「ロジカル・シンキング」が現場で使えない理由

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「ロジカル・シンキング」が現場で使えない理由
■思考法で世界を変えられるか?
 問題解決においてロジカル・シンキングはとても強力なツールだ。合理的に取り組める範囲でほとんどあらゆる問題に適用できる。また、答えを導くこと、納得感を持って伝えること、そのための作業を効率的に行うことなどまでが含まれた実践的な方法論でもある。
 私自身も含め、多くの人がその有効性を実感し、証言し、様々な形で「普及活動」を行っている。特に現代の諸条件下においては、ロジカル・シンキングへの関心が高まっているのは当然であり、また素晴らしいことと言えよう。
 この方法論が広まれば、世の中の意思決定はより合理的になり、大げさなようだが世界の大問題の解決にも繋がっていくと期待される。

■使えなければ意味がない
 強力なツールであるロジカル・シンキングだが、1つの死角がある。簡単には「身につかない」ということだ。ロジカル・シンキングの骨組みは比較的薄い本にまとめることが出来るし、演習を多くして分かり易くした研修も1〜2日で可能である。
 しかし、実際に使えるようになるには、その何十倍もの密度の濃い実践が必要だ。マッキンゼーでも「一通りの基礎的な部分」を習得するまでに短くても1年以上かかるのが普通である。ちなみに、私はもっとかかったので焦ることとなった。
 その話は省くことにするが、私と違ってロジカル・シンキングの本を読んだ人のほとんどは実践の機会や指導者を得られず、「分かる」から「できる」への壁を越えられない、ということが起こる。
 「分かる」でも価値はあるが、「できる」を期待した読者は悩んだり失望したりするかもしれない。「できるつもり」は危ないし「できるかもしれない」ということでは自信をもって実践するのは困難だ。
 拙著『思考を広げる まとめる 深める技術』(中経出版/刊)は、この問題を緩和することを目的に書いた。壁を突破する確率を上げ、問題解決の方法論を身につける人が増えて欲しいと思うのである。
 さらに言えば、もう少し広い目的がある。役に立つかどうかということだけではなく、考えることの楽しさを伝えたいということである。このあたりはぜひ本書中で読んで欲しい。

■思考の基礎筋力を鍛えよう
 では、どうすれば壁を突破できるのか。考える力の底上げをしておくのだ。体力との類推で考えてみると分かり易い。例えば、ある中学一年生が初めてサッカー部に入り、ドリブルの仕方を教わったとしよう。小学生の時、鬼ごっこやドッジボールなど十分に体を動かしてきた子であれば、ボールを蹴るのが初めてであっても、なれない足でのボールの扱いに苦労したとしても、練習を重ねる中で体の使い方を工夫していき、徐々にドリブルを身につけていくことができるだろう。
 これが、本ばかり読んでいて体育も苦手というような子だと、体の動きがばらばらで、うまくなるための練習を行う体力もないだろう。本人と指導者に根気があればいいが、たいていは「向いていない」としてあきらめることになってしまう。
 同じことが思考力についても起こっているのである。思考力の骨組みを習っても、様々な考え方の筋肉が働かないと使うことができないのである。裏返せば、そのような様々な考え方を無理なく鍛えるのが本書の狙いである。案外、抜けていた分野ではないかと思う。

■「脳力アップ」と「ロジカル・シンキング」の間をつなぐ
 ところで、考え方や思考力のアップについては多くの分野の本が出ている。本書と同じように基礎的な力を鍛えるものとしては「脳力アップ」といわれるものがある。典型的なのは100マス計算である。これは一理ある。一つの方法で鍛えることで他の分野も練習しなくても伸びるということはあるだろう。多少強引でも体力との類推を進めると、ランニングでの心肺などの基礎体力の向上にあたるといえようか。対して本書は基礎と言いながらももう少し応用に近い。様々な場面での様々な体の使い方を提示しているのである。次回は何を鍛えるか、具体的な内容を書いていくことにしよう。
(著者・太田薫正)



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