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パワハラをめぐる法律問題

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 厚生労働省は5月30日、労働者と企業のトラブルを裁判に持ち込まずに迅速に解決する「個別労働紛争解決制度」の2013年度の利用状況を発表しました。労働者と事業主との間の紛争に関する相談では、パワーハラスメントを含む「いじめ・嫌がらせ」が2012年度に比べて14.6%増加し、2年連続で最多となっています。
 そこで、今回はパワハラをめぐる法律問題について取り上げてみたいと思います。

 まず、パワハラとは何かですが、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」は「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しています。
 円卓会議では典型例として、

(1)暴行や傷害(身体的な攻撃)
(2)脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言(精神的な攻撃)
(3)場所的に隔離したり、仲間外しや無視を行う(人間関係からの切り離し)
(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
の6類型を挙げています。
 パワハラについては、上司から部下への嫌がらせを指して使われる場合が多いですが、それに限らず同僚間、先輩・後輩間、さらには部下から上司に対して行われるものもあり、「優位性」については、職務上の地位のみならず、人間関係や専門知識等さまざまな要素を考慮して判断されます。また、個人によっては不満を感じるような場合でも、「業務の適正な範囲」で行われている場合には、パワハラには該当しないとされています(なお、軽微なミスについて執拗に注意したり反省書を書かせたり過剰な叱責をすることは、業務の適正な範囲を超えるものと考えられています。東京地判平成2年2月1日)。

 現在、パワハラを直接罰するような法律は存在していません。もっとも、身体的な攻撃を加えた場合は傷害罪(刑法204条)、暴行罪(同法204条)、社内において具体的な事実を挙げて中傷する場合には名誉毀損罪(同法230条1項)、具体性を欠く内容(たとえば「あの人は馬鹿だ」等)で中傷する場合には侮辱罪(同法231条)が、発言の内容によっては、脅迫罪(同法222条)、強要罪(同法223条)が成立する可能性があります。また、刑事上の責任を負わないとしても、民事上の責任として、パワハラを行った本人は、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負うことがあります。加えて、会社には使用者責任として、本人と同様の責任を負うことがあり(同法715条)、さらにパワハラを放置したような場合には、安全配慮義務違反を理由に債務不履行責任を負うことがあります(使用者の安全配慮義務違反を認めた判例として、東京高判平成15年3月25日、福岡高判平成20年8月25日、高松高判平成21年4月23日等)。

 パワハラのもたらすダメージは当事者にとって非常に深刻です。パワハラの存在を少しでも感じた場合には、放置することなく速やかに問題の解決に取り組んでいく必要があります。法テラスや厚生労働省の総合労働相談コーナーが相談窓口となっていますので、パワハラでお悩みの方は一度連絡してみてはいかがでしょうか。

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パワハラをめぐる法律問題

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