「帰れ!」と言ったら、本当に帰ってしまった女子大生アルバイトの話

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「帰れ!」と言ったら、本当に帰ってしまった女子大生アルバイトの話突発的に休むアルバイトの人っていますよね。「授業が長引いて」「体調が悪い」などがよく聞く例です。理由によっては、本当にどうしようもないものもありますが、働いているこっちとしては、「ちょっと勘弁してよ」というのが本音です。

ある日曜日、21歳の女子大生アルバイトSさんが出勤してきました。土日祝日は居酒屋チェーンの書き入れ時で、売上もお客様の数も平日の1.5倍になるところもあります。それだけ忙しく、猫の手も借りたい状況になる日です。(ライター:ナイン)

失恋で「試合に負けたボクサー」のように…
そんな日曜なのに、何やらSさんに元気がありません。「どうかしたの?」と聞いてみると、

「…彼と別れて……」

とポツリ。まあ、若いし、それくらいのことはよくあるだろうと私も思い、深入りはしないようにしました。営業時間に入っても、やはり元気はありませんでしたが、事情を知っているため「もっと元気よくしなさい」とも言えずにいました。

しばらくして、別のアルバイトの人に「あれっSさんは?」と言われました。そういえば、先ほどから姿が見えません。店内を探したところ、従業員控え室で発見しました。いすに腰掛け、試合に負けたボクサーのように打ちひしがれた様子のSさん。

その姿を見て、私もなんともいえない気持ちになりました。事情はわかっていましたが、「勤務時間中に勝手に控え室にいくなんて」という怒りもありました。そこで「働けないなら帰るか?」と厳しい口調で注意したところ、Sさんは「…はぁ」と気のない返事です。

私はひとまずSさんを放置し、接客に戻りました。しばらくして控え室に行くと、なんとSさんは、本当に帰ってしまった後でした。発破をかけたつもりが、まさかこんなことになるなんて。他の従業員たちも唖然とする中、アルバイトの男の子が私に言いました。

「帰れって言われて本当に帰る人、僕、初めてみました…」

大学の合格発表で急に休んだ男子高校生
また、別の日曜日、男子アルバイトの高校生Nさんから「すいません。30分くらい遅れます」と電話が来ました。何かあったのだろう、と思いつつ了承すると、再び連絡があり、「やっぱり今日行けません」とのこと。

「何? なんかあったの?」と聞いた私に、「いや、ちょっと…」と、何やらハッキリしない様子。店が忙しかったこともあり、早々に電話を切りました。

後から分かったのですが、この日はNさんが受験していた大学の合格発表の日でした。「それでか…」と私も思いましたが、そんなこと本人には事前に分かっていること。事情を説明してくれれば休みにして他の人をシフトに入れたのに、と考えずにはいられませんでした。

ただ、そのときは「信じられない」と思いましたが、考え直してみるとNさんが大学に合格したのかどうかは聞いていませんでした。もしかすると合格できると思った志望校に落ちていて、想定外のショックに落ち込んでいたのかもしれません。

でも現場で働いていると、自分の目の前のことしか考えられなくなり、「なんで来ないんだよ!」と苛立ってしまうんですよね。副店長の私としては、責任を全うしろよと思うけど、若い彼らにしてみれば、時給千円足らずの「たかがバイト」。それは分かっているつもりなのですが…。

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【プロフィール】「帰れ!」と言ったら、本当に帰ってしまった女子大生アルバイトの話ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。TwitterFacebookブログ

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