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強制執行では何をするの?(建物明渡し編)

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 賃料滞納のため建物明け渡しを求められていた大須演芸場(名古屋市)が、強制執行を受け、2月3日をもって閉場となりました。強制執行の直前まで寄席が開かれ、執行官が到着したときには客席から拍手が上がったそうです。強制執行まで笑いのネタにしてしまう芸人の心意気を示す一幕でしたが、「強制執行」という言葉には、何となく怖いイメージがあると思います。今回はこの強制執行について取り上げます。

 強制執行とは、私法上の請求権を国家権力によって強制的に実現する手続のことをいいます。例えば、AさんがBさんにお金を貸したとします。返済期日になっても一向に返す気がないBさんに腹を立て、AさんがBさん宅に侵入して家の中にあった現金を勝手に持ち帰ってしまった場合、捕まってしまうのはAさんの側です(このことを「自力救済の禁止」といいます)。強制執行は、このような場合に、Aさんに代わって、強制的にAさんの権利を実現する手続です。
 大須演芸場の場合、運営者(席亭)が所有者から建物を借りて運営していたようですが、賃料を払えなくなったため、賃貸借契約の解除、建物の明け渡し請求となり、それに従わなかったために、強制執行となったようです。

 では、建物明渡し(略して「建て明け」といったりします)の実際はどうなっているのでしょうか。
 強制執行を行うには、前提として(1)債権者側(明渡しを求める側)に明渡しを求める正当な理由(債務名義。民事執行法22条)が必要です。通常は請求権を認めた確定判決がそれにあたります。これに加え、(2)債務名義が確かに債務者に送達されたことを証明する書面(送達証明書)と(3)強制執行ができるという証明書(執行文)も用意します。
 これらを準備したうえで向かう先は、地方裁判所の執行官室です。執行官は裁判所職員ですが、国から俸給を受けるわけではなく、職務の執行によって得られる手数料を収入源とする独立採算制の職員です(執行官法7条)。

 強制執行は、ある日突然行われるイメージがあるかもしれませんが、実際には予告(明渡しの催告。民事執行法168条の2)がなされます。とはいえ、この催告もかなり強制的で、債務者がいなくても開錠技術者(鍵屋)に鍵を開けさせ、建物の中に入って状況を確認し、引渡し期日と強制執行を行う日(断行日)を記載した書面を建物の中に貼り付けて帰ります。
 断行日当日ですが、執行官のほか、債権者(代理人)、立会人、開錠技術者、執行補助者などが現場に立ち会います。さらに、執行を行う際に占有者が暴れるなどして妨害することを防ぐために、警察官が立ち会うこともあります(強制執行を妨害すると公務執行妨害罪となります)。
 催告時と同様、建物に入れなければ開錠技術者に鍵を開けさせたうえで中に入り、もし中に人がいれば、安全を確保したうえで、外に出るように指示します。そして、価値のある動産があれば、補助者に搬出させます。搬出した動産は、一定期間保管の後、占有者が取りに来なければ、売却または廃棄されます。最後に鍵を交換し、強制執行完了となります。
大須演芸場でも、入口を鎖で封鎖したうえで、「今後許可なく演芸場(劇場)部分に立入ることを禁止します」との貼り紙がなされたそうです。

 今回は建物の明渡しについての強制執行を取り上げましたが、これ以外にも債権執行(給与や銀行預金の差押え)、動産執行などの手続もあります。機会があれば、これらについても説明したいと思います。

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