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戦極MCバトルとDOTAMAが突撃インタビュー! ラノベ『韻が織り成す召喚魔法』の魅力

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『韻が織り成す召喚魔法』/左:音川真一 右:マミラダ/イラスト:x6sukeさん
2014年2月。日本中に激震が走った1冊のライトノベル『韻が織り成す召喚魔法 -バスタ・リリッカーズ-』が発売された。

これは、即興のラップフリースタイル、いわゆるMCバトルを題材とした作品で、KADOKAWAが展開するライトノベルレーベル・電撃文庫の小説公募新人賞「第20回電撃小説大賞」の金賞にも輝いた作品。

アニメ化やマンガ化など、オタクカルチャーと親和性が高いライトノベルに、いまだに不良が聞いていそうな印象の強いHIPHOP、しかもその中でも、基本的に暴力以外何でもありとされるMCバトルを組み合わせた異色過ぎる本作は、ラノベの読者層はもちろんのこと、出版関係者や音楽関係者にまで大きな注目を集めた。

今回は、6月10日(火)に待望の第2巻発売がされる、そんな変わり種の作品『韻が織り成す召喚魔法』を執筆した真代屋秀晃さんと、音楽レーベル・術ノ穴に所属し、「ULTIMATE MC BATTLE」はじめ、数々のMCバトルの大会で実績を残すラッパー・DOTAMAさん、そして、類を見ないアプローチで話題のMCバトルイベント「戦極MCBATTLE」代表のMC正社員 a.k.a 吉田圭文さんを招き、3人の座談会を実施!

左からMC正社員さん、真代屋秀晃さん、DOTAMAさん

MCバトルの最前線に立つ2人が本作を読んで感じた魅力や、真代屋さんはなぜMCバトルを題材としたライトノベルを執筆したのか!? という根本的な疑問などを語ってもらった。

真代屋さんがどういう思いで本作を描いたのか、3人が語るMCバトルが持つ魅力など、一見かけ離れているようにも思えるライトノベルとMCバトルが融合することで生み出される爆発的な面白さを感じ取っていただければ幸いだ。

第1巻『韻が織り成す召喚魔法 -バスタ・リリッカーズ-』

校則の守護神と呼ばれるカタブツ生徒会長・音川真一の前に現れた、クソ迷惑でウザい悪魔少女・マミラダ。彼女に無理矢理キスをされ、契約を結ばされてしまった真一は、とある能力を手に入れた。それは――。「サタニックマイク! 相手を強制的にラップバトルに引きずり込んで、バトルの敗者を支配できる魔法だよ。よーよー!」韻を踏んだフレーズで即興歌詞を紡ぐ真一の言葉が、強力な召喚魔法となって吹き荒れる。規律を守らず、真一に逆らっていた学院の問題児たちまでもが、ラップ魔法に打ちのめされて命令に従うのだった!!「人前であんなに恥ずかしい歌を歌うなんて、人生の汚点だ…」「超かっこよかったよ! よーよー! さすが私の旦那様候補? 魔王の素質アリだね」そしてはじまるマイクバトル、命を賭けたマジバトル、時にあの娘のハートにラブバトル。風紀を守る生徒会長はゲット快調!

『韻が織り成す召喚魔法 -バスタ・リリッカーズ-』ストーリー
 

第20回電撃小説大賞受賞作特設サイト

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MCバトルとライトノベルが生み出す爆発力

──タイトルの長いライトノベルなど、最近は少し変わった作品が増えていますが、その中でもMCバトルを題材にした『韻が織り成す召喚魔法』は、ファンのみならず、HIPHOP関係者の中でも波紋を呼んだと思います。まず最初に、そもそもなぜMCバトルを題材にしようと思ったんですか?

真代屋 元々、高校生の頃からHIPHOPの楽曲はよく聞いていたんですが、MCバトルはあんまり見たことがありませんでした。それが数年前、あるステージで見た韻踏合組合さんのフリースタイルがきっかけでMCバトルの存在を知って、それでもたまに見る程度でした。

でもMCバトル自体はずっと頭の中にあって、ある日次回作の構想を練っている時に、自分の家の近くでカップルが口喧嘩をしてたんです。

その様子をしばらく眺めていたら、お互いにもの凄く罵っていて、彼氏の方が喧嘩中に例えを出してたんですよ。詳しくは覚えてないんですが、「俺が飛行機だったら、お前の背中を滑走路にして離陸してやる!」みたいな(笑)。

MC正社員 すごくMCバトル的ですね(笑)。

真代屋 その時にこれで飛行機が実際に具現化されたら面白いなって思ったのが理由の1つですね。

それからは勉強するつもりで、「ULTIMATE MC BATTLE」さんや「戦極MCBATTLE」さんのDVDを見るようになりました。

そこで、それまではMCバトルに対して少し怖いイメージを持っていたんですけど、バトルを終えたあとにMC同士が握手をしたり、ハグをすることがあるじゃないですか? DVDを見るようになってから、そういったMCバトルの美しさに気がついたんです。

だから、ライトノベルでMCバトルの絆のようなものを描けたら、少しは怖いイメージが薄れて、多くの人に受け入れてもらえるんじゃないかと思って、MCバトルを題材にさせていただきました。

作中ではMCバトルを題材にしてるだけじゃなくて、HIPHOPネタも多く取り入れていて、捉え方によっては「イジってる」と感じられてもおかしくない。

もちろん僕にそんなつもりは一切ないんですけど、多少なりとも不安もあって、最初に今回の座談会の話を聞いた時は、とうとう怒られる日がやってきたか、と思いましたね…。

DOTAMAさん

DOTAMA 全然そんなことないですよ。作中にでてくるキャラクターは、MCバトルで戦ってる。戦ってるんだけど、会話をしていて、ちゃんとそこにいる人たちを楽しませてる。

僕たち現場で戦ってるMCも同じで、罵り合ってはいるものの、どう罵ったらお客さんが盛り上がるのかということを考えていて、バトルなんだけどエンターテインメントなんです。罵った上でお客さんを楽しませた方が勝つんですよ。

作中では、最後までそこが忠実なメッセージとして描かれていました。

それに加えて、登場するキャラクターのイラストがすごく可愛いかったり、ラブコメディーのようなギャグ要素も散りばめられていたり、あとは“いかにもラッパー”のようなイカつい不良ばかり出てくるわけではなくて、優等生の女の子と戦う部分があったりして、HIPHOP側に寄り過ぎてないというか、HIPHOPのフィールドライトノベルのフィールドをつなげよう、という思いが伝わってきました。

──SNSなどでも絶賛の声が多かったですよね。

MC正社員さん

MC正社員 僕の周りでは、読む前は「なんでそんなに褒めてるの?」ってぼやいてるラッパーがいたんですが、自分のブログでこの作品を叩くために買って読んだら、叩くどころか「思いのほか楽しめてしまった」って言ってましたね(笑)。

真代屋 世間のラッパーに対する一般的なイメージとかけ離れたキャラクター同士がMCバトルをすることで、読者に親近感を持ってもらえるんじゃないかと思って、学園モノにしたということもあります。

でもそこまで言っていただいて非常に恐縮です。DOTAMAさんはいつも笑いながら相手をディスっていらっしゃるので、内心、今日も笑いながらディスられるんじゃないかとヒヤヒヤしてました(笑)。

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ラップを文章で表現する難しさ

真代屋秀晃さん

──実際に読まれてみて気になった点もいっぱいあるんじゃないですか。

MC正社員 やっぱりリリックですね。ヤバい韻がたくさんあって、特に「生徒会長、ゲート解放」とか(笑)。リリックはどうやって書いたんですか?

真代屋 ラップといえば、やっぱり皆さん韻を踏む、ということを想像するじゃないですか。でもラップってフリースタイルに限らず、ラッパーさんの歌い方、いわゆるフロウがあってこそ完成するものだと思います。

でもラップを文章で表現するときに最初につまずいたのが、韻を踏んでいることが読者に伝わりにくいという問題。たとえば、「ビートを連打、プチョヘンザ」とラップしたとします。

ラッパーさんがラップして音として聞くとがっちりハマっててかっこいいんですけど、これを文章にすると「ビートを連打、put your hands up」になるわけじゃないですか。そうすると読者はここで、「あれ、これはどこで韻を踏んでるんだろう」って1回止まってしまう。

僕はMCバトルをテーマにする上で、読者が読んでいる時に止まってしまうと負けだと思っていて、一目見ただけで韻を踏んでるということがわかって、頭の中に音として入っていくのが理想だと考えています。

だから本当にリリックを書くのはかなり苦労しましたね。3行のリリックを書くだけで何日も費やしたり、書き上げても担当の編集さんに「パンチラインが足りない」って突き返されたりすることもありました(笑)。

DOTAMA 読んでいて、その点はすごい意識されてるんだろうなって思いました。カタカナが多かったりして、頭に音として入ってくるように書かれてる工夫を感じました。

MC正社員 よくラッパーは、韻を踏むことだけがラップじゃないって言うんですけど、ラップを表現する上で一般の方にもわかりやすいのはやっぱり韻なんですよ。

でもマンガとかライトノベルで韻を文章で表現するのは実際すごく難しいし、それはできないんだろうなって思ってました。

だからこそ、この小説が話題になったということもあると思うし、今のお話を聞くと、凄く計算されて書かれてることがわかった。実際にこのラノベではラップがちゃんと表現できていると思います。僕なんて、読んでる最中にたまにR指定の声で聞こえてきましたよ(笑)。

DOTAMA そうそう! 「ここからはじまる黙示録、悪人どもを即死末」とかRくんが踏みそう(笑)。 真代屋さんの中で、音川くんのラップはラッパーの○○さんみたいなイメージはあるんですか?

真代屋 やっぱりさっきも言ったように特定のラッパーさんのフロウで韻を完成させてしまうようなラップは読者に伝わりづらいので、そういったイメージは全くありませんね。

MCバトルの本質を捉えている

主人公の音川真一 サタニックマイクによって思いの強いライムが召喚されて具現化する

DOTAMA  リリックに関して言えば、歌ったライムの思いが強ければ強いほど、そのラップが可視化されるというアイディアは、真代屋さんが意識されている、一目読んだ時に頭にすんなり入ってくる補助的な役割にもなるし、僕らが戦いを面白くしようとして使う、言い回しや固有名詞を使った例えの究極の形でとても面白いです。

僕らは8小節4本勝負とかでバトルをしますが、その間にどれだけ自分の主張ができて、かつ、即興の内容でどれだけお客さんを湧かせられるかが勝負になります。

ラップの内容は実は意外とシンプルで、「俺は今お前に対してこう思ってる」とか「俺はこういう気持ちで戦いに臨んでる」とか、ある意味自分の身の上話でもあって会話なんですね。そこで見てる人を熱くさせるには、即興性と技術があり、言葉にどれだけ自分の思いが込められているかによって変わってくるんですよ。

上手くてもただ言葉遊びをしてるだけじゃ心には響かないし、あまり面白くない。だからこの小説の思いが強くないとライムが具現化されない、という要素はMCバトルの本質を捉えていて、本当にすばらしいアイディアだと思いました。

MC正社員 僕は前々からMCバトルは格闘ゲームに似ていると思ってたんですよ。だからライムで召喚された物体が相手を攻撃をするという設定に度肝を抜かれました。

真代屋 僕も格闘ゲームに似てるとはちょっと思ってました。2巻のサブタイトルは「クレイジー・マネーウォーズ」なんですけど、貧乏な環境で育った少女が2本目のサタニックマイクを持って登場します。

このマイクは、MCバトルでお金を奪い合うマイクで、勝つと相手のお金を取る事ができます。しかもバトル中は、持っているお金が数字で可視化されていたり、2巻では格闘ゲームの要素がより強くなっています。

MC正社員 ヤバい、めちゃくちゃ面白そうですね。以前僕も良かったMCにお金を投げ込んで、その金額で勝敗を決めるバトルを考えたことがありました(笑)。

DOTAMA 持たざる者がマイクを使ってゲットマネーのために戦う、というお話もラップソング王道のテーマが取り入れられていていいですね。

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MCバトルを流行らせるにはライトノベルしかない

第2巻『韻が織り成す召喚魔法 ―クレイジー・マネー・ウォーズ― 』/MC正社員さんは第2巻の帯コメントを担当している

MC正社員 僕はHIPHOPもそうですけど、MCバトルってもっと一般の方にも好きになってもらえる可能性があると信じています。

だから元々マンガとかライトノベルと何か一緒にやるべきだとずっと思っていたし、某有名ラップグループのプロデューサーさんも「MCバトルを流行らせる為にはライトノベルしかない」って言っていました。

そんな話をしてる時にこの小説がでてきて、「先にやられた」という悔しい気持ちもあったんですけど、何よりも驚いたのが、この小説を電撃文庫さんが金賞に選んだことですよね(笑)。

真代屋 それは僕もいまだに驚いてます(笑)。電撃文庫さんの読者層に受け入れてもらえるのかなって不安もあって、最初の方は8小節3本勝負みたいなルールも入れて、ガチガチにMCバトルの要素を入れてたんです。

でもそうしてしまうと、MCバトルに馴染みのない人にとっては手に取りづらくなるんじゃないかと思ったんですよ。たとえば某有名テニスマンガって、テニスが題材ですけど、人が吹っ飛んだりとか完全にルール無視じゃないですか。

でもテニスマンガとしてとても面白い。だからこの小説では、ルールがどうこうというよりは、MCバトルの内容を少しまろやかにすることで、ラッパー同士の言葉の知略戦をまずは見て欲しいと思っています。

3人が語るMCバトルの魅力

──真代屋さんは、本作を執筆されるにあたって相当MCバトルやHIPHOPを研究されたと思います。真代屋さんが感じるMCバトルの魅力はなんでしょうか。

真代屋 第1巻のあとがきでも少し触れてるんですが、やっぱり韻を踏んだフレーズだからこそ言える言葉があると思います。

それに即興で考えてラップしていて、そこから放たれる言葉は率直な本音でもあると思うんです。それを互いにぶつけ合うということ自体が魅力的ですし、多彩な言葉遊びやチョイスみたいな部分が楽しい。

あとはMCバトルは本音をぶつけ合うので、自分をさらけ出せる場でもあると思うんです。自分をさらけ出すからこそ変われる何かがあると感じていて、「変化」という部分もMCバトルの魅力だと思います。

バトルを終えた後に芽生える何かや変化がある。だからこの小説では、いじめられた過去があって、不良に怯え、嫌う音川くんがMCバトルで変わっていく姿を通して、まずはMCバトルというラップのバトルがあるということ、そして、MCバトルの楽しさや美しさをなるべく多くの人に伝えられたらいいと思っています。

MC正社員 僕は今でこそ大会を主催して、多くのラッパーと話してますけど、僕も主人公の音川くんと同じで最初はラッパーが怖かった

よく道ばたでサイファーしてる場所を何度も何度も通ってたんですけど、怖いから近づけませんでした。でもずっとラップしてみたいと思ってたし、いざ勇気を出してその輪の中に入ったら、優しくて面白い奴が多かったんです。

この小説の中でも、いかにも不良っぽいキャラクターなんだけど、実は根は良い奴みたいな部分が描かれていて、音川くんに共感できる場面がありましたね。

──DOTAMAさんとMC正社員さんにもお聞きしたいんですけど、お二人もMCバトルに魅了されてバトルに参加されたり、大会を主催されてると思います。現場のMCと大会主催者の視点から見た、MCバトルの魅力はどこにあるのでしょうか。

DOTAMA ラップは本来、アメリカの貧しい地域から生まれた音楽です。ダンスミュージックであると同時に、戦いの音楽でもあります。MCバトルも基本は感情をむき出しにした口喧嘩なので、本当に喧嘩に発展する場合もあります。僕がバトルに出始めた2003年当時は、バトルが終わった後に、裏に連れて行かれることもありました(笑)。

でも今はインターネットが普及したり、HIPHOPにも色んな形ができていて、その文化で生活してる人たちだけが聞いて、参加する音楽じゃなくなってきている。だからMCバトルでも色んなタイプのMCが活躍しています。

駆け出しのラッパーは皆そうだと思いますが、僕が最初バトルに参加したのは、名前を売る事、自分をアピールする事が目的でした。でも、自分でも思っていた以上にMCバトルはエンターテインメントに溢れていて、僕はそこに魅了されて、かれこれ10年くらいMCバトルを続けています。

テレビで放送されてるK-1にも、エンターテインメント性で負けてないと思うし、出場してるMCは互いにテクニックを磨き合っていて、どうやったら面白い攻め方ができるかとか、面白い表現ができるのかとか、常に互いに高め合ってるんですね。

こんな知能的な戦いが見れるのはMCバトルの大きな魅力だと思うし、真代屋さんがおっしゃってるように、バトルを通じてお互いの事を理解しあえて、仲良くなれることもある。そういう部分も魅力だと思います。

MC正社員 MCバトルは同じ展開が絶対になくて、本音をさらけ出してるから何よりもその人の内側が見える。テクニックの競い合いの時もあるし、時には胸ぐらをつかみ合い、殴り合いの喧嘩になることもある。

でもそれは自分の生き様を表現していて、その人が背負ってる背景や人生とか、いろんなものが見えてくるんですよ。そして、その判定を決めるのはそこにいるお客さん。本当に全員参加型のマルチエンターテインメントだと思います。

しかもバトルが終わった後はDOTAMAさんが言ったように、仲間になったりすることもあるし、そこから音源に注目されたりと、MCバトルが個々の活動にもつながっていく。だからもっともっとMCが増えてもいいと思うし、一般の人にも必ず楽しんでもらえるコンテンツになると思います。

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