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波紋を呼ぶ金融庁ファンド規制は問題か?

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消費者トラブルの増加により、金融庁が規制強化へ

金融庁が5月14日に公表した「適格機関投資家等特例業務の見直しに係る政令・内閣府令案等」が一部関係者の間で波紋を呼んでいます。これは、いわゆる「プロ向けファンド」の販売規制強化と言えるものです。

そもそも「プロ向けファンド」とは、主に金融機関などのプロの投資家(適格機関投資家という)による投資を想定するファンドのことをいいます。主にプロ向けの商品のため、ファンド業者への規制が大幅に緩和されているのが特徴です。緩和の主な内容は、業者は登録制でなく届出制であること、投資家への事前書面交付義務や断定的判断の提供の禁止などの適用がないことです。

「プロ向けファンド」という名前からは、プロの投資家のみを対象にすると思われがちですが、実は適格機関投資家が1人以上投資していれば、49人までは一般投資家(アマ投資家)にも販売できることになっています。一部の悪徳業者には、この規制の緩さをついて、高齢者を中心とする投資経験の乏しい者に対して不適切な勧誘を行うケースが見られます。多くの消費者トラブルが発生し増加を続けている、と国民生活センターは注意を呼びかけています。こうした状況が、証券取引等監視委員会による建議を経て、金融庁による規制強化の動きにつながっているのです。

金融庁の見直し案に、ベンチャーキャピタルの有志が反発

金融庁の見直し案における規制強化の内容のうち、大きく波紋を呼んでいるのは、個人の投資家について、投資性の金融資産を1億円以上保有していること、という新たな制限を設けることです。

これに対し、小規模独立系のベンチャーキャピタル(以下、VC)の有志が、対案付きでこの規制に反対するパブリックコメント(以下、パブコメ)を提出しています。そこでは、まだまだ米国と比べ、VC投資の市場規模が圧倒的に小さく、特にエンジェル(創業間もない企業に資金を提供する主に個人の投資家をいう)による投資は、米国(2兆円超)の200分の1以下と見られる中で、ただでさえ少ない日本のエンジェルの活動が規制されると日本の成長戦略の大きな足かせになるとの主張がなされています。そうした中での独立系VCの必要性を主張しているようです。

そして、対案として1億円基準は外した上で、投資判断能力を有する者として、過去にファンド運営の経験を持つ個人、上場企業の役員と大株主、公認会計士や弁護士などの士業資格者らを追加すべきだと訴えています。パブコメは、既に6月12日に締め切られています。施行予定期日は8月1日ですので、金融庁がどう対応するか、パブコメ提出者等の関係者は固唾を飲んで見守ることになるでしょう。ただし、金融庁は、本件に関する事前評価書において、既に独立系VCが主張するデメリットは把握済みで、その上で影響は限定的と判断しています。

日本のエンジェルの投資規模の小ささが本質的に問題

私自身は、なぜ1億円の基準が求められるのかもそうですが、逆に、対案で追加されている投資家の類型が合理的なのかも判断しにくいと感じています。なぜなら、パブコメの記載を読んでも、独立系VCの必要性、資産制限の問題性、対案などに関する論拠が定量的かつ明確には示されていないからです。

ちなみに、パブコメ記載の数字を取れば、日本のエンジェルの投資規模は100億円超に過ぎないということであり、今回の規制云々よりも、そもそもなぜこれだけ少ないかの方が本質的に問題なのではないかと私は考えます。

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