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メニュー表示厳密化でシャケ弁当が「ニジマス弁当」になる?

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 食品偽装問題に端を発し、料理のメニュー表示問題が揺れている。消費者庁が発表した素案によると「シャケ弁当」は「ニジマス弁当」になる可能性もある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が考える。

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 昨年、飲食店での表示偽装が話題になってから、メニュー表示のあり方が揺れている。きっかけは、消費者庁が発表したメニュー表示に関するガイドラインの素案だ。「サーモントラウト」=ニジマスが使われた場合、シャケ弁当の「シャケ」や寿司ネタを「サーモン」と表示するのは「問題あり」。脂肪を注入したような成形肉も「ビーフ(やわらか加工)」という表示も「問題あり」だとした。

 このガイドラインに対して、1月16日に日本フードサービス協会など飲食に関係する6団体が「メニュー表示に関する緊急情報交換会」を行った。27日には外食業者と消費者団体の意見交換会が行われ、外食業者側からは「メニュー名が定着しており、消費者が混乱する」などの意見が多く出され、消費者側の出席者は「消費者が何を食べているのかわからないのは問題。きちんとした名称を表示してもらいたい」と訴えたという。

 一見、両者の意見は相反しているかのような報道だが、実はそこまで乖離はしていない。対立構造に見えるのは、消費者から少しでも事実に反すると受け取られそうな名称は「問題あり」として、もっとも消費者庁が責任を回避できるガチガチの素案を作ったからだ。

 排除したいのは、虚偽表示だったはずだ。なのに、素案では「いかに、突っ込まれないものを作るか」と「虚偽」や「偽装」を越えた領域にまで網をかけてしまった。

 大辞林で「さけ」をひいてみる。「サケ目サケ科の海魚の総称。一般に,サケ(シロザケ)・ギンザケ・ベニザケ・サクラマス・カラフトマス・マスノスケなどをいう。」とある。ニジマスも含め、サケ目サケ科タイヘイヨウサケ属の魚であり、今回の素案でニジマスが「さけ」「シャケ」から除外される理由がわからない。

 消費者が求める「きちんとした名称」を盛り込むとしても、原材料のシール表示や、メニュー表の片隅に小さく書いておけば十分だろう。

 この話には「虚偽表示」と「食文化」の問題が混在している。実際に食品偽装が起きてしまった以上、対策を講じなければならないのは理解できるとしても、メニュー名ひとつひとつに、正確な原材料名を反映せよというのはあまりにヒステリックだ。

 そもそもメニュー名に材料をすべて盛り込めというのは、無理がある。メニュー表にはスペースに限りがある。原材料をいちいち品名に盛り込んでいたらキリがない。

 「種」として異なる、「バナメイエビ」を「シバエビ」と表示するのはNGだが、「小エビ」「エビ」は当然OKだろうし、脂肪注入肉──成形肉についても「成形肉」だというただし書きの表示義務を課せばいい。

 構造で考えれば「安くていいもの」はそうそうないはずだ。なのに、一部の消費者は「もっと安く」「もっといいものを」とヒステリックな声をあげてきた。今回、間接的にではあっても、偽装を生み、ガイドラインが必要な状況を作ったのは、消費者自身でもあるはずだ。

 日本では、表意文字で文化が形成されてきた。食文化も例外ではない。「鮭」は魚へんに圭(三角形にとがった、形がいいという意味)と書き、「肉」という漢字は肉の断面の筋繊維を模した象形文字から発展したとされる。こうした「食文化」もメニュー名には込められている。

 消費者庁は「できるだけ早く正式なガイドラインを出したい」としたと言う。一度制定されると修正の難しいこの国で必要なのは「食の安全と食文化を守るための適切なガイドライン」を設定することであって、「早く正式なガイドラインを発表」することではない。消費者庁の担当者は「ガイドラインが求められてしまったのが一番残念」と言った。その「残念」という気持ちが反映されたガイドラインを強く求めたい。


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