ワタミに見る「ブラック風評」の脅威

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厚生労働省がブラック企業対策に本腰

ワタミに見るブラック風評の脅威

2013年9月に、厚生労働省が過重労働重点監督月間や、若者の使い捨てが疑われる企業等に関する無料電話相談を実施したことで、ブラック企業対策に本腰を入れたことは記憶に新しいところです。無料電話相談では、賃金不払い残業に関する相談が53.6%、長時間・過重労働に関する相談が39.8%、パワーハラスメントに関する相談が15.6%にのぼりました。

この結果を受けて、厚生労働省は、長時間・過重労働による健康障害防止措置、賃金不払い残業の解消、職場のパワーハラスメントの予防と解決に力を入れる方針としています。

ワタミはどうしてブラック企業と呼ばれるようになったのか?

ワタミは、2012年、2013年と日本で唯一、2年連続で「ブラック企業大賞」にノミネートされたことから、「ブラック企業=ワタミ」という負のイメージが国民の間に広く定着してしまいました。

発端は、2008年4月に入社した社員が、過重労働が原因で2008年6月に自殺したことです。その後、時間外労働をさせるために必要な36協定の届出が無かったり、賃金不払い残業が常態化していたりということが明るみになりました。そして、極めつけは、創業者の「ワタミは大きな家族のような会社だから労働組合は要らない」といったような発言でしょう。労働組合を結成し、労働組合に加入する権利は労働組合法という法律で労働者に認められています。創業者の著書や発言の随所に垣間見える、順法意識ではなく、精神論に偏った考え方も、ワタミをブラック企業の象徴に押し上げた要因と思われます。

法令違反は会社の存続を揺るがす事態に発展する

ワタミは約30年前に創業された比較的、新しい居酒屋チェーンです。バブル崩壊後に低価格路線を売りに成長し、何度もメディアにも取り上げられ、創業者はカリスマ経営者として脚光を浴びました。そして、居酒屋をベースに、介護事業や学校運営にも乗り出しました。しかし、昨今のブラック企業叩きの標的とされたのか、2013年度はグループ全体で約49億円の赤字に。また、新卒採用でも「人が集まらない」という状況に陥り、大幅な経営戦略の見直しを迫られるようになったのです。

法令違反が会社の存続を揺るがす事態に発展するという意味で、ワタミの辿った経緯は参考になるかもしれません。時代は少子高齢化で多様就業やワークライフバランスを求める声が大きくなっています。法令を遵守していなければ求人を出しても応募がなく、都市部では「人手不足倒産」が現実化してきています。ホワイト企業を目指して、社内の仕組みから見直して持続可能な組織や会社を目指すことが必要です。

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