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学研の歴史漫画 史実の正確性を追求も偉人のイケメン化はOK

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 近年は歴史マンガが大流行だが、いくらマンガとはいえ時代考証は要求される。特に学習マンガの場合、マンガ的な要素はどこまで許されるのだろうか? 『時代考証学ことはじめ』などの著書がある編集プロダクション三猿舎代表・安田清人氏が解説する。

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 マンガの世界では、日本の歴史に取材した作品が花盛りだ。戦国や幕末が舞台の作品が人気となるのは当然だが、なかには中村真理子氏の『天智と天武-新説・日本書紀-』(小学館)のように、古代史の「謎」に新解釈で挑む意欲作も注目を集めている。

 小説の挿絵に時代考証が必須ならば、当然、歴史を扱うマンガも時代考証抜きには語れまい。しかし、エンタメに徹した(振り切った?)作品の場合は、たとえば織田信長をはじめとする戦国武将が、誰もかれも生身の人間とも思えぬ超人、もしくはアメコミの主人公張りにスタイリッシュなヒーローと化している場合も見受けられる。

 旧日本海軍の艦艇を美少女のキャラクターに擬人化した『艦隊これくしょん-艦これ-』と同じく、先行する小説やテレビドラマなどの信長、家康や本多平八郎のイメージを借りて、イケメンたちが繰り広げるスペクタクル・ファンタジーを作り上げているのだろう。

 パラレル・ワールドとしかいいようがない世界だが、イケメン武将が口にするセリフに、「推参!」「しからばご免」「お命頂戴!」などと、いかにも時代劇然とした古臭い言い回しが混じったりするところをみると、やはりこれも歴史・時代劇の一種なのだなと、納得せざるを得ない。そのセリフが歴史的に正しいかどうかは、とりあえずおいておくとして。

 一方で、宮下英樹氏の『センゴク』シリーズ(講談社)のように、作者自ら中世の城跡を踏査するなど史実のリサーチに力を入れ、歴史的な正確さや時代考証の確かさを売りにしたり、最新の学説を反映した斬新なストーリー展開を試みている作品などもある。

 これはもう、どちらが正しいかではなく、好みの問題としかいえない。もう一つ、学習マンガというカテゴリーもあって、こちらは少々事情が異なるだろう。「学習教材」の側面もあるわけだから、いくら話を面白くしたくても、大枠の史実を曲げてはならないし、「ありえない設定・場面」を描くわけにもいくまい。

 イケメンの真田幸村が3メートルはありそうな刀で何十人もの敵をバッタバッタと斬り倒したり(一軍の将なのに…)、どう見ても「魔神」にしか見えない織田信長が、新たに開発した新型100連発銃(オモチャじゃあるまいし…)で敵を皆殺しにするなどという場面は、いくらなんでもNGだ。

『学研まんが NEW日本の歴史』を担当した学研教育出版の編集者、小泉隆義氏は、学習マンガは「正確性、学問的裏付けが厳しく求められるのは当然」としている。しかしながら、たとえばキャラクター造形について見てみると、やはりリアリティの追求よりも、今風のイケメン・美女にすることが「商業的に重要」だから、顔写真が残っている幕末以後の人物は、ある程度の配慮はする(似せる?)が、マンガ的なデフォルメはOKだと判断したという。

 出来上がったキャラクターは、いかにもゲームやアニメで育った今の子供たちが慣れ親しんだイケメンぶりだ。従来の学習マンガの絵柄と比較して読者アンケートをとったところ、支持は五分五分だったという。

 このシリーズは、すでにご紹介した時代考証学会の全面協力を受けているとのことなので、内容の信頼性については疑う余地はない。その担保があってこそ、今の読者に受け入れられるデフォルメを施しているわけだ。学習マンガも、いろいろ大変だ。

※週刊ポスト2014年7月4日号

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