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「格差」が貧困を見えにくくする?

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●[対談]乙武洋匡×湯浅誠「日本の貧困問題」(1)

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意外と知られていない事実だが、日本の貧困層は拡大傾向にある。こう聞いて自分とは関係がないと考える方も多いかもしれないが、少し視野を広げると、日本の社会全体に及ぼす影響が見えてくるのだ。今回は「年越し派遣村」の村長を務めたことでも知られる社会活動家、湯浅 誠さんを迎えて日本の貧困問題にアプローチしてみよう――

乙武: ホームレス支援をはじめ、貧困問題に取り組んでいる湯浅さんですが、以前「貧困と格差は別物」とおっしゃっていましたよね。一般的には同義だと思われがちですが、具体的な違いは何でしょうか?

湯浅: たとえば、全員が年収50万円だけど格差のない社会と、全員年収600万円以上だけど格差がある社会というのは、理論的にはどちらもあり得ますよね。問題なのは、人の収入に差が開くことではなく、一部の人が生活していけないほど困窮してしまうことなんです。

乙武: なるほど、そう言われると、まったく意味合いが異なりますね。

湯浅: 実際に日本では今、かろうじて飯は食えるけど、結婚して家庭を持つことができないという貧困層が増えています。「格差社会」というキーワードは、こうした貧困問題の本質を見過ごされやすくしてきた面がありました。

乙武: たしかに「格差」という言葉では、一部の富裕層と一般層の間に存在する格差を示しているようにも聞こえる。「貧困」とは意味合いが違ってきます。

湯浅: とくに“子供の貧困”の増加は深刻な問題です。データによると、2006年から2009年までに日本の貧困率は0.3ポイント上がっているのですが、対象を子供に絞ると、実に1.5ポイントも上昇しているんです。人数に換算すると、これは23万人という大きな数字になります。

乙武: 親世代の貧困が子どもに連鎖し、その差は学力面でも顕著になってきている。それを断ち切る仕組みづくりが急務です。

湯浅: 先進国でありながら、この状況はマズいでしょう。社会をちゃんとまわしていくためにも、こうした解決すべき問題が存在することを、より多くの人に知ってもらいたいんですよ。

乙武: そうですね。「障害」も「貧困」も、大多数の人にとって素通りできてしまう問題かもしれない。でも、それらを改善することがこの社会全体のメリットであるということを、データ等を用いながらもっと真剣に伝えていかなければなりません。貧困層がこのまま増えれば、社会全体が持続できなくなってしまうわけですから。

湯浅: そう。本来、「貧しいから可哀想」で済ませていい問題ではないんです。これは我々の将来にも関わる重大な問題だと認識してほしいですね。

乙武: それに、いざという時のセーフティネットが整備されていれば、若者ももっといろんなことに挑戦できるようになると思うんです。それが社会の活性化にもつながっていくはずですよね。

(構成:友清 哲)

【今回の対談相手】
湯浅 誠さん
社会活動家、法政大学教授。1969年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。2008年末に「年越し派遣村」村長を務めたほか、2009年から2012年まで内閣府参与に就任するなど、貧困問題の解決に取り組んでいる。

(R25編集部)

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※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびweb R25から一部抜粋したものです
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