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自分で狩猟したシカやイノシシを食べる「狩りガール」が増加

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 「○○ガール」に新種が現れた。その名も「狩りガール」!。コラムニストのオバタカズユキ氏が解説する。

 * * *
 また新しい「ガール」の登場だ。その名は「狩りガール」である。

 私のざっくりとした理解では、少女趣味的な洋服の着用を好むふわふわとした女性たちを、「森ガール」という。また、登山やアウトドア活動をおしゃれの文脈で楽しむ女性たちのことは、「山ガール」という。

 森と山、どちらにしても、たいした実質があるとは考えにくい流行り言葉だ。それらの造語が広まることによって儲かるオトナたちもいたりするから、あんまり連呼されると「なんでもガールをつければいいって安直だろ」と腐してみたくなる感じもある。

 しかし、「狩りガール」は違う。当然のことながら、これは、猟師のような格好で都会を闊歩する新種の娘たち、を指してはいない。「狩りガール」は、そのまま直球で「狩猟に挑む女」を意味している。

 5月24日に流れた毎日新聞の記事によると、こんな状況があるそうだ。

〈わな猟などを含む国内の狩猟者は1970年度には53万人いたが、2011年度は20万人と激減。60歳以上の占める割合は10%から66%に上昇した。そんな中、女性は全体の1%未満ながら、06年度の1217人が11年度には1912人と右肩上がりだ〉

 日本のハンター界は、高齢化が進むばかりで、若い世代がほとんど寄り付かなくなってしまった。複雑な要因が絡んでのことだろうが、そもそも狩猟を身近で楽しめるような田舎では、人口が減少し、高齢化している。田舎に残った若い世代にしても、けっこうな時間とお金も必要な狩猟を趣味にできるような人は例外的だ。ハンターは必然的に減り続けておかしくない。

 なのに、そこで予想外の事態が展開し始めたわけである。ここ2~3年のことのようだが、以前はほぼ男社会で当たり前だった狩猟の世界に、若い女性たちが関心を示してきたのだ。そして現に、狩猟免状を取得、シカやイノシシを獲る女性ハンターが増えている。

 まだ狩猟者全体の1%未満とはいえ、縮小化する業界にとっては願ってもない話だ。彼女たちが本当に狩猟を楽しんでくれれば、マイナー化する一方だったハンター業界の見られ方も好転するだろうし、おじさん・おじいさんばかりの集まりの中に、「よろしくお願いします!」と若い娘が入ってきたら、それだけで単純に花が咲いたような気分になるものだ。

 かくして、一般社団法人の大日本猟友会としても、女性ハンター大歓迎ということで、去年の夏に「目指せ!狩りガール」と題する特設サイトを開設。ジビエ料理好きな東京在住の女性会社員が、ふとしたきっかけからハンターを目指し、自ら仕留めた獲物の肉料理をみんなにふるまうまでのアレコレを、センスよく描いてみせた。「狩りガール」の発生地は、おそらくこのサイトである。少なくとも大日本猟友会公認の呼称なのだ。

 今春まで18回更新されたリアル体験記風の「目指せ!狩りガール」物語は、素人がハンターになるまでクリアすべき数々のハードルを、具体的にわかりやすく解説している。狩猟入門のハウツー読み物としてよくできている。

 通読した私の感想は、動物を獲る以前の、狩猟免状を取得して鉄砲を扱えるようになるまでが大変なんだ、ということだ。免状を与えるにふさわしい人物であるかどうかの行政チェックが厳しいし、鉄砲を入手して使いこなすのも、魚釣りの竿やリールの場合よりはるかに難しい。だから地域社会の壊れた田舎で若者ハンターは出づらいよなと思うと同時に、このぐらいハードルを高くしているから銃による犯罪が少ないのだな、日本はそれでいいのだ、と納得したりもする。

 けれども、「狩りガール」はそうしたハードルを次々に乗り越えていく。どうしてそこまで狩りをしたいの? という疑問が普通に浮かぶが、サイトの物語の主人公である東京の女性社員は、都内のエゾシカ料理店がお気に入りで、「このお肉がどうやって来たのか? 獲るところを見てみたい」という、ごく気軽な動機から行動をおこしている。

 一般的に女性がハンターを目指す動機は、どんなものなのか。同サイト内の説明ページでは、次の3パターンが挙がっている。

〈食べ物に対する関心から、米や水、野菜、魚だけでなく、自分で納得できる〈肉〉と向かい合うライフスタイルを選んだ女性〉

〈都市農村交流の中から野生鳥獣による食害・獣害を目の当たりにし、森林保護・環境保全に関心を持った女性〉

〈山歩きだけでは物足らず、少しだけステップアップしようと思った女性〉

 やや抽象的だが、なんとなく分かる。これらは、例えばNGOや社会貢献型の仕事に就くようなタイプの心性と似ている。それこそ「森ガール」や「山ガール」のような消費者としてだけの存在ではなく、世の中の仕組みとダイレクトに結びつく者でありたいといった欲望。ちょっとぐらい大変でも、自力で生きていることの実感を大切にしたいという価値観の台頭。ネット用語で言いかえれば、けっこう尖った「リア充」重視の人々かもしれない。

 実は、性別や年齢に関係なく、そうした生き方を優先する人が増えているような気もするが、とりあえずは今でも「若い女性なのに~」という文脈のほうが衆目を集めやすいので、「狩りガール」がニュースになるのだろう。その裏で、人知れず腕を磨いている「狩りボーイ」も当然いるはずだ。

 日本人の多数がお肉の出所どころか、お魚は骨があるから苦手と言ってのけるご時世にあって、まったく正反対に向かう人たち。2011年にその名も『女猟師』というルポルタージュが出て一部で注目されたり、同年から『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』というマンガがヒットしたりといった話もある。狩猟を職業とすることは極めて困難だが、究極の一次産業として気になる世界であることは確かだ。

 「目指せ!狩りガール」を読んだら、私の胃袋も鳴ってきてしまい、北海道料理店でエゾシカ肉をいただいてきた。火の入れ方が上手ければ、とてもジューシーでくせもなく、味のいい赤身肉だとあらためて思った。サイトの主人公のように「獲るところを見てみたい」という気持ちにはならなかったが、「このお肉がどうやって来たのか?」は知りたくなった。

 「狩りガール」がこのまま増えて、狩猟の世界が活性化したなら、いわゆるトレーサビリティーをしっかりさせて、誰がいつどうやって獲った肉なのか分かるようにするといい気がした。で、食べる側担当としては、店のメニューにある「狩りガールARIが獲った根室のエゾジカ背ロースのロースト」といった能書きを読んで注文するのも、一興なんじゃないかなどと考えた。



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