USJ快進撃の裏に「モンハン」400時間?

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USJ快進撃の裏に「モンハン」400時間?
■ジンクスを乗り越えてV字回復を続けるUSJ
 日常を離れて、映画やゲームの世界に入り込んだり、絶叫したり、大笑いしたり、ドキドキしたり、うっとりしたりする体験は、子どもだけでなく大人の心もくすぐるものだ。そうした心を満たしてくれるテーマパークが、大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)である。

 2001年に華々しくオープンしたUSJはハリウッド映画の世界を体験できる大人向けテーマパークとして人気を博し、初年度は約1100万人の来場者を数えた。
 その後しばらくは800万人台を行き来するなど低迷するが、2011年に10周年を迎え精力的にイベントを仕掛けると、来場者数は再び上昇の気配を見せる。さらに、2012年度は“周年の呪い”(○周年イベントの翌年は来場者数が減るというテーマパークのジンクス)もなんのその、975万人の動員を見せ、2013年度は1000万人超えるペースとなっているそうだ。
 そして2014年度の目玉とされているのが、映画『ハリー・ポッター』シリーズの世界を忠実に再現する「The Wizarding World of Harry Potter」のオープンだ。このアトラクションには、450億円というかつてない規模の額が投資されており、USJにとってもいわば社運をかけた一大プロジェクトになっている。

 2011年以降のUSJの快進撃は目を見張るものがある。魅力的なアトラクションやイベントを次々に繰り出し、客を飽きさせない工夫が随所に施されている。でも、どうしてUSJはV字回復を成し遂げられたのか?
 その答えが書かれているのが、『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(森岡毅/著、KADOKAWA/刊)だ。V字回復の立役者であるCMO(最高マーケティング責任者)の森岡氏によって、3年間のUSJの軌跡と、来客数を増やすマーケティング手法が明かされている。

■「モンスターハンター」を400時間プレイした結果の“成功”
 森岡氏はもともとP&GからUSJに転職した“外部”の人間である。しかしながら、USJスタッフの誰よりも“エンターテイメント”のストックがあることを自負する。例えば、ゲーム一本に対してもとんでもないこだわりを見せながらプレイしているというのだ。
 本書で見られる森岡氏のアイデアから生まれたアトラクションやマーケティング戦略は以下のようなものがあげられる。

・大人向けテーマパークから小さな子供連れの家族でも楽しめるテーマパークへの転換
・映画主体からエンタメ主体への舵切り(「モンスターハンター」や「バイオハザード」などとのコラボレーション)
・ひっそりとやっていた「ワンピース」のショーを前面に押し出す
・震災後自粛ムードの中で「スマイル・キッズフリー・パス」を期間限定で発行
・後ろ向きに走るジェットコースターの開発
・『ハリー・ポッター』シリーズの世界観を堪能できる壮大なエリアを新設

 この中でも、大人気ゲームである「モンスターハンター」は400時間プレイしたそうだ。その膨大なプレイ時間が「モンハン」をUSJに呼び寄せた一つの大きな要因になっていることは、誰もが想像できるはずだ。
 家族には「これも仕事なんや!」と言って、映画やゲーム、アニメ、音楽などにどっぷりと浸かる。自らが従事する業界を知らずして、その業界の中で成功することはできない。森岡氏の研究熱心さもUSJの集客数増加につながったといえるだろう。

■アイデアが100%当たる人はいない
 しかし、ただ研究熱心だけでは強いアイデアを生み出すことはできない。
 生み出したアイデアを形に落とす、それも成功に近づくように適切な形にしてから世に出すことができなければ、人々に受け入れられることができないはずだ。本書の後半では、そのためのマーケティング手法が明かされている。

 どんなアイデアでも、確実にそれが成功するとは限らない。できることは、「確率をあげること」だと森岡氏は述べている。強いアイデアをひらめく確率をあげて、より具体的に落として成功に結び付ける確率をあげるのだ。森岡氏は「アイデアの神様とは確率だ」とまで言い切っている。
 では、強いアイデアを生み出す確率を高めるにはどうすればいいのだろうか。本書では「イノベーション・フレームワーク」と呼ばれ、以下の4つの技法から成るという。

(1)フレームワーク
(2)リアプライ
(3)ストック
(4)コミットメント

 例えばこのうちの「フレームワーク」は、まずアイデアを考える前に「どのような条件を満たせばいいのか」「その条件を組み合わせて、どこに着眼点を定めて頭をフル回転するべきなのか」の2つが大事となる。つまり、「どこに宝が埋まっているか」を見定める力といえる。
 また、「リアプライ」は宝探しの場所が定まり、どのように探すかを選ぶ上で大切な要素だ。「リアプライ(Reapply)」つまり、すでにあるやり方で成功しているものはないか探すのである。自分でアイデアを生み出すのは、最後の手段であり、まずは先行事例を探すことが大事なのだ。
 残りの2つをはじめ、それぞれの詳しいやり方は『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』で丁寧に説明されているので、ぜひ参考にしてほしい。

 本書を読んでいると、今度のUSJが楽しみになるし、否が応にも期待してしまうだろう。特に本書の中でも1章まるごと割いて魅力が語られている「The Wizarding World of Harry Potter」は、早く見てみたいという想いに駆られる。
 USJファンだけでなく、マーケティングに携わる多くの人が参考にできる一冊だ。
(新刊JP編集部)



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