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「さよなら、武道館!」 デビュー20周年の黒夢が見せた意義深いライヴ

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1月29日、約2年3ヵ月ぶりとなる新作アルバム『黒と影』をリリースした黒夢。前々から清春自身が「黒夢のオリジナル・アルバムとしては最後になるかもしれない」といった言葉を発していたこともあり、ファンの多くはその発売自体をどこか複雑な気持ちで迎えることになったに違いない。そして同日、アルバムと同様に『黒と影』と銘打たれた公演が東京・日本武道館にて開催された。

2014年1月29日(水)@日本武道館 (okmusic UP's)

まずはこの日付をめぐる経緯について説明しておくべきだろう。1994年にメジャー・デビューを果たした黒夢は、1999年1月29日、無期限活動停止に至っている。もちろんそれ以降も清春と人時は各々の音楽活動を続けてきたわけだが、それから10年を経た2009年の同じ日には『THE END』と銘打ち、“活動休止のままの状態にあった黒夢を本当に終わらせること”を目的に、武道館公演を敢行。結果的にはそれが復活への序曲となり、2011年には復活を宣言。同年の同じ日には、東京・新宿ステーションスクエアにてシークレット・ライヴを行なっている(ただし、想定以上の観客殺到により、わずか1分ほどの演奏をもって強制終了)。そして同11月には、再始動後初となるアルバム『Headache and Dub Reel Inch』(オリコン初登場2位)を発表。そうした経緯の末、かつての活動休止宣言からちょうど15年を経た今年のこの日、彼らは『黒と影』をキーワードとする新局面を迎えることになったというわけだ。

清春はごく最近、この1月29日という日付にこだわること、どこか恒例のようになりつつある武道館公演などについても今回を最後にするつもりだとの発言をしていたりもする。そうした発言の真意はどこにあるのか? 会場に詰め掛けた8,000人のファンの関心はそこに集中していたに違いない。

開演予定時刻の午後6時半を20分ほど過ぎた頃、場内は暗転。まず聴こえてきたオープニングSEは、『黒と影』の幕開けと同じ「ZERO」だった。当然ながら大多数の観客はそこで、アルバムと同じ展開を想定しながら身構えていたことだろう。が、炎の噴出する派手な演出とともにオープニングを飾ったのは往年の代表曲のひとつ、「FAKE STAR」。前作アルバムからの「13 new ache」がその熱狂を受け継ぐと、そこでようやく『黒と影』からの先行シングルとして昨年12月に2作同時リリースされたうちの1曲、「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」が炸裂。自ら“フェイク(ニセモノの)スター”を名乗っていた当時を笑い飛ばすかのような楽曲タイトルの連なりにも、清春らしいアイロニーが匂う。

結果、この夜のライヴは、さまざまな場面を経ながらアンコールを含めて3時間超にも及んだ。そしてその演奏内容は『黒と影』を軸とする構成によるものではなく、むしろファンの多くが求める黒夢像に限りなく近い、客観的ベスト選曲ともいうべき内容のものとなっていた。それをいわゆるファン・サービスと解釈することも可能だろう。が、重要なのは、そうした内容の公演がアルバムと同様に『黒と影』と銘打たれていた事実ではないだろうか。限りなく同義に近い“黒”と“影”。最新作に収められた楽曲群と、過去の歴史から選りすぐられた代表曲たちというのも、それと同じような関係性にある。そうした含みを感じさせる選曲プログラムだったともいえる。

「(公演がアルバムと同様に)『黒と影』というタイトルでありながら、そこからほとんどやらないっていう……(笑)。そんななか、新曲をやります」

アンコールの冒頭、清春のそうしたMCに導かれて披露されたのは「Reverb」と題された、まだ誰も聴いたことがない正真正銘の新曲。それだけでも驚きを伴ったが、その後しばらくの沈黙を経て、ふたたびステージに現れた彼らが演奏したのが「棘」、「for dear」、そして「Miss Moonlight」の3曲だったことも衝撃的だった。蛇足を承知で付け加えるならば、これらの楽曲は、去る1月16日に他界した佐久間正英氏が彼らの音源制作に関与していた時代のもの。清春と人時はこの場面に限って、2人とも黒衣に身を包んでいた。観客の多くもそこに意味深長さを感じ取っていたことだろう。さらには、清春がアンコール時に吐いた言葉の一つひとつが、とても印象的だった。

「僕らが解散した日。僕らが復活した日。今まではこの日付を大切にしてたけど、今日で僕らの1.29は終わります」

「あんまり意味深でも何でもなく、武道館にもしばらく立たない」

「復活したときのイメージ、影を追いかけるのは今日でやめにします。2人で一緒にゼロになります」

「僕らがやりたいことがすべて。目が合って、気が合って、一緒にやるだけ。黒夢かもしれないし、黒夢じゃないかもしれません。これからも、よろしく」

「王道を行く復活劇とかは無理です。その場その場でカッコいいと思ったことをするしかないので」

「人時君とやるときは、いろんなことに唾を吐きながらやっていきます。自由です!」

「なんかわかんないけど、僕らは他とは違うんです。同じようにはできないんです」

最後の最後、「Like@Angel」を歌い終えると、清春は「さよなら、武道館!」とも言い放っていた。しかもその言葉はとても晴れやかな響きを伴っていた。清春と人時が手を取り合いながら観衆に会釈をし、その場をあとにしたのは午後10時を過ぎてからのこと。こうして『黒と影』と銘打たれた夜は終わった。

清春と人時は、2月9日、黒夢としてのデビューから20周年を迎える。黒夢の歴史において、この一夜がどんな意味を持つことになるのかは、おそらくまだ彼ら自身にもわかっていないはずだ。しかし、確かなのは、この夜を経たことで黒夢の過去、現在、未来のすべてが同列のフラットな状態になったという事実、そして、彼らがこれまでとは次元の異なった自由を手に入れたということだろう。歴史も、未来も、彼らの現在を束縛することはないのだ。

この武道館公演を経たのち、彼らに控えているのは『ZERO』と銘打たれた、地元・岐阜での三夜公演(2月7~9日)である。その公演タイトルが示唆する通り、清春と人時の関係は、まさにそこで新たな原点を迎えることになるのだろう。そこから先に、彼らはどのような未来を見据えているのか? 2人の今後の動向から、目を離すわけにはいかない。

文:増田勇一

2014年1月29日(水)@日本武道館 (okmusic UP's)

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