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作品はいつ完成するか

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今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

作品はいつ完成するか

長いプロジェクトだと、開発者は完成して納品されても、いつの間にか無意識に「あの部分こうしたら~」とか考えていることがある。で、自分が考えていることに気づいて、「あ、もう考えなくていいんだ」と。つまりそのぐらい開発というのは、その人の日常に入り込んでいる。

似たようなものにゲームのテトリスが爆発的に流行った時、「なにを見てもテトリスに見える」という話があった。家具とか本棚の隙間とか、「ああ、あそこにあのブロックがはまる」とか(笑)。

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1980年代のパソコンブームの頃、プログラマたちは趣味で作った自分の作品を雑誌に発表していた。また小規模のパソコンクラブがあちこちにできて、情報交換したり会報を発行したり、さらにはグループ間の交流とかも行われた。なにしろインターネットとかなかった時代だから、直接会って話をするか、郵便物で交流するしかなかったんだよね。

で、あちこちのグループに顔を出している人から、情報とかあるいは未発表のプログラムとかが回ってくる。雑誌に発表されたのはVer.1.03だが、これは作者に会った時にもらった、その後改良された1.04bだ!とか。当然そういうレアなものはほしいわけで、そういう顔の広い人は重宝されたものだ。

まあ、時々アングラな情報も回ってくるけどね。作者の私生活とか(苦笑)。どこまで本当だったのかしらないが。まあ基本的にやってたことはいまのネット時代とそう変わらないのかもしれない。ネットになってそれが桁違いに効率化されただけで。

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作者にとって作品(プログラム)というのは、永遠に完成しないものかもしれない。あくまで雑誌に発表したとか販売したバージョンがあるだけで、開発はその前もその後も続いている。純粋に仕事なら完成してリリースしたプログラムをさらに改良するというのはないかもしれないが(俺はやってたけどw)、趣味で作っている人があの頃は多かったからね。まあ、いまも多いと思うけど。

ようするに作者の興味が薄れて、改良の間隔が無限に長くなった時が完成なのだろう。

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映画とかも公開後に手を加えたディレクターズカットとかあるよね。やっぱいろいろな事情で初公開時にはできなかったこと、やり残したことがあったのだろう。もしくはその後さらに考えを煮詰めた結果「こうしたほうがよかった」というのが新たにでてくるのだろう。

本でも第2とか版が進むたびにこまめに内容を修正する著者もいる。これはこれで追いかけるのが大変なのだが。第1版ではこの箇所はこうなってるけど、第2版ではこう変わっている、とか。

書籍の場合は改訂版が出るのを待たなければならなかったけれど、いまやインターネット時代。情報はリアルタイムで更新できる。するとますます「完成版」というものが希薄になっていく。

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プログラムにはむかしからバージョン管理システムがある。いつ誰がどこをどう修正したかを記録し、過去のどの時点のものでも必要なら取り出せる。Wikiとかも過去の履歴をさかのぼれるし。

電子書籍も、というか絵画や音楽や動画ですら、今後はそういうふうになっていくんだろう。いくらでもコピーを作れ、差分もとれるデジタル化がそれを可能にしつつある。そして作品は一人で作るものではなくなっていく。それは複数の人間が協力し合って一つの作品を作るという段階からさらに進み、必ずしも協力し合わない人間がひとつの作品を作っていくようになる。Wikipediaの編集者同士が必ずしも協調関係にないように。

あるいはバージョンの分岐させて、似て非なる作品にしていく。プログラム開発ではこれをフォークという。元はひとつのものだったのが、袂を分かって(必ずしもそれは悪いことではない)、それぞれ別の方向に歩み出す。たとえばブラウザのchromeはsafariからフォークされたものだ。

インターネットによって創作活動がなにか根本から変わるとすれば、こういう部分だろう。むろんどんな変化も拒絶反応はつきものだが。意外とクリエイターは頭が硬いところがあるし。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年01月31日時点のものです。

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記者:

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