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演出家・和田勉の名言「テレビはアップだ」を女性作家が考察

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 ヒットの法則を考える上でも、歴史に学ぶことは少なくない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

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 水谷豊主演の「相棒」、シーズン12が終わりました。「相棒」はまさしくテレビ朝日の「目玉コンテンツ」。たとえ「マンネリ」とか「茶番」という野次が外野から聞こえてきても、シリーズ12の平均視聴率は19.6%と高い数値をマーク。毎シーズン、コンスタントに視聴率を稼ぎ出す、優等生です。

 ドラマが終了したら、続けて映画版へ。ゴールデンウィークに公開される『相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ』の予告が、ドラマの合間にすかさず流されます。

 かつて、「映画は大作、テレビドラマは小品」という価値観がありました。しかし、その「格」差は、どんどん小さくなりつつある。ドラマと映画が横並びになり、垣根がなくなってきている。「相棒」はその代表とも言えるのではないでしょうか。

 そもそも、ドラマと映画は何が違うのだろうか? それぞれの表現手法に、どんな個性があるのか? ドラマにしかできないこととは何? 映画でしか表現できないポイントとは?

 よくわからない。ますますドラマと映画が似通ってきているように思えてならない昨今。実は、その回答に対するヒントが潜んでいそうな、ユニークなドラマが放送されています。

 NHK「30周年記念制作ドラマ」。

 今から31年も前、1983年に制作された「勇者は語らず」(4回シリーズ BSプレミアム日曜午前10:00)が再放送中です。30年前のドラマと今とを比較できる、貴重な機会です。

 原作は、城山三郎。舞台は、日本の自動車産業が世界へと進出し、激しい経済摩擦を生んでいたあの頃。日米対立、雇用問題、下請けの葛藤等、真正面から描いた硬派なビジネスもの。

 登場する役者は、キラ星のごとく三船敏郎に丹波哲郎、鶴田浩二、山崎努、柴田恭兵、寺島(富司)純子、名取裕子、吉行和子……そして演出は、和田勉。

 丹波哲郎が、眉間に深いシワを寄せて唸る。寺島純子のまつげが、ぱさぱさっと揺れる。人間の顔が不自然なほど大写しになる。画面から額が切れてしまうくらい、極端にズーム。

 そんなにアップすれば、当然ながら、目が大きな面積を占める。役者が微妙に目を動かすだけで、感情の揺れや葛藤がくっきりと浮き上がってくる。説明する言葉がなくても、さまざまな物語が目から生まれてくる。伝わってくる。俳優たちは、決して目玉をきょろきょろ無造作に動かしたり、意味なくまばたきしたりしない。小芝居はしない。ぴくりともしない。

 そんな「静」の時間があるからこそ、ほんの少し瞳やまつげを「動かす」ことで、「劇的なる変化」が生まれる。ねらった「ドアップ」シーンの連続。最近のドラマとのあまりの違いに驚かされました。

 では、この方法は果たして映画で成立するでしょうか? もし、巨大スクリーンに顔だけアップになるシーンが連続したら? かなりの違和感を覚えるはず。アバンギャルドを狙った芸術映画ならわかりますが。

 これは、テレビドラマ独自の表現手法でしょう。家の中の小型画面だからこそ成り立つ方法。巨大なスクリーンには不向きな、「目で語らせる」手法です。

 つまり、30年前のドラマは「テレビドラマにしかできないこと」を、演出と演技を駆使して追究していた、ということです。

 演出家・和田勉は、テレビと映画との違いを徹底的に意識していた。もし、テレビが映画にかなわないとされるのならば、「テレビゆえの優位性」を掴み出し、それを見せつけてやろう。そんな意欲を燃やしてドラマ作りに向かっていたのでしょう。

 和田勉は「テレビはアップだ」という言葉も残しています。舞台芝居にも、映画にもできない、テレビドラマだけに可能な表現技法の象徴として、「アップ」を強調したのです。そんな風に、今こそもう一度、「テレビドラマにしかできない」表現手法を追究することはできないでしょうか。

 スイッチを入れるとすぐ見ることができる、家庭の中にある、人の表情を細やかに伝えやすいといった、テレビという存在のアドバンテージを味方につけて。テレビドラマ「ゆえ」の面白さを、もっともっと際立たせて欲しい。そうでなければ、家の中でも見るものがどんどん映画ソフトに置き換わっていってしまうかもしれません。このままではテレビドラマに明日はない?のかも。余計な危惧でしょうか。

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