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あなたは人生の最後にどんなことを子どもに伝えますか?

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 2007年9月18日、カーネギーメロン大学の講堂でランディ・パウシュ教授が「最後の講義」を行なった。
 バーチャルリアリティの第一人者とされ、コンピューターサイエンス界の世界的権威とも称される人物だったパウシュ氏は、この最後の授業の1か月前、膵臓癌が転移しているとわかり、余命宣告を受けていた。

 『最後の授業 ぼくの命があるうちに』(ランディ・パウシュ、ジェフリー・ザスロー/著、矢羽野薫/訳、SBクリエイティブ/刊)は、この「最後の講義」のキーワードをまとめた記録であり、講義のつづきでもある。そして、47歳でこの世を去ったパウシュ氏が残したメッセージだ。大ベストセラーの文庫版である。

 アメリカの大学では、人気教授が「人生最後の機会」と仮定して特別講義をする。パウシュ氏の講義もそのひとつだった。ただ、パウシュ氏には特別な事情があった。2006年9月に膵臓癌を告知された1年後、講義を引き受けた直後に癌の転移が判明。余命半年足らずと宣言されていたのだ。
 当時、パウシュ氏は46歳。コンピューターサイエンスの世界で揺るぎない実績を築き、最愛の妻と3人の幼い子供と暮らし、充実した日々を過ごしていた。

 パウシュ氏は限られた時間の中で、これから20年かけて子どもたちに教えていくべきことを、いま、どのようにして伝えるかを考えていた。
 しかし、そうした話をするには、子どもたちはまだ幼すぎたからだ。
 自分の子どもに善悪の分別を教え、自分が大切だと思うことを伝え、自分が人生で学んだことを話して、子どもが人生を歩む道しるべのひとつにしてほしい。親として、そう思うからパウシュ氏は、「最後の講義」を引き受けた。
 最後の講義は録画されることになっている。パウシュ氏はその日、学術的な講義をするふりをしながら、自分という人間を空き瓶に詰めこみ、海辺に流れ着いたその瓶を子どもたちが拾う日を考えていた。

 文字どおり「最後」となる講義に選んだテーマは「夢を実現すること」だった。夢を見ること。そしてその夢をかなえようと努力すること。人生を楽しむこと。家族や大切な人たちを愛して愛されること。最後の講義は、人生をいかに生きるかという力強い情熱にあふれていた。
 その後、新聞や人気テレビ番組で報じられ、講義の映像がYouTubeなどのネットで公開され、のべ600万ものアクセスを獲得。アメリカだけでなく、各国で大きな反響を呼ぶことになる。

 この講義でパウシュ氏はスーツを着ていなかった。ネクタイも締めていなかった。半袖のポロシャツを着ていたのだ。ただ、彼にとっては特別な服で、クロゼットから子どものころの夢を語るために一番ふさわしい服を選んでいたのだ。
 そのポロシャツに描かれたロゴは栄誉ある勲章だった。
 ディズニーのテーマパークをつくるアーティストとライターとエンジニアに贈られる、ウォルト・ディズニー・イマジニアの称号だからだ。

 1995年、パウシュ氏は半年の長期休暇をウォルト・ディズニーのイマジニアとして過ごした。これは、パウシュ氏の人生のハイライトであり、子供のころからの夢が実現した瞬間だった。
 人生最高の経験に敬意を表し、「夢を見ることができれば、やり遂げることができる」と言ったウォルト・ディズニーの言葉に敬意を表して、ディズニーで働いていたときにもらったこのポロシャツを最後の講義の衣装に選んだのだった。

 2008年7月25日、パウシュ氏は膵臓癌の合併症のため他界した。その直前の5月18日にはカーネギーメロン大学の卒業式に招待され、スピーチに立っている。そして、「人生を終えるときに後悔するのは、自分がやってきたことではない、やらなかったことです」と、若者たちに言葉を残した。
 悔いのない人生を送るために、楽しい人生を送るために、どう生きるべきか。パウシュ氏の前向きで楽観的な生き方、夢を実現さてきた生き方から、教えてもらうことは多いはずだ。
(新刊JP編集部)



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