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しなやかで頑丈 「クモの糸」は産業界の救世主になるか

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 科学技術が進歩しているおかげで、私たちの生活は便利で豊かなものになっている。しかし、これらの技術は自然環境の犠牲の上になりたっているというのは多くの人が実感として持っているのではないか。
 今のままでは、環境破壊は進むばかり。そこで注目したいのが、「生物とコラボ」である。

 植物で自動車をつくる。クモの糸を人工的につくる。ミドリムシからプラスチックをつくる。そんな夢の実現に向けて科学者たちは研究を続けており、すでに実用化されているものも多い。本書『生物とコラボする――バイオプラスチックの未来』(工藤律子/著、岩波書店/刊)では、生物と人間が切りひらく新しい現在と未来を紹介している。

 「おそらくテクノロジーやアイディアがたくさん眠っているに違いない。21世紀は虫だろう!」という発想から、人工クモの糸の研究開発を進めるベンチャー企業「スパイバー」は生まれた。スパイバーは製造業の会社と提携し、2013年11月、人工クモ糸の試作品の量産工場が稼働。2015年までに生産量を増やし、国内外の企業などにサンプル供給する予定だ。自動車や医療分野などでの応用が期待されている。素材として大量に生産することができるようになれば、クモの糸が私たちの暮らしの中に製品として活用される日も近いだろう。
 実用化も近い人工クモ糸だが、なぜこれが注目されるのだろうか。理由はその性質にある。
 絹糸やクモの糸は、生物が体内でつくり出す自然の繊維であり、しなやかで強いという性質を持つ。中でもクモの糸は、フィブロインという繊維状タンパク質の一種でできており、グリシン、アラニン、セリンなどの側鎖の小さいアミノ酸が高い比率で含まれていることで、特に強いのだ。側鎖とは、鎖状の分子構造をもつ有機化合物において、一番長い鎖から枝分かれしている部分のことで、これが小さいと鎖のデコボコが少なく、しっかりと絡みやすいため、丈夫になるのだという。クモの巣は、粘着性の横糸と非粘着性の縦糸からできているが、どちらもナイロンを上回る堅さと強度、そしてカーボンファイバーを上回る伸縮性と強靭性を持つ。だからこそ、新素材として注目されているのだ。

 私たちの生活を豊かにしてくれている石油は残り少ないともいわれ、地球環境は危機にさらされている。この危機を乗り越えるために、積極的に生物の力を借りて、自然と共に生きる世界を創っていくべきなのかもしれない。実際、クモの糸は着々と研究が進められ、製品化も現実のものとなっている。このような研究がもっと進めば、科学とモノづくりは地球に優しいものになるだろう。
(新刊JP編集部)



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