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吉本興業会長「おもろない」半生?

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「吉本でいちばんおもろない男ーー。僕、いつもそういうて自己紹介するんです」

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…という書き出しで始まるのが、吉本興業の会長を務める吉野伊佐男さんの半生記『情と笑いの仕事論』だ。冒頭のひと言がなんとなく示しているとおり、吉本だからといって「大爆笑」や「芸人たちとのすったもんだ」など抱腹絶倒の内容を期待してはいけない。

「僕はちょっと離れた立場で、斜めから会社を見てきた」という吉野会長は、笑いという“本筋”のコンテンツ作りから一歩離れてキャリアを重ねてきた人なのだ。1965年に吉本興業に入社し、総務部・経理部で勤務。その後制作部に異動し、多くのCMを手がけたのち、広報室長、セールスプロモーション部のチーフプロデューサーを歴任し、2001年取締役に。やがて創業者一族から経営を引き継いで現在に至る吉野会長は、言ってみれば実務の人。ゆえに本書は、ビジネス書のような様相を呈している。

たとえば入社当時のエピソード。「笑いをビジネスに変えたい」という情熱があったものの、不本意な配属(総務部)のなか「毎日が嫌で仕方なかった」という。だが「長い人生のなか、いっぺんやってみる価値はある」と捉え、実績を重ねて信頼を勝ち取っていく。与えられた仕事への考え方と取り組み方は普通の会社員にも共感できるハズ。また、アクが強い上司や芸人相手に「情の交わし合い」というコミュニケーションの極意を駆使して人間関係を構築していく手法は、かなり参考になりそうだ。

ほかにも、「仕事の悩みの解決方法」や「人との間合いの取り方」「トラブル処理の仕方」など、どんなビジネスパーソンにも関わる問題への取り組み方がつづられていく。一方で、明石家さんまやダウンタウンといったスターの誕生秘話など、吉本興業のビジネスの隆盛も知ることができる本書は、お笑いビジネス界のクロニクルともいえる。

「特殊な業界の特殊な話」と思い込んで、食わず嫌いになるのはもったいない。むしろ、特殊な業界だからこそ、普通のビジネスマンと相通じる部分の普遍性に気づかされる。それこそが本書のビジネス書としての価値といえるだろう。
(R25編集部)

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