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国民1人17万円損?悪夢の筋書き

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財務省が2月10日に発表した2013年の「国際収支(速報)」が大きく報じられたのをご覧になった人も多いだろう。経常収支は2年続けて「過去最少」(※比較可能な1985年以降)を更新し、3.3兆円の黒字にとどまった。

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国際収支は、ざっくりいえば 「日本が海外で稼いだお金」から、「海外に払ったお金」を引いた金額のこと。日本の経済力を示す指標のひとつであり、日本は近年、15~25兆円程度の経常黒字をコンスタントに稼いでいた。

ところが2011年以降、経常黒字は9.6兆円→4.7兆円→3.3兆円とガタ落ち。経常赤字に転落する可能性もチラついてきた。最大の要因は、今や10.6兆円におよぶ「貿易赤字」の存在である。2011年に1.6兆円の赤字に転落して以降、赤字額は8.4兆円、10.6兆円と拡大し続けている。

3年間の累計貿易赤字額は20兆円超。「貿易赤字でも、オレの懐が痛むわけじゃないから…」と思っている人も多いだろうが、タカをくくってはいけない。貿易赤字が拡大して経常収支が悪化すれば、僕らの暮らしにも深刻なダメージが及びかねないからだ。

貿易赤字が20兆円ということは、単純計算すれば、3年間で国民1人あたり約17万円、1世帯(3人家族想定)あたり約50万円の「富」が海外に流出したことになる。我が家の財布から50万円減ったわけではないにせよ、日本という国から減ったことは間違いない。石川啄木ではないが、「働けど働けど、なお我が暮らし楽にならざり…」のような事態が国家レベルで起きているのだ。しかもこのままだと、貿易赤字は拡大の一途をたどる可能性もある。

その背景は主に4つある。
(1)原発の停止に伴い、火力発電用の液化天然ガス(LNG)など燃料の輸入量が増加していること。経産省の試算によると、これによる支出増は3.8兆円に上る。
(2)燃料価格が国際的に値上がりしていること。たとえばLNG価格はこの2年半で約70%も値上がりしている。さらに日本は「原発再稼働に足かせがある以上、高値でも買わざるを得ないはず」と足元をみられ、価格交渉力の弱い不利な立場に追い込まれつつある。
(3)円安で輸入品が割高になり、輸入額が膨らんでいること
(4)メーカーの海外現地生産が進み、従来のような加工貿易国(原材料を輸入して日本で加工し、製品を輸出する)としての輸出入の構図が様変わりしていること。日本からの「輸出」は構造的に伸び悩む状況になっている。

貿易赤字は、経済成長に応じて拡大しているなら問題はないが、残念ながら今の日本はそうではない。このままだと何が起きるか? 一言でいえば、日本経済・財政に対する「信用」が失われてしまう怖れがある。安定した稼ぎが無い人には銀行もお金を貸さないように、「稼げない日本」は投資家から警戒される。

現在、日本の借金は累計1000兆円超という世界最悪のレベルにある。日本の借金を支えている(つまり「カネ」を貸している)のは、主に国内の金融機関だが、経常収支が悪化して「カネ」が海外に流出してしまうと、国内だけで国債を引き受けるのに必要な資金を調達するのは難しくなる。そうなれば海外の投資家もアテにせざるをえないが、それは日本が投機対象として「日本売り」のリスクに身をさらすことでもある。

日本に不安を感じて国債を買ってもらえなくなったり(これ以上「カネ」を貸してもらえなくなったり)、国債を売り飛ばそうという動きが表面化したら、行きつくところは「国の倒産状態」だ。財政破綻したギリシャのような事態を招く恐れがある。現在、ギリシャの失業率は27%。24歳までの若年層に限れば58%というひどい有様だ。

そうなったときに困るのは誰か? 今の「現役世代」である。超緊縮財政で景気は悪化。増税と行政サービスの切り下げを迫られ、年金なんて望むべくもない。医療費負担も高騰するし、暮らしにしわ寄せが及ぶことは間違いない。

もちろん、これは最悪のシナリオであって、経常収支が赤字に転落しても、すぐに危機が訪れるわけではない。だが、少なくとも、現状のような形で貿易赤字を垂れ流し続けるのは、得策ではないだろう。

最大のカギを握るのは、エネルギー問題――特に原発再稼働をめぐる問題――だ。原発再稼働は賛否が分かれるところだし、「この3年近く、原発なしでも何とかなってきたんだから、再稼働させる必要はない」という人もいるだろう。

だが、「原発なしでも何とかなってきた」という認識は本当に正しいのだろうか? 先に挙げた貿易赤字の拡大を見る限り、そうとは思えない。僕らの実感しにくいところで、影響は拡大しつつあるとみるべきではないだろうか?

原発再稼働に対する賛否はともかく、暮らしや将来にネガティブな影響が出るのは困る…というのが庶民のホンネだろう。根拠のない理想論には乗れない――それが都知事選でも示された多数の「民意」ではないのか?

ならば、政府や自治体には、単なる理想論では済まされない「現実」を直視した判断をお願いしたい。そう思うのは筆者だけだろうか?
(篠塚裕也)
(R25編集部)

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※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびweb R25から一部抜粋したものです
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