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通信傍受捜査の対象が拡大へ

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 捜査と裁判手続きの改革を議論する法制審議会の刑事司法制度特別部会が12日開かれ、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(以下「通信傍受法」といいます。)において、電話やメールを傍受する盗聴捜査ができる犯罪の範囲の拡大などについて議論されました。この度振り込め詐欺と組織的窃盗犯罪が対象として追加されることが確実とみられています。今回はこの改正通信傍受法について確認しておきたいと思います。

 通信傍受による捜査が許容される犯罪(対象犯罪)は、通信傍受が必要不可欠な組織犯罪に限定されています。具体的には、薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航、組織的殺人の捜査についてのみ、通信傍受が許されています(通信傍受法3条1項)。通信傍受を行うためには傍受令状の発付が必要ですが(同法5条1項)、発付が認められるためには、通信傍受以外の方法によったのでは捜査が非常に困難であることといった、厳しい要件が課せられています(同法3条)。傍受してよい通信は、令状に記載された通信のみとなっています。もっとも、これには例外があり、傍受を実施している間に令状に記載のない他の犯罪に関する通信が行われた場合には、傍受することが可能な場合があります(同法14条)。傍受は立会人の常時立会いの下で実施される上、傍受した通信の記録を立会人が封印して、裁判官に提出するなど、その手続は極めて厳格に定められています。実施した通信傍受については、同法29条に基づいて国会に報告され、報告書は警察庁のホームページにも掲載され、広く国民が閲覧できるようになっています。
(警察庁のサイト:通信傍受法第29条に基づく平成25年における通信傍受に関する国会への報告について)

 このように厳格な要件、手続きの下通信傍受がなされる背景には、通信傍受が通信の自由やプライバシー権を保障している憲法21条2項13条に反するのではないかという議論があることが挙げられます。この点については、判例は、電話傍受により侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められるときには、法律の定める手続に従ってこれを行うことも憲法上許されると解するのが相当である、としています(最判平成11年12月16日)。

 では、今回その通信傍受の対象が広げられることには問題はないのでしょうか?
 家族を装って現金を騙し取るオレオレ詐欺のような振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺が年々増加傾向にあり、平成25年中の特殊詐欺による被害総額は約489億円となっています。犯罪の全貌を解明する必要が高まっているものの、振り込め詐欺は、犯行拠点やメンバー構成等の大半が不明であり、アジトも移動型のことが多く、捜査は困難を極めている状況だと言われています。警察庁長官によれば、通信傍受が可能となると、メンバー間の上下関係、リーダー格の者による指示内容が判明し、グループ全体の早期摘発につながるとのことで、拡大の必要性は認められるようにも思われます。特別部会においても、出席した委員からは「どうしても必要というならば、振り込め詐欺と組織的に行われる窃盗の2類型に限っては理解できる」等の条件付ではあるものの肯定的な意見が提出されているようです。

 とはいえ、憲法上の権利と緊張関係にある法律の改正ですから、必要性ばかりを強調して肯定するのではなく、改正のために慎重な議論を重ね、議論の内容を広く公開した上で、国民の理解を得ていく必要があるといえます。

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通信傍受捜査の対象が拡大へ

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