増える中国人の「過労死」 原因は日本人と同じか、全然違うのか?

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増える中国人の「過労死」 原因は日本人と同じか、全然違うのか?

「過労死」は、世界に知られる日本の怪奇現象である。生きるための一手段である労働が過ぎて、すべてを犠牲にして働き、ついには命を落としてしまう。亡くなった方には大変気の毒だが、本末転倒と思う人も多いに違いない。

いまでは「Karoshi」として海外にも驚きをもって受け取られているが、最近は日本だけのお家芸ではなくなっているようだ。米ブルームバーグは、お隣の中国で過労死が年間60万人にのぼっていると報じている。

日本や韓国にも共通する「儒教」が原因?

日本では、2012年度に労災認定された過労死者数は813人。一方、中国では毎日1600人が過労死している計算となる。基準が異なるので単純に比較できないが、かなりの多さといえるだろう。

中国人のオフィスワーカーの有給休暇消化率は3割程度で、「自分は健康だ」と考えている人も12%しかいないという報道もある。

まるで日本と同じような仕事中毒ぶりだが、ブルームバーグはその背景に東洋的な価値観があると分析、テンプル大学の日本校でアジア研究を統括するジェフ・キングストン氏のコメントを掲載している。

「経済がいまなお発展途上にある中国では、依然として必死に働くことを良しとする考え方が受け入れられている。滅私奉公的な考え方は儒教思想に根差した精神文化で、日本や韓国にも共通する」(SankeiBizによる邦訳)

儒教とは、紀元前の中国の孔子を始祖とする教えだ。「仁」(他人を思いやること)や「義」(利欲にとらわれないこと)など5つの徳性を身につけ、「父子」や「君臣」など5つの関係を維持すべきとし、日本人の価値観にも根強く影響を与えているとされる。

しかし個人主義的で、良くも悪くも図々しいといわれる中国人が、本当に滅私奉公に励んでいるのか。キャリコネ編集部が中国の労働事情に詳しい中国人研究者(匿名希望A氏)に取材すると、やはりブルームバーグの分析を否定する答えが返ってきた。

「中国人は日本人と違い、会社への忠誠心はそれほどないと思う」

「欲が嵩じて働きすぎる」中国人

A氏によると、中国人の過労死の原因は、どちらかというと「健康を顧みない富の追求を是とする社会的風潮」に影響されているという。

「中国はどんどん競争社会になってきて、国有企業で働くよりも報酬が良い会社も増えています。個人にとって良い仕事、良い給料の会社に就職したら、その会社を辞めたくないので、無理な残業でもこなそうとしてしまう」

その結果、前触れや自覚症状のないまま、働きすぎで突然死してしまう例が多いという。疲労や限界を感じても、目の前の納期や仕事量に追い詰められて、過度に働いてしまう。

日本の過労死と異なるのは、「経済的な欲が嵩じて働きすぎる」ことだ。

ただし背景には、経済成長優先で労働時間管理が適切に行われていないこともある。中国の労働法では、1週間の平均労働時間は44時間、残業は1か月で36時間が上限と定められているのだが、これがきちんと守られていない。

2000年には中国で初めての過労死訴訟があった。食品会社に勤める50代の男性が、高温の職場での勤務が原因で死亡したが、賠償額は約20万元(現在のレートで約330万円)どまり。その後の例でも、企業にはわずかな額の罰金が科せられるだけのことが多い。

「金銭や地位」にこだわるのは中国人だけか

企業文化研究所理事長の勝又壽良氏も、中国人の個人主義的な過労死の特徴についてブログで取り上げている。

「中国の個人アイデンティティは、『金銭や地位』にある。それを手に入れるためには、『健康と引き換えてもやむを得ない』という認識である。この現状を見れば、中国から『過労死』は消えるはずがない」

勝又氏は、中国人は、財産を築き社会的地位を上げることが最終目的であり、他人と差別化して自慢したいという潜在的な意識が働いているが、このあたりは「日本とは事情が大いに異なっている」と指摘する。

とはいえ、日本の過労死の裏側にも「住宅ローンを返さなければ」「家族を養わなければ」という経済的な事情もある。会社をクビになれば社会的な体面が保てなくなる、という見栄のようなものもあり、ここは中国人とも少し似ているのではないだろうか。

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