンバー6名です。ただ、現在北海道や長野に馬方を志している人もいます」

――木を運ぶとなると重機の利用が多いと思いますが、馬搬はどのような点が異なりますか?
「一番の点は重機と違って、馬搬は山に道を作る必要がないということです。15トンくらいの大きな重機を山に入れるとなると、重機が通るための道を作らなくてはいけません。つまり、山を削ることになるので自然へのダメージが大きいのです。土砂崩れの引き金にもなりえます。その点、馬搬は馬が通れる場所があればいいだけなので、環境にも優しいです。また、重機を動かすとなると1台につき軽油が100L以上必要なので、環境への配慮やコストを考えても馬搬の方が有利だと言えるでしょう」

――重機と比べて効率的にはいかがでしょうか?
「馬搬の場合、1日掛けてゆっくり実施したとしても、多い時には長さ4m・直径30cmくらいの丸太を120本分くらい搬出することができます。重機で道を一から作って搬出する手間を含めて考えると、馬搬の方が効率的だと思います」

――日本のほかに馬を用いて林業を行う国はありますか?
「基本的には森林があればどの国でも行っています。とくに、先進国のなかでも環境保全の意識が高いイギリスでは、チャールズ皇太子を筆頭に馬搬の復興活動が盛んです。馬搬技術を競うコンテストも開催されています」

ちなみに、岩間さんはそのコンテストで優勝経験もあるそう。そんな岩間さんをはじめとする振興会のメンバーが中心となり、馬搬の技術に触れることができる見学会も定期的に開催されているので、興味のある方は是非参加してみてはいかがだろう。

今後は馬搬で搬出した木を使った家具などのブランディングも行っていくとか。若者のUターン・Iターンが増えている昨今、職業の選択肢のひとつとして今後ひそかに注目が集まりそうだ。

●遠野馬搬振興会
HP:https://sites.google.com/site/tonobahan/
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/07/10/65726/

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