頑張った社員に「嫌な取引先を切る権利」 下請けいじめに対抗する中里スプリング製作所の「戦略」

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頑張った社員に「嫌な取引先を切る権利」 下請けいじめに対抗する中里スプリング製作所の「戦略」

取引先から無理難題を吹きかけられ、ストレスが溜まることも多い「下請け」の仕事。一般消費者の目に触れることは滅多にないが、そこで働いている人は実は多い。

「ほとんどの下請企業は、いつ自分が親会社に切られるか戦々恐々としている。切られる前に切ればいい。そうすれば、環境を自分で変えられる」

そう語るのは、群馬県のばねメーカー・中里スプリング製作所の二代目社長、中里良一氏(62)だ。2014年6月23日のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」は、「嫌な取引先は切る」という驚きの方針で成長した会社を取りあげた。

傲慢な発注元は「切られる前に切る」

中里スプリング製作所は、1950年の設立。従業員は21人で、発電所で使う大型ものから住宅の耐震用、ボールペン用まで約7000種類のばねを製作している。

中里社長は、メーカーなど発注元からの無理な注文にいつも悩まされてきた。

「無理を当たり前で聞くのが下請け」
「お前の会社はうちの仕事で食べている」

そんな傲慢な言葉を平気で口にするクライアントが大部分。メーカーの勧めで大型の設備投資をした直後に、製品単価を切り下げられて唖然とすることもあった。

こういった屈辱的な経験から、「お客さんを全部入れ替えればいい」という発想になったという。下請けとして見下してくる会社は、たとえ大口の顧客であっても「嫌な会社との取引は切る」という常識破れの方針に踏み切ったのだ。

そこで、仕事を頑張ってくれた社員へのご褒美として、「嫌な取引先を切る権利」を与えることにした。この制度の導入は社員のやる気を引き出し、ある社員は「仕事のやりがいは、前より強くなった」と語る。

頭を下げる「穴埋め」営業は社長の仕事

一方で中里社長は「1社切ったら新たに10社を新規開拓する」という厳しいノルマを自らに課した。頭を下げるつらい営業は、社長ひとりがやるべきだという。

「営業というモノを売る仕事は、経営者がやるべき。社員には、職人としてレベルを上げてもらうのが一番の望みです」

これまで49社の「嫌な取引先」を切ってきたが、結果として30年前の100倍、全国47都道府県1677社にまで取引先が拡大した。それでも中里社長は満足していない。

「日本全国に380万社の中小企業があり、うちの取引先はそのうちのごくわずか。宝の山はまだまだあるんです」

その宝の山を自分の足で開拓しているのだから、この人についていこうという空気が社内に生まれるのも自然なことだ。いまでは中里社長の取組みを聞こうと、講演会の依頼が毎週寄せられており、それが取引先獲得の機会にもなっているようだ。

元請け会社の意識を変え、社員の誇りを守る

誰もがやりたいけれど、できずにいた戦略で成功している中里社長の語り口は、とても落ち着いて淡々としていた。生半可な覚悟ではできないことだが、全国の中小企業に勇気を与え、元請け会社の意識を変えることが期待される取り組みだ。

そもそも自社製品を安売りしないためには、高い品質が厳しく求められる。品質を高めるためには、見下された状態で仕事をしていてはいけないのだ。社員の誇りを守ることが、結果的に会社を発展させるのだと気付かされた。(ライター:okei)

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