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退職時に未払いの残業代と、有給休暇の買い取りを請求できるか?

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Q.
 夫が長年勤めた会社を退職します。支払われる事の無かった残業手当を請求すると同時に、ほとんど取る事の出来なかった有給分を買い上げという形で退職後に請求する事はできますか?

(30代:女性)

A.
 まず、残業代の請求についてお答えします。最初に、未払い残業代がどの程度あるか、金額の確定を行います。残業には「法定残業」と「法内残業」の2種類があり(参照:残業とは)、前者については、多くの場合基本給を時給換算した時給に時間数を掛け合わせた上で、割増賃金が支払われます。注意していただきたいのは、どの程度の時間残業したのかを、きちんと立証する必要がある点です。例えば、タイムカードや残業時間の記載がある給与明細、さらには残業代の支払いについて規定されている就業規則などを予め集めておく必要があります。
 そして、これらをもとに会社に対して未払い残業代の請求を行うことになります。
 ただし、残業代の消滅時効は2年間です(労働基準法115条)。そのため、長年勤められていた間の残業代をすべて請求できるわけではありませんので注意が必要です(詳しい手続きについての参照:タイムカードがない職場で、残業代を請求できる?)。

 次に、有給休暇の買い取り請求についてお答えします。
 労働基準法では、雇用開始から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には有給休暇を付与しなければならないと定められており、この年次有給休暇は原則として買い取りが禁止されています(労働基準法39条1項、昭和30年11月30日 基収4718号)。日数は継続勤務年数などにより異なり、労働開始後0.5年で10日から、6.5年以上で20日などです(労働基準法39条2項)。
 もっとも、法定の日数を超えて任意に付与されている年次有給休暇日については、これを会社側が買い取りしても違法とはなりません(1948年3月31日 基発※513号)。
 企業によっては、こうした有給休暇の買い取りについて、予め就業規則で定めている場合があります。そのため、まずは就業規則の確認が必要になります。就業規則において、買い取りについての定めがない場合でも、先述の法定日数を超える未消化の有給休暇についての買い取りは違法ではありません。また、退職時に未消化である有給休暇を買い取ることも違法ではないとの考え方があります。なぜなら、そもそも退職後には有給休暇を取得できない関係にあるからです。したがって、会社に対して買い取りの交渉を行うということができると思われます。
 ただ、就業規則に買い取りの規定がない場合、会社側としても対応に苦慮することが想定されます。その場合は、給与を得つつ、未消化の有給休暇を消化してしまってから退職するというのがよいのではないかと考えられます。
 ここで注意点がひとつあります。会社側には労働者に有給休暇を取得させるにあたって時季変更権があります(労働基準法39条5項ただし書)。これは労働者が有給休暇を取得することで、業務運営上不都合が生じる場合、その取得時期を変更できる権利です。そして、この行使について「(退職前に一気に有給休暇の消化を行った労働者に対して)退職に当たっては業務引き継ぎ等が必要不可欠であり、本件年休申請は業務の正常な運営を妨げるものとして、会社側の時季変更権行使は適法である」(東京高等裁判所判決 平成21年10月21日 ライドウェーブコンサルティングほか事件)という裁判例も存在します。したがって、引継ぎなどをきちんと行いつつ、買い取りか有給休暇を取得しきってからの退職かなど両面をにらんで会社と交渉することが得策だと考えられます。
 最後に、有給休暇は在職中の権利です。辞めた後は何ら請求ができないため、ご注意ください。

 ※基発とは、厚生労働省労働基準局長から各都道府県労働局長宛の通達のことです。

元記事
退職時に未払いの残業代と、有給休暇の買い取りを請求できるか?

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サービス残業分の賃金を請求できるか?(職場・労働)
試用期間中の残業手当(なっとく法律相談)
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