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中二病化する現代社会(関東学院大学文学部 新井克弥)

しかも、この「社会的には不適応、ネット上では適応」という状態を社会が肯定するようなインフラも構築されている。現代人の職務上の役割はシステム化され、その中に機械的にビルトインされている状態。いわば官僚制が隅々まで浸透している。こういった状況の中で労働する個人は、組織=システムの全体像が見えず、細分化された労働の一部=役割を専ら演じていれば収入・地位が確保されるという環境に置かれている。つまり、何らかのかたちでエキスパートになっていれば、それでよしというインフラが出来上がりつつある(もちろん、これは全てではない)。ならば、雇用される側も組織全体のことよりも、与えられた仕事のみをやっていればそれでよしとみなすわけだ。

ただし、これでは社会的に自らが能力があることを証明できない。そのエキスパートとしての能力は、一定組織内での「パーツ」の域を出ないからだ(M.ウェーバー言うところの「官僚制の逆機能」に該当する)。能力が組織、さらには社会全体にどう還元されているのかは不確かだ。やっぱり、自らの仕事が社会的に関わっているということの手応えが欲しい。そこで、実社会ではないヴァーチャル社会であるネット社会でフィルターバブルに基づいた価値観を振り回す。ネット環境はヴァーチャルゆえ関係は原則一期一会、しばしば匿名であったりもするので、リアルワールドに比べるとやりたい放題ということになる。まあ、絡まれた第三者側からすれば迷惑この上ないということになるのだが。

つまり中二病のまま社会に適応することが出来るようになっている。だからその慢性化状態である邪気眼を発症させる大人が多発するわけだ。ただし、前述したように、本当のところでは自らの能力が社会的に認知されてはいないということは知っている(収入を得ていると言うことと社会的に認知されているということは別の話なので)。これは実際のところ「労働の疎外」ということになるだろう。

中二病を飼い慣らす

邪気眼化した中二病。これを「成人中二病」と読んでみよう。で、「こりゃ困ったもんだ、撲滅せねば!」と「けしからん」的なモノノイイでお茶を濁すのは簡単だ。ただし、そんなことを言ったところで何ら解決にならない。また、こういった成人中二病患者を更生・治癒するための制度を設けるというのもちょっとリアリティに欠ける。というのも、前述したようにネット社会が、こういった心性を受け入れるインフラをある程度構築しているのだから、おそらく、こういった「成人中二病患者」は今後も減少することなく漸増すると考えた方が正鵠を射ているからだ。そして、今後、情報化社会はジェネラリストと成人中二病患者という両極端なパーソナリティを量産していくと考えた方が、やはり正鵠を射ているからだ。情報アクセスの易化は、こういった情報格差(情報を横断的につなぎ合わせるエキスパートと限定的な情報にタコツボ的にはまり込むエキスパート)を作り出すのだから。

じゃあ、どうするべきか。いくつか処方箋を提示してみよう。

最も対処療法的なものは、中二病を煩っている人間から迷惑を被る人間が、これを察知し回避するというものだ。成人中二病の人間は潜在的に自らが認められたいという欲求を持っているが、それが自己顕示欲が肥大化した状態でこれを発するため、結果として相手を攻撃し、相手を引き下げ差異化を図ることによって相対的に自らの自己承認を獲得するというスタイルを採る。だから、成人中二病患者がこちらを攻撃してきたら、適当にスルーしつつコミュニケーションの場から離れることによって、少なくとも被害を回避できる。ただし、もちろん、これは成人中二病患者から被害を受ける側の話であって、患者それ自体を改善するというわけではない(まあ、する必要があるかどうかもわからないが)。

むしろ、こういった成人中二病を飼い慣らすインフラを作り上げることの方が重要だろう。言い換えれば、評価する価値観を多様化していくというようなシステムを社会が作り上げること。つまり「その中二病、十分使えますよ。あなた社会貢献してますよ」という実感を得られるような様々な評価基準と報酬を用意すること。そんなふうに僕は考える。

ちなみに、古くから、この成人中二病を組織として受け入れ、社会的地位も与え、そこそこの報酬も用意するという組織は、一部だが存在した。その典型は……「大学」。

執筆: この記事は新井 克弥さんのブログ『勝手にメディア社会論』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年04月17日時点のものです。

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