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■独裁制と民主主義は紙一重

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権力者の独裁的な振る舞いは、時として常人の理解を超えるものがある。自国民なのに平気で虐殺や粛清をしたり、わざわざ関係諸国の感情を逆撫でするような暴挙に出たり。ブラック企業の社長も、程度の差こそあれやっていることは変わらない。どうして、そこまで非人間的になれるのか。

『独裁者のためのハンドブック』を読んでこの疑問が氷解した。本書によると、権力者にとって「最善の」支配というのは、「まずは権力を握り、次に権力の座に居座り続け、そして、その間はできるだけ多く国(や会社)の金を恣にすること」だという。つまり人間というものは、権力の座に着くと、できるだけそこに居続けて利益を得ることが最大の目的になるのだ、と。

このメンタリティは、独裁制だろうが民主主義だろうが変わりがない。では、両者を分けるのは何か。本書はそれを、見返りをわたす集団のサイズから説明する。限られた幹部や重職だけに見返りや特権を与えて権力を維持するのが独裁制であり、そのサイズが広がるにしたがって民主的になっていくというわけだ。

この理論のポイントは、民主主義であっても、何らかの見返りを受けるオイシイ集団は薄く広く存在するということ。その点で、独裁制と民主主義はくっきり峻別されるものではなく、見返りを受ける集団のグラデーションの違いでしかないということになる。

■ナチス前夜と現代日本との共通点

だから、民主主義的な政府が独裁色を強めていくことに不思議はない。その極端な姿がナチスのヒトラー政権だろう。『ワイマル共和国』は、1 963年刊行ながらいま読んでもまったく古びていないドイツ現代史の名著。当時、「史上最大の民主的憲法」と呼ばれたワイマル共和国憲法がなぜヒトラー独裁を生みだしたのか。著者はヴェルサイユ条約の重荷や世界経済恐慌という外的要因だけではすべてを説明できないとして、「国会の機能喪失」や政党が国民的利益を代表できなかったことを内的要因として挙げている。

本書を読むと、短命な内閣、経済危機による中間層の没落、憲法の恣意的な解釈など、ナチス前夜と現在の日本の状況との間にいくつもの共通点が見つかり、背筋が寒くなる。

村上 龍の『愛と幻想のファシズム』は、80年代に書かれたクーデター小説の大傑作。世界経済の破綻とともに、弱肉強食をイデオロギーとする政治結社が日本でクーデターを起こすプロセスを緻密に描いた小説だが、巨大な多国籍企業の支配やハッキングによる情報操作など、これまた現代的な状況を恐ろしいほど予見している。

(斎藤哲也)

<書籍紹介>
●『独裁者のためのハンドブック』ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、アラスター・スミス/亜紀書房/2100円
●『ワイマル共和国 ヒトラーを出現させたもの』林 健太郎/中公新書/798円
●『愛と幻想のファシズム』村上 龍/講談社文庫/上・770円、下・800円
(R25編集部)

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