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外国から日本の新卒採用が奇異の目で見られるワケ

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 就活中の学生やフリーター、正社員であっても、労働問題に頭を悩ませる若者は多いのではないでしょうか。採用について、労働について、給料について、きちんと考えてみたことはありますか? 給料や就業時間の多寡といった目先の問題にとらわれていると、肝心のことが見えなくなってくることも。
 自分たちが置かれている日本の状況について、原理原則から考えてみませんか?仕組みを理解してみると、「労働問題」の真の姿が見えてくるはずです。

 『若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす』(中央公論新社/刊)は、東京大学法学部を卒業後、労働省勤務などを経て、現在、労働政策研究をしている濱口桂一郎さんが、日本型雇用システムについて仕組みから解きほぐした一冊です。

■日本と欧米、まったく違う「採用」観
 日本では、入社を通じて組織の人間(メンバー)となり、そのメンバー1人1人に仕事が割り当てられていく「メンバーシップ型」採用、欧米やアジアではある仕事(ジョブ)に対し適応する人間を組織の内外から当てはめる「ジョブ型」採用が行われてきました。
 日本の新卒一括採用は、まさにこのメンバーシップ型採用です。何のスキルも持たない若者を、卒業大学や人間力といった物差しで選別し、入社してから職務に必要な教育を行うのですから。退職までの何十年間、同じ企業で働き続けることが前提となっているために、何の経験のない若者でも給料をもらいながらスキルを身につけ、昇進していくことができるようになっているのです。
 一方、ジョブ型採用では、まず仕事ありきです。その仕事を遂行できる資格や能力を持った人物を組織の内外から募集し、必要なときに然るべき給与を払って雇います。そのため、年功序列や新卒一括採用などの制度は基本的に存在しません。年齢や性別関係なしに成し遂げた仕事に応じて給与が支払われますから、スキルも経験もない若者を雇うのは効率が悪く、経験豊富な人材にばかり需要が集中します。このジョブ型採用は、欧米やアジア各国の多くの国で行われています。
 私たちにとって当たり前の「新卒一括採用」は、外国の人から見たら実はかなり奇異に見えるのです。

■正社員は幸せ?ブラック企業が生まれるワケ
 批判されている「ブラック企業」。ここで、ブラック企業が用いる論理を本書を通して読み解いてみましょう。
 あるブラック企業の役員は、新入社員に向かってこう挨拶したそうです。
 「社会に出たばかりのおまえたちは何も知らないクズだ。それは、現時点で会社に利益をもたらすヤツが1人もいないからだ。」「利益をもたらせないヤツが給料をもらうのは悪以外の何物でもない。おまえたちは先輩社員が稼いできた利益を横取りするクズだ」「早く価値を生める人材になり、会社に貢献するように」。
 このセリフは、上記した「ジョブ型社会」であれば、それなりに筋が通っている面もあります。とはいえ、ジョブ型社会ではもともと仕事遂行に必要なスキルを持った人材を雇いますので、初めからそういった能力を持っていないことが自明な新規学卒者を採用してこんなセリフを浴びせるのはおかしいですよね。
 ブラック企業は、メンバーシップ型社会の仕組みや感覚をそのまま色濃く残しながら、部分的にジョブ型社会の論理をもっともらしく持ち込むことによって、不合理極まる要求を社員に押し付けようとするのです。

 本書を読むと、自分が労働の仕組みについていかに無知であったか思い知らされます。現在の雇用状況を作り出した歴史から、労働問題の現状、そして新しい雇用形態のあり方まで、細かな分析と詳しい解説で述べていきます。雇用問題に興味がある方は必読。入門書として最適な一冊です。
(新刊JP編集部)



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