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天下りの根絶が難しい理由 国会答弁を役人が書いているから

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 安倍晋三首相は第一次内閣(2006~2007年)では、天下り規制に力を注ぎ、4大政府系金融機関の総裁や社長には次々に民間人が起用された。しかし、2012年12月に首相に返り咲くと4機関のうち3つで天下りを復活させた。元キャリア官僚で規制改革担当大臣補佐官を務めた原英史氏(政策工房社長)は7月1日に発売される『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館)の中で天下りと戦うことの難しさを解説している。

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「岩盤規制」を巡る問題の多くには役所からの天下りが絡んでくる。規制の権限をバックに民間企業や所管の団体にOBを再就職させ、見返りに業界の既得権が守られる。そうした構図を壊すためにできたのが国家公務員への「天下り規制」のはずだったが、実効性ある規制にするのは難しい。

 よく陥る罠として「天下りの押し付け(役所が再就職先にOBを無理やり押し付けること)だけを規制すればよい」という議論がある。

 これをやると、規制が意味をなさなくなる。国も自治体も、役所の公式見解としては「天下りの押し付けなどやっていない。あくまで受け入れ先から『こんな優秀な方にぜひ来ていただきたい』という要請があった」という建前だからだ。

 かつて第一次安倍内閣で天下り規制を導入した際にも、それが問題となった。当初、安倍首相は「押し付け的天下りを禁止」という方針を示していた。そうした文言になったのは、規制導入に抵抗する官僚機構の策謀によるものだったのだろう。

 当時の政府の公式見解によれば「押し付け的天下り」は存在しない。つまり、「禁止」といっても「これまでも存在しなかったことを禁止する」というだけだ。

 この時は筆者も規制改革担当大臣補佐官として関与していたが、政府内での激しい議論を経て最終的に、「押し付け的天下り」だけでなく、役所があっせんして行なう再就職全般を規制することになった。名ばかり規制にしてしまおうとの策謀を何とか突破したのだ。

 ところが、である。2014年1月の衆議院本会議での安倍首相答弁を見て、筆者は愕然とした。
 
 野党議員から天下り問題への対応を問われ、「国家公務員の再就職については、……再就職の押し付け等の不適切な行為を厳格に規制し、天下りを根絶してまいります」と答弁しているではないか。

 こうした国会答弁のペーパーは首相ではなく役人が書いている。答弁の中に自分たちに都合のいい文言をこっそり入れ込み、既成事実化するのは霞が関官僚の常套手段だ。その罠に安倍首相もかかり、再び名ばかり規制路線に戻ってしまうのだろうか。

※原英史・著『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館)より

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