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「この刺身、どこで獲れたの?」 チェーンの居酒屋で質問しまくる「産地おじさん」の話

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私が都内の店舗で働いていたころ、ちょうど食品の賞味期限偽装や料理の使いまわしなどの問題が発覚し、「外食産業の料理は大丈夫か?」という声が多くあがりました。

中には、いくら何でも気を使いすぎでは、と言いたくなるお客様もいました。ある日、開店早々に一人でいらっしゃった40代くらいの男性を席に案内したアルバイトの女の子が、困った様子で私のところに来ました。

「あの、お客様が注文した料理の素材の産地が知りたいって言ってるんですけど…」

驚愕の反応「株主総会で社長に直談判します」
これ、どこ産?

私もこのようなことを言われたのが初めてだったので、何を言っているのか分かりませんでした。「産地って?」と聞き返すと、

「刺身の獲れた場所とか、野菜の収穫した場所、ってことみたいです」

とりあえずお客様の要望ですから、店のメニュー表や社外秘の書類など、店舗にある色々なものを物色しましたが、そんな情報はありません。私はひとまず、この状況をお客様に報告しました。

「恐れ入りますが、産地は分かりかねます」

すると、さすがに諦めるかと思いきや、お客様からは「いやいや、分からないなら食べられないじゃないですか」という返事が。嫌味な感じはないのですが、参ったなぁといった感じの苦笑いを浮かべていました。

私は(産地が分からなくても、食べられないことはないだろう…)と思っていると、お客様はこう追い打ちをかけてきました。

「それなら私、この会社の株主なので、このことを株主総会で社長に直談判します」

これも脅している様子はなく、淡々と言ってきたのです。そんなところで店名と私の名前を言われた日には、どんな恐るべき仕打ちが待っているか。これはたまったものではありません。

震える手で本社の電話番号にダイヤル…

困った私は「分かりました。本社に確認しますので、お時間いただけますか」と言い残し、震える手で本社の電話番号をダイヤルし、商品開発の担当者から産地を聞き出しました。

このときの「産地おじさん」(私たちは、彼にこういうあだ名をつけました)の妙に冷静な様子は、何となく不気味な感じがしました。「もしかして本社から抜き打ちで店の視察にきたのか。それとも他に何かあるのか…」などと勘ぐってしまうほどでした。

私は注文した料理の素材の産地を、一つ一つ「こちらの刺身は神奈川県産のもので…」などと説明しました。産地おじさんは「あれ、そんなところに港があるんですね。えっ、あぁ、なるほど」と、これも終始冷静な様子で聞いていました。

「えっ、あれっ」という独特のツッコミに恐怖を感じつつ、何とか産地を説明し終えると、産地おじさんは「ここまで丁寧に教えてくれるとは思いませんでしたから、感動しましたよ。あなたの対応」と微笑んでくれました。

株主総会で直談判、とまで言われた私の必死な様子が見て取れたのでしょうか。ひとまず一件落着しました。そして後日談。産地おじさんは、このお店の常連になり、いまも注文する料理の素材の産地を尋ねているそうです。(ライター:ナイン)

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【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。ライターへの連絡はTwitterFacebookブログ

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