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内定・内々定の辞退阻止、法的な問題点

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新卒採用は売り手市場に。企業は優秀な学生を確保しようと必死

景気の回復に伴い、最近の新卒採用では売り手市場の傾向が見られるようです。こうした背景もあって、企業は優秀な学生を確保するべく、あの手この手で、内定や内々定の辞退を防ごうと必死です。

バブル期など一昔前は、企業が内定を出した学生を旅行に連れていくことで、他社への就活を難しくさせる手法がよくみられました。時代も変わり、海外旅行にまで連れていくほど余裕のある企業は減りましたが、今でも研修などの名目で内定者を拘束しようとする動きはあるようです。

企業が優秀な学生の確保を目指すのは当然ですが、内定、内々定の辞退阻止に必死になるあまり、法的に「越えてはいけない一線」を越えないよう注意が必要です。

「内定」は歴とした労働契約。辞退は債務不履行にあたる可能性も

そもそも、内定、内々定とは、法的にはどのようなものなのでしょうか。一般に「内定」といわれるものの多くは、「実際に働き始めるのは先のこと」といった条件付きながら、法的には、歴とした労働契約です。難しい言葉では、始期付解約権留保付労働契約と言います。

労働契約である以上、民法に従い、内定辞退は、2週間の予告期間があれば自由に行えます。他方、仮にも労働契約である以上、内定辞退は雇用契約の債務不履行として、企業から損害賠償を請求される可能性が全くゼロとは言えないことは、学生側も認識しておかなければなりません(ただし、実際には就職前の段階ですから、内定を辞退されたことにより企業に大きな損害がでることは通常考えにくいです)。

このため、内定の場合には、企業が内定者に対し、例えば「辞退すれば損害賠償請求する」と伝えること自体は法的におかしな発言ではないわけですが、発言前後の言動や、密室で複数の男性社員で取り囲んでの発言など、一般に畏怖させるような言動の場合には、脅迫罪、強要罪に当たるケースも考えられますので、企業側は十分な注意が必要です。

「内々定」は単なる企業の囲い込み戦略に過ぎない

では、「内々定」の場合はどうでしょうか。内々定とは、簡単にいえば、企業側の自主ルールにより正式な内定日とされることが多い「10月1日」より前に企業から出される「内定を出しますよ」という約束のことです。企業が欲しい人材を囲い込むための行為です。

内々定の場合は、お互いの合意による(労働)契約ではなく単なる企業の囲い込み戦略に過ぎない以上、内々定がなされても学生側には義務は生じません。そのため、内々定を辞退することが自由なのはもちろん、学生が内々定辞退により損害賠償義務を負うことも基本的にありません。

このため、企業側は、内定阻止の場合以上に、内々定阻止をする際の言動には注意しなければなりません。本来自由なはずの内々定辞退に関し、内々定阻止のために企業側が行き過ぎた言動をした場合には、不当・違法な行為として損害賠償義務を負うリスクはより高まるということです。企業側は、そのあたりを十分に認識した上で、内々定の辞退を防ぐ戦略を考える必要があります。

企業が自社の魅力や、必要な人材であることを学生に伝える本来的な努力を怠り、安易な内々定辞退阻止の方策に走ることで、お互いにとって不幸な結果になることだけは避けたいところです。

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