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原発運転差し止め判決を新聞3紙が称賛する理由不明と大前氏

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 全国各地で原子力発電所をめぐる裁判が続いているが、福井県などの住民が関西電力に大飯原発3・4号機を安全性が保障されないまま再稼働させたとして運転差し止めを求めた訴訟で、5月21日に福井地裁は関西電力に運転差し止めを命じる判決を下した。大前研一氏は、この判決の論理は意味不明で、称賛するメディアの姿勢も理解できないという。以下、大前氏の見解だ。

 * * *
 先月、福井地裁(口英明裁判長)は、関西電力・大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを命じる判決を下した。だが、私にはこの判決の論理が全く理解できない。

 同地裁は、判決理由を次のように説明している。

「原発の稼働は法的には電気を生み出す一手段である経済活動の自由に属し、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきだ。自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広範に奪われる事態を招く可能性があるのは原発事故以外に想定しにくい。具体的危険性が万が一でもあれば、差し止めが認められるのは当然だ」

 つまり、事故が起きる可能性がゼロでない限り、原発を運転してはならないという結論を出しているのだ。

 しかし、この論理が通用するならば、世の中のすべての経済活動は一般住民が止められる。なぜなら、たとえば人が住んでいる地域の上空を飛んでいる航空機が、航空路の下の住宅などの上に墜落する可能性はゼロではない。したがって航空機は人が住んでいる地域の上空を飛んではならない──。そう言っているのと同じだからである。

 原発事故は、航空機や新幹線事故とは被害の規模が違うというならば、犠牲者数や被災地域の広さによって差し止めるか否かを判断していることになる。その線引きをするのが裁判官の役割だというのだろうか。

 そもそも司法府は立法府が作った法律に照らし、その行為が合法か違法かを判定する機関である。ところが、今回の福井地裁の判決は憲法の人格権を持ち出してはいるものの、具体的な法律に照らしていない。日本の法律のどの部分に基づいて運転差し止めを命じたのかが明確ではなく、私は司法の越権行為だと思う。

 たとえば、判決は「1260ガルを超える地震では冷却システムが崩壊し、メルトダウンに結びつくことは被告(関電)も認めている。(中略)大飯原発に1260ガルを超える地震が来ないとの科学的な根拠に基づく想定は本来的に不可能だ」と述べている。「1260ガルを超える地震が起きても100%安全な原発でなければ運転してはならない」と定めた法律があるならわかるが、そんな法律はどこにもないのである。

 これほど不合理な判決に対して、なぜ行政府や立法府が黙っているのか、私は不思議でならない。

 また、大手新聞各社の社説は賛否が真っ二つに割れたが、判決を批判した読売、日経、産経に対し、朝日、毎日、東京の3紙がそれぞれ「判決『無視』は許されぬ」「なし崩し再稼働に警告」「国民の命を守る判決だ」と判決を称賛した理由もさっぱりわからない。

※週刊ポスト2014年7月4日号

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