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「低血糖症」による自動車事故について

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「低血糖症」による自動車事故について

 「低血糖症」の意識障害が原因とみられる自動車事故がここのところ相次いで発生しています。6月30日午後4時ごろ、大阪市において、大阪市中央区の御堂筋八幡町交差点で、ワゴン車が暴走し、通行人ら3人に重軽傷を負わせた事故が発生しており、大阪府警は4日、運転手を自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで逮捕し、発表しました。さらに、7月3日午後6時半ごろ、大阪市東住吉区で追突事故が発生し、追突された車の運転手が軽症を負いました。報道によれば、この事故も低血糖症による可能性が高く、同署は同法違反の疑いを視野に入れて捜査をすすめているとのことです。
 今回は、これらの事故に出てきた自動車運転死傷処罰法とはどのようなものかについて、取り上げたいと思います。

 自動車運転死傷処罰法は、平成26年5月26日から施行されている法律です。飲酒運転等、悪質な運転で死傷事故を起こした場合、これまでは刑法の中の危険運転致死傷罪(刑法旧第208条の2)により処罰されてきました。しかし、危険運転致死傷罪の要件は厳しく、適用が見送られるケースがしばしば起こっていました。そこで、より事故の発生実態に即した法整備が求められ、成立したのがこの法律です。

 自動車運転死傷処罰法においては、薬物の影響で正常な運転が困難な状態で自動車を運転し交通事故を起こした場合、「危険運転致死傷罪」として15年以下の懲役が科されます(2条)。さらに、その「おそれ」がある場合に、運転を開始した結果事故を起こした場合、12年以下の懲役(死亡させたときは15年以下の懲役)が科されます(3条1項)。

 また、法3条2項においては、特定の病気の影響により事故を起こした場合についても12年以下の懲役(死亡させたときは15年以下の懲役)が科されることになっています。特定の病気については、政令で

(1)自動車の安全な運転に必要な能力を欠くおそれがある統合失調症や低血糖症、そううつ病
(2)意識障害や運動障害を再発するおそれがあるてんかん
(3)再発性の失神
(4)重度の眠気につながる睡眠障害

が対象となると定められています(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令3条)。
 もっとも、病気にかかっている人が自動車で人を死傷させた場合に必ずこの罪に問われるというわけではありません。

(1)病気のために正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、その状態であることを自分でもわかっていながら自動車を運転し
(2)その結果、病気のために正常な運転が困難な状態になり、人を死亡させたり、負傷させたりした

という全ての要件がみたされたときに成立することになっています。つまり、病気にかかっている人であっても、自覚症状がなかったり、運転するには危険な状態にあることを自覚していない人は、罪に問われません。

 通常の交通事故については、自動車運転過失致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)となり、7年以下の懲役が科されていることと比較すると、格段に重いものといえます。

 自動車運転死傷処罰法施行後、低血糖症の影響による危険運転致傷を問うのは6月30日に発生した事故が全国で初めてのケースとなっています。法律が自動車事故の防止に効果を持つためには、もっと広く一般の人々にその内容を周知し、理解してもらう必要があります。

元記事

「低血糖症」による自動車事故について

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