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ロングインタビュー「林 修」

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声をかけていただく限り、全力で

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金色のピカピカ光るパーティーグッズみたいな

タスキを掛けて林先生、取材陣の求めに応じて、

何度もあのポーズをとってくれるのだった。

サービス精神満点。でもあくまでサービス精神。

驚くほど冷静に状況を、先を見ている。

すごいスピードでスターになった48歳の先生、

芸能界を、本業の世界をいかに生きるのか。

教える側ではなく教わる側。
で、ついにゴールデン進出

「あ、それは誤用ですね」

林先生、カメラの横に出されていたカンペの「敷居が高い」という表現を見て言った。自分が良くないことをして相手に顔を見せづらいときに使うんですよ、と解説。新番組のPRコメント収録だ。

テレビ朝日毎週火曜夜7時から、林先生がMCを務める『林修の今でしょ!講座』が始まる。昨年、深夜帯で放送されていた『今やる!ハイスクール』の堂々ゴールデンタイムへの進出である。番組では先生は先生でなく生徒。各界のエキスパートから、毎回新しいことを学ぶ。

「ホントに楽しいですね。ここで学べば学ぶほど、僕の知識はものすごく偏っていたんだということがわかりましたね。それが矯正されていくような気持ちで、ありがたいです」

刑事ドラマの作り方、クラシック音楽を好きになる方法、人間の臓器の秘密、などなど多岐にわたるテーマに、林先生が鋭い質問力を発揮し、楽しく突っ込んでいく。

「本当にいい授業をしてくださる方をスタッフが見つけてきてくれるんですよ。僕は間に入って、基本的には良き通訳であることを心がけています。“聞いて、砕いて、伝える”という位置が僕の仕事です。僕が面白い授業ばかりでなくお茶の間のみなさんにも絶対楽しんでもらえると確信してます」

この番組で仕入れたネタを本業の方で活用することもあるという。ただし、オンエアを見て、そこで使われていないのを確認してから「さも前から知っていたかのように(笑)」授業で語ったりもするらしい。

番組で学びたいことのひとつが「料理」なのだそうだ。

「僕の勝手な希望ですが、この番組って、僕が生徒になって学ぶという形になればいいわけですから、これまでやってきていないことを修業してみたいですね。たとえば、料理の話をしましたが、シェフがどんなに大変なところから仕事をスタートさせるのか、その最初のところからお見せできたらいいですね」

実際に料理はあまりしない。

「基本的に僕は、自分よりすごいプロがいる世界では努力しないって決めている人間なので(笑)。どんなにがんばったってプロのシェフには勝てっこないので、すぐやめる。それを続けてきた結果、今に至りました(笑)。ここだけは勝負しても絶対負けっこないなと思ったのが、予備校の現代文の講師で、だから一生懸命やりましたけど、他はもう負けっぱなしでいいやと(笑)」

ただ視聴率は気になる。

「努力の結果が数値化されるわけですから。そこには明確な原因・結果、因果関係がある。どうしてそういうことが起こっているのか、じゃあどこを改善すれば変わるのかって考えるのは楽しくないわけないです(笑)。感覚的には、予備校で生徒の成績見てるのに通じるものがありますね。しかも視聴率は、自分がいるなかで出る数字ですからね」

林先生は、予備校の先生である。タレントとしてテレビに出始めて、まだ1年半弱。

勝てる場所を探し、全力で。
そんな勝負が大好物

本業にも前以上に力を入れる。

「露出が目立つほど、授業のクオリティが厳しく審査されるでしょうし。レベルを保って当然、むしろ上げないと批判が来ます。去年は、東大模試の問題作成から降りたんですが、今年はまた戻ります。“模試もしっかり作った! そのうえでこういうこともやっているぞ”という姿勢でいこうと。いろいろ気を遣っているんですよ(笑)」

先生の勤める「東進ハイスクール」の授業の中心は収録。だから、意外と時間の融通は利くという。たとえば2日に分けていた収録を1日に圧縮したり、収録開始時間を早朝にすることで時間は捻出できるのだ。

「それに季節労働者的なところがあるんです。1・4・5月はだいたいヒマ。3月と6月後半から7・8月はすごく忙しい。9月はすごくヒマ」

これまでの“余暇”の時間が、今、芸能関係の仕事で埋められている。だがスケジュールは“地獄化”。1日で2000㎞移動し、月に1日も休みがない状況が14カ月続く。

「自分よりすごいプロがいる世界では努力しない」が信条なのは、前述の通り。東大法学部時代は官僚を目指したが、同期に「明らかに自分よりすごいやつがいて」、あきらめた。

大卒後、日本長期信用銀行に入社するも、破たんを予感し半年で退職。起業。失敗。株。失敗。などを繰り返し多額の借金を負った「空白の3年間」(本人の記憶からも欠落しているという)を経て、予備校に職を得た。生活と借金返済のためだ。

「僕には残念なぐらい予備校講師の資質があったんですよ。誰かの授業に感動してこの仕事に就く人が多いんですが、僕はそうじゃなかった。生徒として通ってたころから“なんか授業ヘタだなあ、僕ならこう教えるのに”って思っていて。大学時代にも、その資質には薄々気づいていたんですが、もっとカッコいい仕事がやりたかったんです。でも現実はそんなに甘くなくて…」

それが開花。最初は英語・数学・現代文・漢文・日本史・化学など8科目を教え、すべて手応えを感じた。

「8科目やったからこそ、一番勝ちやすいのはどこかがつかめたんです。英語や数学でも勝負できたと思います。ただ現代文が圧倒的に楽に勝てた。負けない勝負を完全に計算ずくで選びました。それで負けたら完全な自己否定です。結果的に23年間順調にやってこられました」

「東進ハイスクール」は完全に実力本位だという。成績で年俸が決まり、契約年数が決まる。他の予備校からヘッドハンティングし、厳しいレギュラー争いにリストラ。

「こういう環境が大好きなんです。“勝負”が好きなんですよ。とくに勝てる勝負は楽しい(笑)」

芸能の仕事も勝負の連続。ゴールデン進出に至っては「1年で消えるから」なんて言ってはいられない。

「もはや趣味というわけにはいかないですよね。本業同様“勝負”です。思い上がりかもしれないですが、予備校で現代文を教えている限りはホントに楽に勝ててきたと思うんです。ところがこの世界は、敵が強い。でも勝負するチャンスをいただけているので、ありがたいお話だと思いますし、ここで戦ってみようかと」

とくに、これから「どうなりたい」とは考えない。ただ、現状を分析し「こうなるだろう」とは考える。

「これまでの僕は3段階の出方をしてきました。第1期は“今でしょ期”。バラエティなどで“今でしょ”をひとこと言えばお仕事OKでした。第2期が“『あすなろラボ』期”」

林先生が教壇からヤンキーたちに「やる気」を説き、感動の嵐を巻き起こした。元は番組内の一企画だったが、この後、番組全体がリニューアルされた。授業が中心になったのは、林講座がきっかけのはずだ。

「…そういう形でも使ってもらえるようになり、たぶんあれで寿命が延びたんでしょうね(笑)。今度の『今でしょ!講座』の前身の番組のお話をいただいたとき、第3期を感じました。自分の持ちネタではなく、各ジャンルの専門の先生からお話を伺うわけですから。あとはいかに他の方々にはできないような伝え方をするか。どんなキャラクターが必要か。どうすれば伝わりやすいか。番組を何回も見て改善を図った結果が、今回につながったんですね」

そして今後も勝負するには…。

「MCとしての技術を磨かないとダメでしょうね。今はまだ勢いで、みなさんが許してくださる部分はありますが、MCは技術職ですから。その技術を身につけることができれば第3期は延びるでしょうね。その習得が不十分であれば、消えていくでしょう。僕のなかで、そういう客観的予想は出ています」

次の予定に向けて後かたづけしつつ、先生はつぶやく。夢とかないんですよねえ。あ、でも…。

「最終的には小説を書きたいです。今はそこへの途中という感じ。ずーっと温めてるネタがあるんです」

書くのに足りないものは…「時間」。

「でもね、こんなにいい経験を、しかもお金をもらってさせていただいていて(笑)。やりたい仕事より、やってほしいと言われる仕事をやる方が幸せですよね。だから声をかけていただく限りは全力で行きますよ!」

プロフィール
「林 修」はやし・おさむ

1965年名古屋市生まれ。東京大学卒業後、日本長期信用銀行に入社。半年で退職。「空白の3年間」を経て予備校講師に。「東進ハイスクール」では、ビデオを使った公開授業と東大特進コース向けのライブ授業を担当。テレビCMでの「いつやるか? 今でしょ!」という言葉が話題となり、13年1月に放映されたトヨタのCM出演が大きなフックとなってタレント活動が本格化。「2013年度新語・流行語大賞年間大賞」を受賞。授業、講演、テレビ出演と多忙な日々を送る。ちなみに、TBSでも新番組をスタート

(R25編集部)

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